国民主権とは?天皇主権との違いについてわかりやすく解説(入試問題演習つき)【政治第7回】

こんにちは。今回のテーマは、国民主権と天皇主権の違いです。

日本が天皇主権から国民主権へと変わったタイミングで、天皇の地位・役割がどのように変化したかを中心に解説しています。

また記事の後半には入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。

この記事からわかること

・国民主権とは何か

・国民主権を実現するために日本が採用している仕組み

・国民主権と天皇主権の違い

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日本国憲法とは

(日本国憲法前文:wikiより)

国民主権とは、国政の最終決定権が国民にあるとする考え方です。

主権には①強制力を持つ統治権そのもの、②国家の最高独立性、③国政の最終決定権と全部で3つの意味があります。国民主権や君主主権の「主権」は、③国政の最終決定権の意味で使用されている典型例です。

では国民主権を実現させる方法は一体何でしょうか?

 

日本では間接民主制を採用して国民主権を実現させています。間接民主制とは、主権者である国民によって選挙で選ばれた代表者が政治を行う仕組みです。

 

日本国憲法は前文で「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し…」と定め、日本が間接民主制を採ることを明示しています。

 

ただしすべての制度で間接民主制が採用されているわけではありません。

 

憲法改正の国民投票・最高裁判所裁判官の国民審査・地方特別法の住民投票の3つについては、直接民主制が用いられています。

 

S先生
S先生
直接民主制とは、国民が直接政治に参加する仕組みです。

 

地方行政では、国政以上に直接民主制が導入されています。住民には直接請求権と呼ばれる権利があり、条例の制定・改廃や監査、議会の解散、議員・主要公務員・知事・市区町村長の解職を住民が直接請求することが可能です。

天皇主権と国民主権の違い

(大日本帝国憲法下の統治機構図:wikiより)

天皇主権と国民主権の違いは、天皇の地位と役割にあります。

 

天皇主権が定められていた大日本帝国憲法のもとでは、天皇は神聖不可侵の存在でした。また天皇は国の元首であり、実質的に立法・行政・司法のすべてを握っていた立場でもあります。

 

ゆえに陸海軍の最高指揮権である統帥権をはじめ、緊急勅令・独立命令・条約締結などの天皇大権が広く認められていました。

 

とくに統帥権は天皇が単独で行使するものであり、帝国議会や内閣からも独立した権限でした。つまり戦前において、天皇は強大な権限を持っていたわけです。

 

しかし日本国憲法が国民主権を採用したことで天皇主権は否定され、天皇の地位と役割は大きく変わりました。

 

天皇は日本国および日本国民統合の象徴となり、国政に関する権限を持たず、内閣の助言と承認のもとで国事行為のみを行うことになったのです。

 

S先生
S先生
国事行為とは、憲法で定められている形式的・儀礼的な行為のことです。具体的には、内閣総理大臣・最高裁判所長官の任命や憲法改正・法律・政令・条例の公布、国会の召集、衆議院の解散などがあります。

 

ところで、天皇の地位はどのようにして継承されるの?
たなかくん
たなかくん

 

天皇の地位は世襲によって継承されます。世襲とは、天皇と血縁関係にある特定の家系の者だけが地位につけることを意味する言葉です。

 

本来世襲制は国民主権にそぐわないのですが、日本国憲法が制定された当時の国民感情を踏まえ、象徴天皇制を維持するための例外として許容されました。

 

S先生
S先生
皇室典範には、皇位は皇統に属する男系男子が継承すると定められています。

 

今回の範囲はここまでです。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。

入試問題にチャレンジ

問1 下線部ⓘ(政治参加)のための制度は、国民が直接に政治上の決定に携わる直接民主制の理念に基づくものと、国民が代表者を通じて政治上の決定に携わる間接民主制の理念に基づくものとの二つに分類できる。次のA~Cは、国民が政治上の決定に携わるような日本の制度である。これらのうち、直接民主制の理念に基づくものはどれか。最も適当なものを、下の①~⑦のうちから一つ選べ。

A 公職選挙法に基づく議員選挙

B 憲法改正のための国民投票

C 条例の制定や改廃を求める住民の請求権

① A ② B ③ C ④ AとB ⑤ AとC ⑥ BとC ⑦ AとBとC

2015年 センター試験 本試験 政治・経済 第1問 問10より)

問2 下線部ⓐ(天皇)についての記述として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 明治憲法下では、天皇は陸海軍の最高指揮権である統帥権を有していたが、その行使には議会の承認決議が必要とされた。

② 明治憲法下では、天皇機関説が唱えられていたが、昭和期にその提唱者の著書の発売が禁止された。

③ 日本国憲法は、皇位は世襲のものであって男系男子に継承されることを、明文で定めている。

④ 日本国憲法は、国会の指名に基づいて天皇が行う内閣総理大臣の任命に際して、不適格な人物については天皇が任命を拒否できることを定めている。

2014年 センター試験 本試験 政治・経済 第4問 問1より)

正解

問1:⑥ A:国民が選挙で代表者である議員を選ぶのは間接民主制の典型例です。B:日本は間接民主制を採用していますが、憲法改正の国民投票・最高裁判所裁判官の国民審査・地方特別法の住民投票の3つについては、直接民主制の理念に基づく制度を取り入れています。C:地方自治では直接民主制の理念に基づく地方参政権が認められていることにともない、直接請求権が導入されています。例としては、条例の制定・改廃請求や議会の解散請求などです。よって直接民主制の理念に基づくものはBとCです。
問2:② 天皇機関説の提唱者である美濃部達吉の著書などが発売禁止になりました。天皇機関説とは、主権は国家にあり、天皇は国家の最高機関であるとする考え方です。①:統帥権は議会から独立しています。③:男系男子に継承されるという規定は憲法ではなく皇室典範にあるので、誤りです。④:天皇は内閣の助言と承認のもとで国事行為のみを行い、国政に関する権限は持ちません。

まとめ

今回は、国民主権と天皇主権の違いについて解説しました。

 

天皇主権において天皇は神聖不可侵の存在で、かつ強力な権限があったのに対し、国民主権では天皇が象徴となり、国政に関する権限がなくなったことをおさえておきましょう。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

前回の記事「日本国憲法とは?原理及び大日本帝国憲法との違いまで解説(関連入試問題も)【政治第6回】」をご覧ください。

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