具体と抽象の見分け方と読解への活かし方【現代文】評論文の構造を理解して読む

現代文の評論文を読んでいると、「結局この段落で何が言いたいのかわからない」と感じることはありませんか。その原因の多くは、「具体」と「抽象」の区別ができていないことにあります。具体と抽象の関係を理解すると、文章のどこに筆者の主張が書かれているか、どこを流し読みしていいかがわかるようになり、読解の速度と精度が一気に上がります。この記事では、具体と抽象の定義から評論文の文章構造、見分けるための接続詞、入試問題への活かし方まで、体系的に解説します。

具体と抽象とは何か

まず定義を確認します。評論文における「抽象」とは、筆者の主張・結論・法則のことです。広い概念を短く圧縮した表現で、それだけを読んでも意味がわかりにくいことが多いのが特徴です。「科学技術は人間疎外をもたらす」「言語は思考を規定する」といった文がその典型です。

一方「具体」とは、抽象的な主張を読者にわかりやすく説明するための例示・事実・エピソードのことです。「スマートフォンの普及によって対面での会話が減った」という記述は、「科学技術は人間疎外をもたらす」という主張の具体例にあたります。抽象と違い、読んだだけでイメージしやすく、意味が取りやすいのが具体の特徴です。

この2つの役割の違いを一言で言うと、「主張するのが抽象、説得するのが具体」です。

評論文の基本構造:抽象→具体→抽象のパターン

評論文の段落は、「抽象(主張)→具体(例示)→抽象(主張の繰り返し・まとめ)」という順序で構成されることが非常に多いです。まず筆者が主張を述べ、それを具体例で補足して読者を説得し、最後にもう一度主張を言い換えて締める、というパターンです。

このパターンを知っておくと、「冒頭に難しい一文が来ても、続く具体例を読めば意味がわかる」という読み方ができるようになります。逆に、具体例が続いている段落の途中では「次に抽象(まとめ)が来るはずだ」と予測しながら読めるようになります。文章全体を見ると、この「抽象→具体→抽象」のセットが複数積み重なり、最終的に論文全体の主張が形成される構造になっています。

具体と抽象を見分けるための接続詞

具体と抽象を区別する最も実践的な手がかりが「接続詞」です。以下の接続詞の役割を覚えるだけで、段落内のどの文が抽象でどの文が具体かがほぼ自動的に判断できるようになります。

具体例の始まりを示す接続詞

「たとえば」「具体的には」「実際に」「例えば」が続く文は、それ以降が具体例です。これらの接続詞の後には筆者の主張ではなく例示が続きます。傍線部問題で「傍線部はどういうことか」と問われた場合、「たとえば」以降は答えの候補になりません。

抽象(主張)へ戻る接続詞

「つまり」「要するに」「すなわち」「換言すれば」「言い換えれば」が来たら、それ以降は抽象(筆者の言いたいこと)です。具体例が続いた後にこれらが来たら「ここが主張のまとめだ」と意識して精読します。傍線部問題でも、「つまり」以降の文は答えと直結することが多いです。

逆接・対比を示す接続詞

「しかし」「だが」「ところが」「一方で」などは、前の内容と反対の方向へ議論を転換するサインです。評論文では逆接の後に筆者の本来の主張が来ることが多いため、逆接の後は必ず精読します。

接続詞が省略されている場合

接続詞が明示されていない場合は、文の内容そのものから判断します。固有名詞・数字・具体的な出来事が書かれていれば具体、広い概念・傾向・法則が書かれていれば抽象と判断できます。

読解への活かし方:抽象を精読し、具体は流し読む

この知識を読解に活かすための基本原則は、「抽象を精読し、具体は流し読む」です。試験時間は有限ですから、すべての文を同じ密度で読む必要はありません。筆者の主張が書かれた抽象部分に時間をかけ、具体例は「ああ、こういうことを言いたいんだな」と確認する程度で通過するのが効率的な読み方です。

具体的な手順として、まず段落の最初の文を読みます。多くの場合、段落冒頭は抽象(主張の提示)です。次に「たとえば」「具体的には」が来たら、具体例が始まったと判断してペースを落とさず読み進めます。「つまり」「要するに」が来たら、精読モードに切り替えて主張のまとめをしっかり把握します。これを各段落で繰り返すことで、文章全体の論旨が効率よく把握できます。

入試問題での活かし方

傍線部「どういうことか」問題

傍線部が抽象的な表現に引かれている場合、答えは傍線部の前後にある具体例や言い換えの文の中にあります。「つまり」「換言すれば」の後の文を探すか、傍線部の直後に続く段落で具体例として説明されている部分を参照します。逆に、傍線部が具体例に引かれている場合は、その前後にある抽象(主張)の文が答えの核心になります。

傍線部「なぜか」問題

理由を問う問題では、傍線部の前にある抽象的な主張の文が原因・根拠として答えになることが多いです。「なぜなら」「というのも」などの接続詞があれば見つけやすいですが、接続詞がなくても「筆者がその直前で何を主張していたか」を追うことが理由説明の基本です。

選択肢の検討

選択肢を選ぶ際、具体例の内容をそのまま答えにしているものは誤りの場合が多いです。「本文に書いてある」ことは確かでも、設問が求めているのは「抽象的な主張として何と言っているか」であることがほとんどです。選択肢も「この選択肢は抽象的な主張になっているか、それとも具体例の記述か」という視点で検討すると正答率が上がります。

接続詞一覧まとめ表

働き代表的な接続詞読解上の注意点
具体例の導入たとえば、具体的には、実際に以降は流し読みしてよい
主張のまとめ・言い換えつまり、要するに、すなわち、換言すれば、言い換えれば精読必須。傍線部問題の答えと直結しやすい
逆接・転換しかし、だが、ところが、一方で以降に筆者の本論が来ることが多い
付加・強調さらに、また、加えて同じ方向の主張が続く。抽象か具体かは文脈で判断
対比一方、他方、それに対して2項対立の構造を把握する手がかり

まとめ

具体と抽象の区別は、現代文読解のもっとも基礎的かつ実践的なスキルです。「抽象=筆者の主張・結論」「具体=例示・説得材料」という役割の違いを意識し、「たとえば」の後は流し読み、「つまり」の後は精読という習慣をつけると、評論文の読解スピードと正確さが大きく変わります。接続詞は段落の設計図を教えてくれるサインです。文章を読む前に「この接続詞はどの働きか」を確認するクセをつけ、入試本番でも効率的な読解ができるよう練習を重ねてください。

現代文の接続詞をさらに体系的に整理したい方は、詳しくは「現代文の接続詞一覧と使い方|論理的読解に必要な全パターンを解説」をご覧ください。

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