内閣の仕組み・権限についてわかりやすく解説(入試問題も解説)【政治第19回】

みなさん、こんにちは。今回のテーマは、内閣です。

 

内閣の仕組み・権限・総辞職しなければならないタイミングをわかりやすく解説しました。

 

また記事の後半には、入試問題を用意しています。学習した内容のおさらいができるので、最後まで読んでみてくださいね。

この記事からわかること

・内閣の仕組み

・内閣が総辞職しなければならないタイミング

・内閣・内閣総理大臣の権限

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日本の内閣の仕組みとは?

内閣総理大臣官邸(内閣:wikiより)

議院内閣制

日本の政治体制には議院内閣制が採用されています。議院内閣制とは、国会の信任に基づいて内閣が成立する仕組みのことです。

 

日本国憲法には、議院内閣制を実現するためのルールがたくさんあります。

 

まず第67条1項では、内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決で指名されると規定されています。

 

第67条1項:内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。(以下略)

 

また第68条1項には、内閣総理大臣が国務大臣を任命する際は、過半数を国会議員から選出しなければならないと明記されています。

 

第68条1項:内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。

 

さらに第66条3項では「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」と定められています。つまり内閣と国会は、協力関係にあるわけです。

 

だから国会(衆議院)が内閣に対して不信任を決議した場合、内閣は10日以内に総辞職するか、衆議院を解散するかのどちらかを選択しなければなりません。

内閣の総辞職

総辞職って何?
たなかくん
たなかくん

 

総辞職とは、内閣総理大臣とその他の国務大臣が一度に辞任することです。内閣はその存続が適当でないと判断した場合、いつでも総辞職できます。

 

また以下のように、存続したくても総辞職しなければならないケースもあります。

 

① 衆議院で内閣不信任案が可決されたor10日以内に衆議院を解散しない場合(第69条)

② 内閣総理大臣が欠けた場合(第70条)

③ 衆議院議員総選挙後、はじめて国会の召集があった場合(第70条)

 

第69条:内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
第70条:内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。

 

総辞職から新しい内閣ができるまでの期間はどうなるの?
たなかくん
たなかくん

 

第71条で内閣は、新たに内閣総理大臣が任命されるまで、引き続き職務を行うと定められています。

 

第71条:前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。

衆議院の解散

衆議院を解散した場合はどうなるの?
たなかくん
たなかくん

 

衆議院が解散されると、任期満了前にすべての衆議院議員が一度に議員の資格を失います。

 

第45条:衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。

 

そこで解散の日から40日以内に衆議院議員総選挙が実施されます。

 

そして選挙日から30日以内に特別会が召集され、新しい内閣総理大臣が指名されるのです。

 

第54条1項:衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。

 

また衆議院が解散されると、参議院は閉会します。

 

ただし緊急の必要がある場合には、内閣が参議院の緊急集会を要求できるのでおさえておきましょう。

内閣の構成

第二次岸田改造内閣(第二次岸田内閣(改造):wikiより)

内閣を構成するのは、内閣総理大臣とその他の国務大臣です。

 

その他の国務大臣は原則14人以内とされていますが、特別に必要があれば17人まで増やせます。ただし全員が文民でなければなりません。

 

内閣総理大臣は国会議員の中から国会の指名で選ばれ、天皇が任命します。

 

一方国務大臣は内閣総理大臣から任命され、天皇が認証します。

 

国務大臣の過半数が国会議員であれば問題なく、大学教授や民間人の登用も可能です。

内閣の権限

岸田文雄内閣総理大臣(内閣総理大臣:wikiより)

内閣の主な権限は以下のとおりです。

・法律の執行(第73条1号)

外交関係の処理(第73条2号)

条約の締結(第73条3号)

・予算の作成(第73条5号)

政令の制定(第73条6号)

恩赦の決定(第73条7号)

条約の締結については、事前または事後に国会の承認が必要です。

 

ほかにも内閣では、

天皇の国事行為に対する助言と承認(第3条)

最高裁判所長官の指名(第6条2項)・その他の裁判官の任命(第79条1項)

下級裁判所裁判官の任命(第80条1項)

をおこなっています。

 

内閣総理大臣の権限はあるの?
たなかくん
たなかくん

 

内閣総理大臣には下記の権限が与えられています。

国務大臣の任命・罷免(第68条)

・内閣を代表して議案を国会に提出(第72条)

・一般国務や外交関係について国会に報告(第72条)

・行政各部の指揮監督(第72条)

・法律・政令への署名連署権(第74条)

・国務大臣の訴追への同意権(第75条)

 

大日本帝国憲法下での内閣総理大臣は、「同輩中の首席」にすぎず、ほかの国務大臣と並んで天皇を補佐するだけでした。

 

しかし日本国憲法下で内閣総理大臣は内閣の首長として強力な権限をもつ存在に変わりました。

 

内閣全体の意思決定はどのようにしてなされているの?
たなかくん
たなかくん

 

内閣の方針を決定するのは閣議です。閣議は内閣総理大臣が主宰し、国務大臣が出席します。全会一致制で原則非公開です。

 

今回の範囲はここまでです。続いて入試問題を用意しているので、チェックしてみてください。

入試問題にチャレンジ

問1 下線部ⓑ(内閣)に関連して、日本国憲法の規定で明記された内閣の権限とは言えないものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 政令を制定すること

② 下級裁判所の裁判官を任命すること

③ 国政に関する調査を実施すること

④ 外交関係を処理すること

2008年 センター試験 本試験 政治・経済 第2問 問2より)

問2 下線部ⓔ(衆議院の解散)についての記述として誤っているものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 内閣は、天皇の国事行為に対する助言と承認を通して衆議院を解散することができる、という憲法運用が定着している。

② 内閣は、衆議院が内閣不信任決議を行わなくても衆議院を解散することができる、という憲法運用が定着している。

③ 衆議院の解散総選挙後、一定期間内に、特別会が招集されなければならない。

④ 衆議院の解散後、国会の議決が必要になった場合、新しい衆議院議員が選挙されるのを待たなければならない。

2008年 センター試験 本試験 政治・経済 第2問 問5より)

問1:⑤ A:知る権利とは、国や地方公共団体の保有する情報の開示を要求できる権利なので、「国に対して情報の公開を求める」との記述があるウが正解です。B:プライバシーの権利は、私生活をみだりに公開されない権利であると同時に、自己に関する情報をコントロールできる権利でもあります。選択肢アは後者の説明として適切なので、Bにはアが入ります。
問2:③ ①:弁護人依頼権は憲法第37条3項で規定されています。人身の自由について詳しく学びたい方はこちらの記事「人身の自由についてわかりやすく解説(入試問題も用意)【政治第12回】」もあわせてご覧ください。②:刑事補償請求権は憲法第40条で規定されているので誤りです。請求権について学習したい方はこちらの記事「参政権・請求権についてわかりやすく解説(入試問題付き)【政治第14回】」をチェックしてみてください。④:プライバシーの権利が裁判所で認められたケースは、1964年の「宴のあと」事件判決などがあります。
問1:③ 国政調査権は、衆参両議院に与えられた権限です。国会についてより深く学習したい方はこちらの記事「【10分でわかる】国会の仕組みから種類・権限まで徹底解説【政治第18回】」を読んでみてください。

 

問2:④ 衆議院の解散後、緊急で国会の議決が必要になった場合には、内閣が参議院の緊急集会を要求できます。だから「新しい衆議院議員が選挙されるのを待たなければならない」という記述は間違いです。

 

問3:④ ①:知的財産権のうち、産業財産権(特許権・実用新案権・意匠権・商標権の4つ)を管轄する機関として特許庁、著作権を管轄する機関としては文化庁が設置されています。②:最高裁判所は環境権を憲法上の権利として認めていません。しかし新潟水俣病・イタイイタイ病・四日市ぜんそく・水俣病の四大公害訴訟や大阪空港公害訴訟では、市民への損害賠償請求を認めています。③:プライバシーの権利ではなく、知る権利です。

まとめ

今回は、内閣の仕組み・権限について解説しました。

 

おさえておきたいポイントは以下の2つです。

 

・内閣は国会の信任に基づいて成立している。国会が内閣に対して不信任を決議した場合、内閣は10日以内に総辞職か衆議院の解散かを選ばなければならない。
・内閣の権限は、法律の執行・条約の締結・政令の制定など多岐にわたる。

 

この記事を読んで内閣についてしっかりマスターしていただければ幸いです。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

前回の記事「【10分でわかる】国会の仕組みから種類・権限まで徹底解説【政治第18回】」をご覧ください。

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