今回のテーマは、地方分権改革です。この記事で学べる内容は以下のとおりです。
この記事からわかること
・地方分権改革の目的
・地方分権改革のメリット・デメリット
・地方分権改革での主要な取り組み3つ
(地方分権一括法の制定・市町村合併・三位一体の改革)
また記事の後半には、今回のテーマに関連した入試問題を用意しています。学習した内容の復習もできるので、最後まで読んでみてください。
地方分権改革とは
(地方分権改革:オリジナル)
地方分権改革とは、地方分権を進めるための一連の改革のことです。
地方分権改革をおこなう目的は、地方自治体が自分たちの地域のことを主体的に決定できるようにするためです。つまり自治体の自立性を高めるのが、大きなねらいなのです。
地方分権改革の主なメリットは以下の3つです。
- 地域の実情にあわせたサービスを提供できる
- 国と地方の役割が明確になる
- 国の関与が最小限になる
なかでも地域の実情にあわせたサービスを提供できるのが最大のメリットです。
逆にデメリットとしては、
- 地域間で経済格差が広がる
- 住んでいるところによってサービスが異なる
- 地方自治体の権力が大きくなりすぎてしまう
などがあげられます。
地方分権改革での主な取り組み
(栃木県下都賀郡旧岩舟町(現:栃木市):wikiより)
地方分権改革の主な取り組みは、
- 地方分権一括法の制定
- 市町村合併
- 三位一体の改革
の3つです。
地方分権一括法
地方分権一括法は、国と地方の関係をこれまでの上下・主従関係から、対等・協力関係へと転換するために制定された法律です。1999年に成立し、2000年に施行されました。
地方分権一括法により、まず機関委任事務が廃止されます。
機関委任事務とは、法令により国から地方自治体へ委託される事務のことです。かつては都道府県の仕事の約8割・市町村の仕事の約4割を機関委任事務が占めていました。
最大の問題は、機関委任事務の増大により、地方自治体が本来おこなわなければならない業務が圧迫された点です。また地方自治体は、多額の財政負担を強いられました。
そこで機関委任事務を廃止し、地方自治体の事務を自治事務と法定受託事務に再編したのです。
自治事務とは、地方の実情にあわせて独自におこなう事務を指します。
具体例は以下のとおりです。
- 都市計画の決定
- 学級編成の基準決定
- 就学校の指定
- 病院や薬局の開設許可
法定受託事務とは、本来は国がおこなう仕事ではあるものの、地方自治体が代行している事務のことです。
例としては、
- 国政選挙
- パスポートの交付
- 戸籍管理
- 国道の管理
- 生活保護の決定
があげられます。
地方分権一括法が制定された6年後の2006年には、より地方分権を推し進めるため、新たに地方分権改革推進法が成立しました。
地方分権改革推進法は3年間の時限立法として2007年に施行され、2010年に失効しています。
市町村合併
1999年から2010年にかけて市町村の合併が相次ぎました。いわゆる平成の大合併です。
1998年には全国に3,232もの市町村がありましたが、合併が進んだ結果、2014年には1,718まで減少しました。
合併が積極的におこなわれた理由は、国の財政危機や少子高齢化に対応するためです。
また現時点では実現していないものの、導入が検討されているのが道州制です。
道州制とは都道府県を廃止し、新たに「道」と「州」といった広域自治体を設け、国の権限や財源を移譲する制度を指します。
道州制のメリットは、以下の2つです。
- 地域住民の意思が行政に反映される
- 行政の効率化を実現できる
一方で
- 州都への一極集中が進む
- 帰属意識が低下する
などのデメリットも懸念されています。
三位一体の改革
三位一体の改革とは、2000年代前半に小泉内閣が打ち出した、国と地方の税財政改革です。
具体的な改革内容は、以下のとおりです。
- 国から地方への補助金の削減
- 地方交付税の見直し
- 国から地方自治体への税源の移譲(国税を減らして、地方税を増やす)
三位一体の改革をおこなった目的は、
- 地方の行政・財政に対する国の関与を縮小する
- 国に対する依存体質からの脱却を図る
- 地方の権限と責任を大幅に拡大する
- 国の財政負担を軽減する
の4つがあげられます。
三位一体の改革を進めた背景には、深刻な地方財政にあります。
地方財政の課題は、
- 三割自治
- 地方債(地方公共団体の借入金)の増発
の2つです。
三割自治は、地方公共団体の自主財源が3~4割しかない状態を指します。要するに地方税だけでは、財政をまかなえないわけです。
ゆえに国からの国庫支出金と、地方交付税に依存してしまっているのが実情です。
また地方債を増発して、累積債務で財政破綻に陥る自治体もなかにはあります。
そこで地方財政の立て直しを図るため、三位一体の改革が進められました。
結果として、2004年からの3年間で約4.7兆円の補助金と約5.1兆円の地方交付税を削減できたほか、約3兆円の税源移譲に成功しました。
しかし
- 地方分権が進んでいない
- 地方交付税の削減で自治体間の格差が広がった
- 自主財源の乏しい自治体の財政がより厳しくなった
といった問題点もあります。
入試問題にチャレンジ
問1 生徒Xと生徒Yは、下線部ⓑ(地方分権一括法(1999年成立)に関する資料)をみながら会話をしている。次の会話文中の空欄【ア】~【ウ】に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。
X:この時の地方分権改革で、国と地方自治体の関係を【ア】の関係としたんだね。
Y:【ア】の関係にするため、機関委任事務制度の廃止が行われたんだよね。たとえば、都市計画の決定は、【イ】とされたんだよね。
X:【ア】の関係だとして、地方自治体に対する国の関与をめぐって、国と地方自治体の考え方が対立することはないのかな。
Y:実際あるんだよ。新聞で読んだけど、地方自治法上の国の関与について不服があるとき、地方自治体は【ウ】に審査の申出ができるよ。申出があったら【ウ】が審査し、国の機関に勧告することもあるんだって。ふるさと納税制度をめぐる対立でも利用されたよ。
① ア 対等・協力 イ 法定受託事務 ウ 国地方係争処理委員会
② ア 対等・協力 イ 法定受託事務 ウ 地方裁判所
③ ア 対等・協力 イ 自治事務 ウ 国地方係争処理委員会
④ ア 対等・協力 イ 自治事務 ウ 地方裁判所
⑤ ア 上下・主従 イ 法定受託事務 ウ 国地方係争処理委員会
⑥ ア 上下・主従 イ 法定受託事務 ウ 地方裁判所
⑦ ア 上下・主従 イ 自治事務 ウ 国地方係争処理委員会
⑧ ア 上下・主従 イ 自治事務 ウ 地方裁判所
問2 下線部ⓓ(地方自治体)に関して、日本の地方自治体に関する記述として正しいものを、次のA~Cからすべて選んだとき、その組合せとして最も適当なものを、下の①~⑧のうちから一つ選べ。
A 地方自治における二元代表制とは、首長と議会がともに住民から選挙で選ばれ、住民を代表する制度を指す。
B 地方分権に関わる三位一体の改革には、国から地方への税財源の移譲は含まれていない。
C 国の指揮・監督の下で処理されてきた機関委任事務は、地方分権一括法制定後も残された。
① AとBとC ② AとB ③ AとC ④ BとC ⑤ A ⑥ B ⑦ C ⑧ 該当するものはない
問1:③
ア:2000年に施行された地方分権一括法により、国と地方の関係はこれまでの上下・主従関係から対等・協力関係へと変化しました。
イ:都市計画の決定は、地方公共団体で独自におこなえる自治事務の一種です。ほかにも自治事務には、就学校の指定・病院や薬局の開設許可・介護保険サービスなどがあります。ちなみに法定受託事務の例としては、国政選挙・パスポートの交付・戸籍管理があげられます。
ウ:国と地方公共団体の間で起こった争いごとを解決する機関は、総務省の国地方係争処理委員会です。地方公共団体は、国の関与が不服の場合、国地方係争処理委員会に審査の申し立てができます。
A:正しい内容です。
B:三位一体の改革とは、国から地方への補助金の削減,地方交付税の見直し,国から地方自治体への税源の移譲です。したがって国から地方への税財源の移譲は含まれます。
C:地方分権一括法により、機関委任事務は廃止されたので誤りです。廃止にともない、自治体の事務は自治事務と法定受託事務に再編されました。
まとめ
今回は地方分権改革について解説しました。学習した内容のおさらいです。
- 地方分権改革は、地方自治体が自分たちの地域のことを主体的に決定できるようにするための改革。
- 地方分権の最大のメリットは、地域の実情にあわせたサービスを提供できる点だ。
- 地方分権改革でおこなわれた主な取り組みとしては、地方分権一括法の制定・平成の大合併・三位一体の改革がある。
この記事を読み込んで、地方分権改革の目的やメリット・デメリット、具体的な取り組みについてしっかりマスターしていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「地方自治とは?団体自治と住民自治の違いについてわかりやすく解説【政治第23回】」をご覧ください。
次回の記事「政党政治とは?日本の政党政治の歴史や圧力団体との違いについてわかりやすく解説【政治第25回】」をご覧ください。
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