元禄文化について解説(入試問題も用意)【日本史第53回】

今回は元禄文化について解説します。

元禄文化の特徴をはじめ、文学・芸術における代表的な作品・学問の分野で活躍した人物などを紹介します。

最後には入試問題を用意しているので、ぜひ最後までお読みいただき元禄文化をマスターしていきましょう。

この記事からわかること・元禄文化の特徴

・絵画・工芸・文学・芸能・学問で活躍した人物

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特徴

 

(燕子花図屛風:wikiより)

17世紀の半ばから18世紀の初めに栄えた文化を元禄文化といいます。

元禄文化の特徴は、3つあります。一つ目は鎖国をしたことで外国の影響を受けることが少なくなり、日本独自の文化が成熟したという点で、二つ目は学問が重視されたというところです。そして三つ目は、紙の生産や出版・印刷の技術、流通が発展したことです。

では次の項目から、こうした特色を持つ元禄文化を分野ごとに詳しく見ていきましょう。

絵画・工芸

 

(菱川師宣:wikiより)

元禄文化では狩野派は力を失い、代わって大和絵の土佐派が復活します。

土佐派についてはこちらの記事「室町文化について解説~絵画・文学・庭園まで幅広く紹介~(入試問題付き)【日本史第37回】」も参考にしてください。

この時代に土佐派の中心となったのは、土佐光起です。その土佐派から分かれた住吉派も登場し、住吉如慶具慶親子が活躍しました。

また俵屋宗達の画風を受け継いだ尾形光琳は琳派を起こし、「紅白梅図屏風」「燕子花図屏風」といった代表作を残したほか、工芸の分野でも「八橋蒔絵螺鈿硯箱」を作るなど、活躍しました。

そして新たに登場したのが浮世絵です。この分野では菱川師宣が版画をはじめ、多くの作品を描いて人気を集めました。彼の代表作としては「見返り美人図」があります。浮世絵の版画は庶民でも安価で買えることから、化政文化の頃にはどんどん盛んになっていきました。陶器では、野々村仁清が京焼を大成させました。

S先生
S先生

ちなみに浮世絵には版画と肉筆画の2種類あります。版画は同じ絵を何枚も刷ることができるので大量生産ができ、結果として庶民でも安価で買えるようになったというわけです。なお「見返り美人図」は肉筆画なので、気を付けてくださいね。

文学

(松尾芭蕉:wikiより)

俳諧を芸術の域にまで高めた松尾芭蕉が登場したのもこの頃です。松尾芭蕉は幽玄閑寂の蕉風(正風)俳諧を確立し、「奥の細道」などの紀行文を著しました。

また、井原西鶴浮世草子と呼ばれるジャンルの小説を書きました。浮世草子は寛永文化の頃に出てきた仮名草子を発展させたもので、現実の世相や風俗を背景に、人々が愛欲や金銭に執着しながら世の中を生き抜く様子を描いています。

彼の作品には好色物・武家物・町人物があり、好色物には「好色一代男」「好色五人女」、武家物には「武道伝来記」、町人物には「日本永代蔵」「世間胸算用」といった代表作があります。

芸能

(近松門左衛門:wikiより)

桃山時代に登場した阿国歌舞伎は女歌舞伎へと発展したものの禁止され、続いて登場した美少年が演じる若衆歌舞伎も禁止され、新たに野郎歌舞伎が登場しました。

江戸では荒々しい演技(荒事)で人気を博した市川団十郎、上方では恋愛劇(和事)を得意としていた坂田藤十郎・女性を演じる女形の芳沢あやめが代表的な人物です。

また、人形浄瑠璃も盛んになりました。この分野で登場する人物として近松門左衛門竹本義太夫を覚えておいてください。

近松門左衛門は脚本家で、当時の世相を題材にした世話物、歴史的な事柄を扱った時代物といった作品を残しました。世話物の主な作品としては「曽根崎心中」「冥途の飛脚」が、時代物の代表作としては「国姓爺合戦」があります。

竹本義太夫は人形浄瑠璃の伴奏にあたる義太夫節で知られています。また人形遣いとして有名な人物としては、辰松八郎兵衛がいました。

では次の項目では学問について見ていきましょう。

S先生
S先生

国姓爺合戦は、日本で生まれた鄭成功が中国大陸へ渡り、滅亡した明の再興に尽力した事績を題材にした内容となっています。

学問

(荻生徂徠:wikiより)

儒学の発達

この時代の儒学の中心となったのは朱子学です。朱子学は京学と南学の大きく2つに分類されます。

藤原惺窩が祖の京学では、その門人だった林羅山とその子孫は代々学問を講義する侍講(じこう)として幕府に仕え、学問と教育を担いました。羅山と彼の子、林鵞峰二人で作った歴史書は「本朝通鑑」です。

南学は、戦国時代に開かれたとされ、谷時中が継承しました。彼に学んだ人物には、野中兼山山崎闇斎がいます。とくに山崎闇斎は神道を儒教流に解釈した垂加神道を説きました。

朱子学以外の学問では、陽明学古学派があります。

陽明学は明の王陽明が始めた学問で、日本では、中江藤樹が始めました。陽明学は知行合一の精神を持ち、現実を批判し矛盾を正していこうという考えの学問だったため、幕府から警戒されました。実際中江藤樹の門人である熊沢蕃山は、「大学或問」(だいがくわくもん)で幕府を批判する内容を書き、処罰されています。

一方、孔子・孟子の古典に立ち返ろうとしたのが古学派で、山鹿素行伊藤仁斎によって始められました。山鹿素行は「聖教要録」で朱子学を批判したため、最終的に赤穂へと流されます。伊藤仁斎は子の伊藤東涯とともに、古義堂を開いて活動を行いました。

仁斎の古学を受け継いだのが荻生徂徠す。荻生徂徠は、武士の土着を説いた「政談」を著し、享保の改革では政治顧問の役割を果たしました。荻生徂徠の弟子である太宰春台は、武士も商売を行い、専売制度によって利益を上げるべきだと説き、「経済録」を著しました。

田中くん
田中くん

神道に儒教を加えたから垂「加」神道なんですね。

自然科学・国文学

自然科学の分野では、本草学・和算・天文学の発展が見られました。

本草学は薬草を研究する学問で、貝原益軒が「大和本草」を、稲生若水が「庶物類纂」をそれぞれ著しました。

和算は日本独自の数学のことを指します。「発微算法」を著した関孝和や、「塵劫記」を著した吉田光由が代表的な人物です。

天文学では、日本独自の暦である貞享暦を作成した渋川春海(安井算哲)が活躍しました。彼は5代将軍綱吉のもとで天文方を務めました。

国文学では、万葉集を研究して「万葉代匠記」を著した契沖や、源氏物語や枕草子の研究を行うほか、綱吉のもとで歌学方を務めた北村季吟がいます。

今回の範囲はここまでです。最後に入試問題を解いて理解度をチェックしてみてください。

入試問題にチャレンジ

【ア】は本名を杉森信盛といい、1653年生まれといわれているが、幼少期のことはあまりよくわかっていない。父の杉森信義は越前吉江藩に仕える武士であったが、のち浪人となる。信盛については10代後半には京都に住み、公家に仕えていたことがわかっている。この時期の上方は経済先進地として栄え、かつ文化の中心でもあった。

やがて彼は武士身分を捨て、宇治加賀掾一座のもとで歌舞伎や浄瑠璃の作者となり、浄瑠璃の竹本義太夫や竹田出雲、歌舞伎の坂田藤十郎に作品を提供するようになった。代表作として、世話物では「曽根崎心中」「心中天網島」、時代物では「国姓爺合戦」などがある。「国姓爺合戦」は、日本で生まれた鄭成功が中国大陸へ渡り、滅亡した【イ】の再興をめざし、日本に援兵を要請したという史実を題材にした作品である。(以下略)

問 空欄【ア】【イ】に入る語句の組合せとして正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① ア 井原西鶴 イ 明 ② ア 井原西鶴 イ 清

③ ア 近松門左衛門 イ 明 ④ ア 近松門左衛門 イ 清

2017年 センター試験 本試験 日本史B 第4問 問1より)

正解 ③ 井原西鶴は浮世草子と呼ばれるジャンルの小説を書いた人物なので、アに入るのは近松門左衛門です。イは国姓爺合戦の内容を仮に知らなかったとしても、清がいつの時代にあったか(もしくは日清戦争はいつ起こったか)がわかれば解くことができます。日清戦争は明治時代に起きたので、イには明が入ります。
正解 ② bの紀伊国屋文左衛門は、紀伊のみかんを江戸に送って利益を上げた豪商です。cの田中勝介は京都の商人で、上総に漂着したドン=ロドリゴをノヴィスパン(メキシコ)へと送った人物です。詳しくはこちらの記事「江戸初期の鎖国と外交について解説(入試問題付き)【日本史第46回】」をご覧ください。

まとめ

今回は元禄文化について見てきました。

元禄文化の特徴をはじめ、各分野の代表的な作品や人物をしっかりと覚えておきましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

前回の記事「江戸時代における交通の発達や貨幣について解説(入試問題付き)【日本史第52回】」ですのでよければ読んでください。

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