江戸時代における交通の発達や貨幣について解説(入試問題付き)【日本史第52回】

今回は江戸時代における交通の発達・貨幣を中心に解説していきます。

キーワードは東廻り海運・西廻り海運・寛永通宝です。

センター試験にも出題されたことのある重要な分野なので、この記事を通してしっかりマスターしていきましょう。

この記事からわかること・江戸時代の陸上・海上交通

・貨幣の発達

・江戸・大坂・京都の発展

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交通

 

(河村瑞賢:wikiより)

まずは江戸時代における交通について見ていきます。

陸上交通

幕府は江戸の日本橋を起点とする主要な幹線道路として五街道を整備しました。

五街道とは、江戸・大坂・京都を結ぶ東海道をはじめ、中山道甲州道中日光道中奥州道中という5つの街道のことを指します。五街道の管理は、1659年に創設された道中奉行が行いました。

またこれ以外にも全国に主要な道路が整備されました。こうした道路を脇街道といいます。街道には荷物を運搬する人馬や宿泊施設・茶店を備えた宿駅が数多く置かれました。宿駅に設けられた施設の中で、大名などが利用する宿泊施設を本陣・脇本陣といい、一般旅行者が使う宿泊施設を旅籠屋といいます。

またこのほかにも問屋場が設けられ、宿役人が荷物の送り届けを行いました。こうした荷物の送り届けをする者を飛脚といい、その中でも幕府公用の飛脚を継飛脚といいます。

街道には宿駅のほかに、一里塚や関所なども設けられました。

一里塚とは街道約4kmごとに設けられた標識のことです。近世の中期になると、飛脚による通信制度が整えられたことで、全国の情報が正確に伝えられるようになりました。

『脇がかゆいなぁ…脇街道』・『宿敵じゃなくて宿駅』と覚えようっと。
たなか君
たなか君

 

S先生
S先生
・・・・・

海上交通

(東廻り海運・西廻り海運:オリジナル)

大量の物資を安価で運ぶには水上交通の整備が必要でした。そこで17世紀の初めから河川の整備が進められます。

とくに京都の豪商角倉了以は富士川・高瀬川の整備を行うなど、水路開発に力を入れました。

また海上では17世紀前半に大型船である菱垣廻船が、大阪から江戸への航路で運送を始めます。17世紀後半には江戸の商人河村瑞賢が、東廻り海運西廻り海運というルートを整備し、全国規模の海上交通網を完成させました。

18世紀の前半になると大坂・江戸間で酒荷専用の樽廻船が登場します。樽廻船はのちに酒以外の商品も運ぶようになっただけではなく、荷積みが迅速にできてなおかつ早く着くことから18世紀後半には菱垣廻船を圧倒しました。

18世紀末には遠隔地を結ぶ廻船が各地で発達します。その中で蝦夷地の海産物などを大坂に輸送した船である北前船(きたまえぶね)を覚えておいてください。

S先生
S先生
東廻り海運と西廻り海運の違いは、太平洋側を通る(東廻り)か日本海側を通る(西廻り)かという点です。

貨幣

 

(寛永通宝:wikiより)

江戸幕府は、全国的に通用する貨幣の供給を目指して貨幣の鋳造に取り組みました。その流れについて解説していきます。

まず1600年頃に徳川家康は、金座・銀座で慶長金銀を大量に作らせました。これは全国的な統一貨幣としては日本初とされています。

そして江戸では主に金貨が、大坂では主に銀貨が使われるようになりました。金貨は枚数を数えて使う計数貨幣なのに対して、銀貨は重さをはかって使う秤量貨幣であるというのがそれぞれの特徴です。金貨の例としては小判や一分金、銀貨の例としては丁銀や豆板銀などが挙げられます。

また寛永期には銭座で寛永通宝のような、銅を用いて作られた銭貨を全国に流通させました。

金貨・銀貨・銭貨をまとめて三貨といい、この三貨は17世紀中頃までには全国に広まりました。また各藩独自に藩札を発行している地域もあったことに加え、貨幣は両替商によって流通したこともおさえておきましょう。

S先生
S先生
金貨・銀貨が今でいうお札と考えるならば、銭貨はコインのようなものと考えるといいでしょう。

三都の発展

(堂島米市場跡:wikiより)

17世紀後半に、江戸・大坂・京都の3つの都市が発展を遂げます。この3つをまとめて三都といいます。

江戸は日本最大の消費都市となり、大坂は「天下の台所」と呼ばれるように物流・商業の中心地として栄えました。京都では西陣織をはじめとして、京染・京焼などの高い技術を駆使した手工業生産が発達します。

また商業の面では、江戸の十組問屋・大坂の二十四組問屋のように荷物運送の安全などを目指して結成された同業組合(仲間)も見られるようになりました。

また生産地と三都などの問屋・仲買との売買の場となる卸売市場も発達しました。大坂では堂島の米市場・天満の青物市場、江戸では日本橋の魚市場などが有名です。

今回の範囲はここまでとなります。最後に入試問題を用意しているので、実際に解いて理解度をチェックしてみてください。

入試問題にチャレンジ

下線部ⓑに関連して、近世の西日本の流通に関して述べた次の文X・Yと、それに該当する人名a~dとの組合せとして正しいものを、下の①~④のうちから一つ選べ。

X 大坂と東北地方を結ぶ、西廻り航路(海運)を整備した。

Y 高瀬川の開削を行い、内陸部の河川舟運の発達に寄与した。

a 河村瑞賢 b 紀伊国屋文左衛門

c 田中勝介 d 角倉了以

① X-a Y-c ② X-a Y-d

③ X-b Y-c ④ X-b Y-d

2015年 センター試験 本試験 日本史B 第4問 問2より)

正解 ② bの紀伊国屋文左衛門は、紀伊のみかんを江戸に送って利益を上げた豪商です。cの田中勝介は京都の商人で、上総に漂着したドン=ロドリゴをノヴィスパン(メキシコ)へと送った人物です。詳しくはこちらの記事「江戸初期の鎖国と外交について解説(入試問題付き)【日本史第46回】」をご覧ください。

まとめ

今回は江戸時代における交通の発達や貨幣、三都の発展について見てきました。交通では、角倉了以と河村瑞賢という2人の重要な人物が何をしたのかについて覚えておいてください。貨幣の分野では、メインで使用された貨幣が江戸と大坂で異なることを理解しておきましょう。

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