室町時代の農業・商工業について解説(確認問題付き)【日本史第36回】

室町時代には、1年間で3種類の作物を栽培する三毛作が見られるようになりました。また品種改良や肥料の多様化によって収穫が増え、農民は豊かになっていきます。

 

商業では、各地の特色を生かして様々な特産物が作られました。さらに貨幣の面では悪銭が出回ったことを受け、幕府は撰銭令を発布して一定の悪銭の流通を禁止するなど対策を講じたのでした。

 

今回は室町時代の農業・商工業について解説します。

 

この記事からわかること・畿内では二毛作に加えて三毛作も行われた。

・肥料は従来の刈敷・草木灰だけではなく、下肥も使用されるようになった。

・定期市の開催日も増え、月に6回開く六斎市が中心になった。

・見世棚をかまえる店が増えた。

・粗悪な私鋳銭を避け、良質な銭を選ぶ撰銭が行われ始めた。

・幕府は撰銭令によって、排除すべき悪銭の基準を定めた。

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室町時代の農業~三毛作の始まり~

(竜骨車:wikiより)

まずは農業について見ていきましょう。

 

灌漑・排水施設が整備されたことにより、畿内では二毛作に加えて米・麦・そばの三毛作も行われるようになりました。また水稲の品種改良も進み、早稲(わせ)・中稲(なかて)・晩稲(おくて)の作付けが普及しますこれらは収穫時期の差を示していました。

 

それに加えて肥料にも変化が起きます。鎌倉時代から使用されている刈敷・草木灰だけではなく、下肥が広く使われるようになったのでした。

 

室町時代の商工業

(永楽通宝:wikiより)

続いて商工業について解説します。

各地の特産品

(各地の特産物:オリジナル)

室町時代には各地の特色を生かした様々な特産品が作られるようになりました。

 

その中でも代表的なものとしては、備前などで作られた刀や河内の鍋、加賀や丹後を中心に生産された絹織物などが挙げられます。特に刀は日明貿易において重要な輸出品として多く作られていました。

京都・河内・大和・摂津などでは、酒などの生産が盛んに行われたのもこの時代でした。

商業

ここでは商業について見ていきましょう。

 

平安時代の末期から室町時代にかけて月に3回行われた定期市のことを三斎市といいます。しかし応仁の乱の頃になると、市の回数が6回に増えました。そのため、これを六斎市といいます。

 

またこの頃には荷を背負って行商する連雀商人や呼び売りして歩く振売(ふりうり)の数も増えていきました。彼らの中では女性も多くいて、特に京都の大原女(おはらめ)や桂女(かつらめ)が代表的です。大原女は炭などを売る商人のことで、桂女は鵜飼集団の女性のことをいいます。

 

さらに見世棚を置いた店もこの時代に増え始め、中には米や魚など特定の商品を売る市場も出てきたのでした。

 

同様に同業者団体である座も数が増え始めます。中には課税を免除された者や、独占的な仕入権・販売権を得たりする者もいた一方で、座に属さない新興商人も出現しました。

貨幣

最後に貨幣について解説します。

 

従来の宋銭とともに、新たに永楽通宝などの明銭が使用されるようになりました。しかし市場に良質な銭ばかりがあったわけではありませんでした。粗悪な私鋳銭も出回り始めたのです。

 

そこでお金を受け取る側が粗悪な銭(悪銭)を避けて、良質な銭を選ぶ撰銭(えりぜに)が行われ始めたことで、円滑な流通が阻害されました。

 

幕府はこの状況をどのように対処したのでしょうか?撰銭令を発布して、排除する悪銭の基準や悪銭と良質な銭の混合比率を決めたのでした。

 

また貨幣経済が発達したことによって金融業者も発展していき、酒屋が潤沢な資金を活かして高利貸しを兼ねるケースも増えました。

 

遠隔地の取引では、為替手形の一種である割符(さいふ)の利用が活発化するようになったのです。

 

また交通の面でも、変化が見られます。交通路が発達し、廻船の往来が増えるとともに、馬借車借と呼ばれる運送業者が輸送において活躍していきました。

 

さらに京都や兵庫などには問屋が生まれ、商品の保管や売買・商人の宿としての機能を果たすなど大きな役割を果たしたのでした。

 

入試問題にチャレンジ

B 次の絵は、織田信長が上杉謙信に送ったと伝えられてきた『洛中洛外図屏風』の一部である。この画面には、板で屋根を葺いた建物の内外に商品を並べた【】とよばれる店舗の様子、京都市中を行商する人たちや、米俵を運んできた馬借の姿などが見られ、経済活動の進展をうかがうことができる。貨幣が用いられる機会も増え、室町幕府は【】を出して貨幣の流通を円滑にしようとした。また、サルや犬などの動物も描かれており、中世末の京都の街並みや人々の生活の様子が知られる。

問4 空欄【ウ】【エ】に入る語句の組合せとして正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① ウ 掛屋 エ 徳政令 ② ウ 掛屋 エ 撰銭令

③ ウ 見世棚 エ 徳政令 ④ ウ 見世棚 エ 撰銭令

2011年 センター試験 本試験 日本史B 第3問 問4より)

④ 掛屋は江戸時代に出てきますので、ウに入るのは見世棚です。また徳政令は借金の帳消しを認めるものなので、エに入るのは撰銭令になります。したがって正解は④です。

まとめ

今回は室町時代の農業・商工業について解説しました。

 

いきなりすべての内容を覚えるのは大変なので、最初は三毛作や撰銭令のような入試問題でも出題されたことのある部分を重点的に覚えていきましょう。そこから少しずつ細かい知識を増やしていってくださいね。

 

前回の記事「室町時代の外交を解説(入試問題も解説)」ですのでよければ読んでください。

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コメント

  1. […] 正解:② bは「おとろえた」が間違いです。室町時代には各地で特産物の生産が盛んにおこなわれるようになりました。例としては、三河の綿織物や美濃・但馬の紙などがあります。詳しくは「室町時代の農業・商工業について解説(確認問題付き)【日本史第36回】」の記事をご覧ください。cは「時宗や律宗からなる」が誤りです。林下は地方への布教に力を入れた禅宗諸派のことを指します。もしcが難しい場合は、今回学習したdの内容が正しいと判断して解き進めるとよいでしょう。 […]

  2. […] 詳しくは「室町時代の農業・商工業について解説(確認問題付き)【日本史第36回】」の記事をご覧ください。 […]

  3. […] 詳しくは「室町時代の農業・商工業について解説(確認問題付き)【日本史第36回】」の記事をご覧ください。 […]

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