今回のテーマは、基本的人権と公共の福祉の関係です。
基本的人権の性質・公共の福祉とは何か・日本国憲法における人権の享有者は誰なのかを詳しく解説しました。
最後には入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。
この記事からわかること
・基本的人権の性質
・公共の福祉とは何か
・日本国憲法における人権の享有者(外国人・法人は含まれるのか)
基本的人権とは
(日本国憲法:wikiより)
基本的人権とは、人間が生まれながらにして持っている権利です。自由権・平等権・社会権・参政権・請求権の大きく5つに分類されます。どれも重要なのでしっかり覚えておきましょう。
日本国憲法の第11条・第97条で、基本的人権は「侵すことのできない永久の権利」と定められています。つまり憲法で保障されている人権は、立法・行政・司法など、あらゆる国家権力から侵害されないというわけです。
また第13条では、「すべて国民は、個人として尊重される」として個人の尊重を宣言すると同時に、幸福追求権について「公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と規定しています。
公共の福祉による人権の制限
(公共の福祉:オリジナル)
公共の福祉とは、すべての人々に対して平等に人権を保障するための原理です。
人権は永久不可侵の権利であり、大日本帝国憲法のような法律による制約は認められていません。
しかし、いくら人権が尊重されるべきだとしても、他人に対して迷惑がかかってしまう場合、権利が制限されます。
ここで登場するのが公共の福祉という概念です。
憲法第12条では国民が人権を濫用せず、常に公共の福祉のために利用する責任を負うと定め、第13条では「公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」としています。
例えば、表現の自由が憲法で保障されている権利であっても、他人を中傷したりプライバシーを侵害したりする表現活動までは認められないのです。
つまり人権は他人の権利を侵害しない限りにおいて保障されます。
人権の享有者
(在日外国人の権利・義務:オリジナル)
人権が保障されるのは、日本国籍を保有している日本国民だけではありません。外国人や法人についても性質上可能な限り、人権が保障されています。
「性質上可能な限り」との制約があるのは、日本国籍のない外国人に憲法第22条2項の国籍離脱の自由を認めたり、個人ではない企業や団体に普通選挙権や生存権を保障したりしても意味がないからです。
ちなみに在日外国人の権利・義務については、入試でも頻出の項目なので、上記のように表にまとめています。日々の学習にお役立てください。
今回の範囲はここまでです。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。
入試問題にチャレンジ
問1 下線部ⓓ(外国人)に関連する日本の現在の状況についての次の記述A~Cのうち、正しいものはどれか。当てはまる記述をすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、下の①~⑦のうちから一つ選べ。
A 外国人も、中央省庁の行政文書に関して、情報公開法に基づいて開示を請求することができる。
B 最高裁判所は、永住資格を有する在日外国人には、地方参政権が憲法上保障されていると判断した。
C 地方公務員採用試験に関して、日本国籍を受験条件としない地方公共団体もある。
① A ② B ③ C ④ AとB ⑤ AとC ⑥ BとC ⑦ AとBとC
問2 下線部ⓓ(人権)に関して、日本の状況の説明として最も適当なものを、次の①~④ のうちから一つ選べ。
① 憲法には生存権が明記されており、最高裁判所は、これを直接の根拠として、国民は国に社会保障給付を請求することができるとした。
② 名誉を毀損する行為の禁止が、表現の自由に対する制約として認められるように、人権であっても、他者を害する場合等には制約されることがある。
③ 最高裁判所は、裁判所による雑誌の発売前の差止めが、憲法で明示的に禁止されている検閲に該当すると判断した。
④ 在外投票は外国に居住している国民の選挙権を保障するための手段であるが、日本の国政選挙で実施されたことはなく、制度導入が求められている。
問3 下線部ⓖ(多様な人々の共存する現代国家)に関連して、日本に居住している外国人の権利保障についての説明として適当でないものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 外国人も、プライバシーの権利が保障される。
② 外国人も、選挙権が保障される。
③ 外国人にも、国民年金への加入が認められる。
④ 外国人にも、会社の設立が認められる。
まとめ
今回は、基本的人権と公共の福祉について解説しました。
基本的人権・公共の福祉それぞれの定義はもちろん、在日外国人の権利・義務もしっかりマスターしておきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「国民主権とは?天皇主権との違いについてわかりやすく解説(入試問題演習つき)【政治第7回】」をご覧ください。
次回の記事「法の下の平等とは?判例とセットでわかりやすく解説(関連入試問題も)【政治第9回】」をご覧ください。
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