王権神授説と社会契約説の違いについてわかりやすく解説【政治第2回】

今回は、王権神授説と社会契約説の違いを解説しつつ、近代民主政治がどのように成立したかを見ていきます。

 

社会契約説を唱えた3人の思想家、ホッブズ・ロック・ルソーのそれぞれの国家論についてもわかりやすく解説しました。

 

最後には入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。

この記事からわかること

・王権神授説と社会契約説の違い

・近代民主政治が成立した背景

・ホッブズ・ロック・ルソーそれぞれの国家論

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王権神授説とは

(ジェームズ1世:wikiより)

国王の権力は神から与えられたものであり、神聖不可侵とする考え方王権神授説といいます。王権神授説では、国王は神に対してのみ責任を負うとされ、人々には国王への絶対服従が求められました。

 

代表的な論者には、イギリス国王のジェームズ1世やフランスの思想家ボシュエ、ボーダンらがいます。ボーダンは、主著「国家論」でも有名ですね。

 

そして、王権神授説の考え方にもとづいて支配を正当化してきたのが、絶対王政国家です。

 

絶対王政とは、国王に全権力が集中する中央集権的な政治体制を指します。16~18世紀にヨーロッパ各国で成立しました。

 

しかし、絶対王政により、人々の不満が高まった結果、市民革命が起きます。

 

市民革命とは、経済力を付けた商工業者などの市民階級(ブルジョワジー)が主体となって、絶対王政を打ち破った一連の革命のことです。

 

イギリスの清教徒革命(1642~49)・名誉革命(1688~89)に始まり、アメリカ独立革命(1775~83)・フランス革命(1789~99)を経て、ヨーロッパ諸国へ波及していきました。

 

この市民革命によって成立したのが近代民主政治です。

社会契約説とは

画像(表:オリジナル)

社会や国家は個人間の自由意志にもとづく契約によって成立するという考え方社会契約説といいます。

 

17〜18世紀にかけて、王権神授説に対抗する新たな思想として台頭し、市民革命による民主政治の成立に大きな影響を与えました。

 

王権神授説と社会契約説の違いは、どこに支配の正当性を求めたかという点です。王権神授説は支配の正当性を神の意志に求めたのに対し、社会契約説では社会に生きる個人間の合意に求めました。

 

社会契約説を唱えた代表的な思想家は、ホッブズロックルソーの3人です。

ホッブズの思想

(ホッブズ:wikiより)

ホッブズは、清教徒革命期のイギリスの思想家であり、主著「リバイアサン」のなかで次のような国家論を展開します。

 

①人間は本来、自由・平等で独立した存在である
②しかし、国家の存在しない自然状態では万人の万人に対する闘争状態となってしまう
③そこで、社会契約を結んで国家を設立して自然権(生まれながらにして持っている権利)を国家に譲渡し、平和な秩序を維持する必要がある

 

しかし、ホッブズの思想は絶対王政を擁護するものだとして非難されました。

ロックの思想

(ロック:wikiより)

ロックは、名誉革命期のイギリスの思想家です。彼は主著「市民政府二論」で、王権神授説を批判し、次のような国家論を唱えます。

 

①自然状態において、人間には生命・自由・財産を守る権利(自然権)がある
②しかし、自然状態ではその保障が確実でない
③そこで、人々は社会契約を結んで国家を組織し、自然権の保全を政府に信託する必要がある

 

ロックは、政府が信託に背いて自然権を侵害すれば、人々は抵抗権を行使して政府を変更できると主張して、議会政治を擁護しました。

ルソーの思想

(ルソー:wikiより)

ルソーは、主著の「社会契約論」でも知られるフランスの思想家です。彼は次のような国家論を展開します。

 

①自然状態において、人間は離散して暮らしており、悪徳を知らず自由・平等だった
②しかし、私有財産が発生し、文明が発達すると、暴力と略奪がはびこる社会になった
③そこで人々は社会契約を結んで国家を組織し、一般意志にすべての権利を委譲する必要がある

 

一般意志とは、公共の利益を目指すために人々が共通して持っている意志のことです。

 

ゆえにルソーは、全人民が参加する集会や投票によって形成された一般意志に基づく直接民主制を理想とし、ロックが理想とした間接民主制を批判しました。

 

国民が選んだ代表者を通じて政治を行う間接民主制ではなく、国民が自ら政治運営に参加するべきだと主張したわけですね。

 

今回の範囲はここまでです。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。

入試問題にチャレンジ

問1 下線部ⓔ(様々な政治的な考え方)に関連して、政治思想に関する次の記述ア~ウと、それぞれに関係の深い人物A~Cとの組合せとして最も適当なものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。

ア 政府が社会契約に違反した場合、市民は抵抗権(革命権)を用いて新たな政府を作ることができると主張した。

イ 地方自治は民主主義の学校であると主張した。

ウ 人々が社会契約を結び、一般意志(意思)に基づいた政治を行うべきと主張した。

 

A ブライス

B ルソー

C ロック

 

① ア-A イ-B ウ-C

② ア-A イ-C ウ-B

③ ア-B イ-A ウ-C

④ ア-B イ-C ウ-A

⑤ ア-C イ-A ウ-B

⑥ ア-C イ-B ウ-A

2019年 センター試験 本試験 現代社会 第6問 問5より)

 

問2 国家がその活動の資金調達を目的に租税を課すとき、より少ない税金を好ましく思う個人も私たちの中に多いだろう。だが、国家の存立を損なうほどの租税の軽減も、私たちにとって好ましくない。ホッブズが自然状態を【ア】と表現したように、国家がなければ、社会生活に必要な秩序の保持が不可能だからである。(以下略)

本文中の空欄【ア】に当てはまる一節として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 「人民の、人民による、人民のための政治」

② 「自己保存のための配慮が他人の保存にとって最も害の少ない状態」

③ 「万人の万人に対する闘争」

④ 「権利の保障が確保されず、権力の分泌が定められていない社会」

2015年 センター試験 本試験 政治・経済 第1問 問1より)

 正解⑤ ア:「抵抗権」というキーワードから、空欄にはロックが入ります。ウ:「一般意志」というキーワードから、空欄にはルソーが入ります。残ったイには、ブライスがはいるので、正解は⑤です。
正解③ ①:リンカーン・②:ルソー・④:フランス人権宣言の第16条の一部です。
正解③ ①:リンカーン・②:ルソー・④:フランス人権宣言の第16条の一部です。

まとめ

今回は、王権神授説と社会契約説の違いについて解説しました。

 

王権神授説は支配の正当性を神の意志に求めたのに対し、社会契約説では社会に生きる個人間の合意に求めたという点が大きな違いです。

 

ホッブズ・ロック・ルソー3人の思想とあわせて、しっかりおさえておきましょう。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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