核軍縮の歴史についてわかりやすく解説(入試問題も用意)【政治第31回】

今回のテーマは、核軍縮の歴史です。この記事では以下の内容が学べます。

 

この記事からわかること

・核軍縮条約(NPT・CTBTなど)の内容

・SALTとSTARTの違い

 

初学者にも内容をきっちり理解してもらえるよう、わかりやすく解説しました。

 

また記事の後半には、今回のテーマに関連した入試問題を用意しています。この記事を読めば、核軍縮に向けての世界の取り組みが一通り学べますよ。

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核軍縮とは?軍拡から核兵器の規制へ

核軍縮とは?軍拡から核兵器の規制へ(核兵器拡散状況:wikiより)

第二次世界大戦後~1960年代

核軍縮とは、核保有国に対して核軍備の廃絶を段階的に促す取り組みです。

 

第二次世界大戦前後、各国は積極的に核実験を実施しました。1945年にアメリカ、1949年にソ連、1952年にはイギリスがそれぞれ核実験を成功させています。

 

各国が軍拡を進めるなか、1963年にアメリカ・イギリス・ソ連が部分的核実験禁止条約(PTBT)を締結します。背景には、前年に起きたキューバ危機がありました。

 

PTBTのポイントは以下の2つです。

  • フランスと中国が不参加
  • 地下核実験は含まない

 

フランスと中国がPTBTに参加しなかったのには理由があります。核開発におくれをとっていたからです。

 

フランスは1960年、中国は1964年に核実験を成功させており、米・ソ・英からは明らかに開発が遅れていました。

 

またPTBTの内容は、大気圏内・宇宙空間・水中での核実験を禁止するものです。地下核実験は含まないので注意しましょう。

 

ちなみに日本は1964年に批准しています。

 

1968年には、核拡散防止条約(NPT)が国連総会で採択されます。NPTでは、核保有国以外の核保有が禁止されました。

 

S先生
S先生
核保有国とは、アメリカ・イギリス・フランス・中国・ソ連を指します。

 

当初はアメリカ・イギリス・ソ連などが参加し、1992年にはフランス・中国が加盟しました。

 

日本も1970年に調印、1976年に批准・発効しています。

 

しかし、NPTの内容に反発したインド・パキスタン・イスラエルは加盟していません。また北朝鮮も2003年に脱退しています。

1970年代

1972年には、米ソ間で第一次戦略兵器制限条約(SALTⅠ)が締結されます。

 

SALTとはStrategic Arms Limitation Talksの略で、Limitationは制限という意味です。

 

SALTⅠでは、米ソが保有している核兵器の数が制限されました。

 

1979年には、第二次戦略兵器制限条約(SALTⅡ)が調印されます。SALTⅡにより、アメリカとソ連は核兵器の数量を制限して軍縮を進めようとしていました。

 

しかし1979年にソ連がアフガニスタンに侵攻したことを受け、アメリカが批准を拒否したため、SALTⅡは未発効に終わりました。

1980年代~90年代

1983年にはアメリカのレーガン大統領が、戦略防衛構想(SDI)を提唱します。

 

戦略防衛構想とは、敵のミサイルがアメリカへ到達する前に、宇宙空間で迎撃して破壊することを目指した計画です。

 

アメリカとソ連は積極的にミサイル開発をおこない、時代は新冷戦に突入します。

 

しかし1985年にゴルバチョフがソ連共産党の書記長に就任すると、一転して核軍縮の時代へと入りました。

 

1987年には米ソ間で中距離核戦力(INF)全廃条約が結ばれます。

 

S先生
S先生
なおアメリカが2018年に脱退し、INF全廃条約は2019年に失効しました。中国を警戒する狙いがあると見られています。

 

1991年には、米ソ間で第一次戦略兵器削減条約(STARTⅠ)が締結されました。

 

STARTとは、Strategic Arms Reduction Treatyの略で、Reductionは削減という意味です。

 

STARTⅠの締結により、配備する戦略核弾頭の数を、米・ソともに6,000発に削減することが決定します。

 

1993年には、アメリカとロシアは第二次戦略兵器削減条約(STARTⅡ)を締結し、2003年までに核弾頭を3,000〜3,500発以下に減らそうとしました。

 

しかし2001年にアメリカで同時多発テロが発生したことに加え、ロシア議会の反対もあって、STARTⅡは未発効に終わっています。

 

1996年には国連総会で包括的核実験禁止条約(CTBT)が採択されました。CTBTとは、地下を含め、あらゆる場所での核実験を禁止する条約です。

 

2022年12月現在で174か国が批准していますが、アメリカ・中国・エジプト・イラン・イスラエルなどの未加盟により、現在も未発効の状態です。

 

加えて未加盟のインド・パキスタンが1998年に核実験を実施するなど、多くの問題を抱えています。

 

なおインドとパキスタンの対立について詳しく学びたい方は「二次世界大戦後のインド(パキスタンとバングラディシュについて)【世界史B】受験に役立つインド史 (第九回)」をご覧ください。

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2000年代

2002年にアメリカとロシアは、戦略攻撃兵器削減条約に署名しました。内容は、配備する戦略核弾頭数を米ロともに10年間で1,700〜2,200発に削減するというものでした。

 

2009年にはアメリカのオバマ大統領が演説で、核兵器のない世界の実現を目指すと宣言しました。

 

翌2010年には米ソ間で新戦略兵器削減条約(新START)が締結されます。新戦略兵器削減条約とは、米ロ間の戦略核弾頭の数を7年間で1,550発に削減する条約です。

 

また2017年には、国連総会で核兵器禁止条約が採択されます。核兵器禁止条約とは、核兵器の全面的廃止を目指す国際条約です。

 

オーストラリア・メキシコ・南アフリカなど68か国が批准している一方、アメリカ・ロシア・イギリス・フランス・日本・韓国などは参加していません。

入試問題にチャレンジ

問 下線部ⓕ(核兵器)についての記述として誤っているものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 核拡散防止条約(NPT)は、非核兵器国が原子力の平和利用を行うことを禁止していない。

② パキスタンは、一方的に宣言して、自国の核実験を禁止している。

③ 部分的核実験禁止条約(PTBT)は、核兵器国が地下核実験を行うことを禁止していない。

④ 東南アジア諸国は、条約を締結して、締約国の核実験を禁止している。

2018年 センター試験 本試験 政治・経済 第2問 問6より)

正解:② インドが地下核実験を成功させたのに呼応して、パキスタンも1998年に地下核実験を成功させています。よって誤文は②です。

 

問2:④
国連総会で採択された場合であっても、条約は関係各国の批准があってはじめて効力が生じるので誤りです。

まとめ

今回は、核軍縮の歴史について解説しました。学習内容のおさらいです。

主な条約
1963年部分的核実験禁止条約(PTBT)
1968年核拡散防止条約(NPT)
1972年第一次戦略兵器制限条約(SALTⅠ)
1979年第二次戦略兵器制限条約(SALTⅡ)

(未発効)

1987年中距離核戦力(INF)全廃条約
1991年第一次戦略兵器削減条約(STARTⅠ)
1993年第二次戦略兵器削減条約(STARTⅡ)

(未発効)

1996年包括的核実験禁止条約(CTBT)
2010年新戦略兵器削減条約(新START)
2017年核兵器禁止条約

上記の表に記載している主な条約は、どれも重要なものばかりです。この記事を繰り返し読んで、それぞれの条約名と内容をしっかり覚えましょう。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

前回の記事「現代の国際政治(冷戦・第三世界の台頭)についてわかりやすく解説【政治第30回】」をご覧ください。

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