工業の種類について入試問題とともに解説【系統地理B】

みなさんこんにちは。今回は工業の種類について解説したいと思います。

 

工業と一口に言ってもその種類は多種多様で、家の近所にありそうな小さな町工場も工業をしていますし、海沿いとかにある巨大な工場でも工業をしています。

 

それらは、様々な理由でもって立地が決まっているといえるんですね。この記事ではそういったところについて解説をしていきたいと思います。

 

また、工業についての入試問題もつけておきました。理解を着実にするためにもしっかりとアウトプットをしましょう。

 

この記事を読んで理解できること・工業の種類について理解できる

・工業の形態について理解できる

・工業の立地について理解できる

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工業の種類

工業の種類としてはまず、重工業軽工業重化学工業の3つに大別することができます。

 

そして、それぞれ次のような特徴を持ちます。

重工業

重工業の代表例である製鉄所 (PhotoACより)

大規模な生産設備を用いて重量の大きな生産財・資本財・耐久消費財を生産する工業のことで、鉄鋼業・非鉄金属工業(銅など)・機械製造業などが代表的な事例として挙げられます。

軽工業

軽工業の代表例として知られる繊維工業の工場(群馬:富岡製糸場)

生産物の重量が比較的軽いもの、例えば繊維、食料品、皮革製品、木製品といったものを生産する工業のことを指します。

 

重工業と比較すると生産設備の規模も小さく、人間が直接消費するものを生産することが多いです。

重化学工業

重化学工業の象徴である石油化学コンビナート(PhotoACより)

機械製造業や鉄鋼業といった重工業に加えて、石油製品や石炭製品の製造業といった化学工業を総称して重化学工業と呼びます。

 

なお、国や地域が工業化をするにあたっては一般的には軽工業から出発し、のちに重工業・重化学工業へと遷移していくことが多いです。

 

これは、軽工業のほうが少ない資本で始められることや、重工業・重化学工業と比較すると生産技術もあまり高度なものを必要としないということが理由です。

工業の型について

工業の型としては、代表的なものして労働集約型工業資本集約型工業知識集約型工業という3つの形態をあげることができます。

 

それぞれ次のような特徴を持ちます。

労働集約型工業

労働力に対する依存度の高い工業のことです。

 

例えば、自動車の組み立て工場や弁当の生産、あるいは加工食品の生産を行うような工場のように大量の工員を雇用したうえで品物を生産する工場労働集約型工業を行っていると考えるといいかもしれません。

資本集約型工業

資本力に対する依存度が高い工業のことを指します。

 

例えば、鉄鋼業や化学工業は工場を建設し、操業するにあたって大規模な設備を必要とし、かつ生産や工場を維持するために資本を必要とすることから資本集約型工業であるといえます。

知識集約型工業

人間の知識や知恵に対する依存度が高い工業のことを指します。

 

例えば医薬品やソフトウェア開発、IC(集積回路)などは、生産の過程において非常に高度な知識を必要とすることから知識集約型工業であるといえます。

工業立地

工場で製品を作り、市場で販売する工業においては、できる限りコストを節約することを考えたうえで工場を立地します。

 

この立地を決めるにあたって最も重要なのが、輸送費や人件費など、生産にかかる費用であり、これらを立地因子と言います。一方で、交通の利便性や地形など、立地に影響する条件立地条件と言います。

 

また、アルフレッド・ウェーバーによると「立地因子」は地方的立地因子と一般的立地因子 (原料価格、輸送費、労働賃金など) とに区別することができ、すべての産業はこれらの最小点を目指して立地することになるということが示されています。

 

これに基づき、工業立地の代表的な形態を原料への指向が強い「原料指向型工業製品を販売する市場への指向が強い「市場指向型工業の2つに分けることができます。

 

また、このほかにも様々な立地因子を理由として、様々な形態の工業が見られます。

原料指向型工業

(局地原料である石灰石鉱山の近くに立地する工場)

原料を輸送するコストを減らすことを目的に、原料が生産される場所の近くに立地する工業のことを原料指向型工業といいます。局地原料と呼ばれる原料が普遍的でないもの(鉱物資源など)の場合や、製品よりも原料のほうが重量の大きい場合にこの立地指向がとられることが多いです。

 

例えば、炭鉱や鉄鉱石鉱山の近くに立地する製鉄所(中国・鞍山製鉄所)や、石灰石鉱山の近くに位置するセメント工場(埼玉・秩父)などが代表的な例です。

市場指向工業

(住宅街(消費地)の近くに位置するビール工場)

原材料の輸送コストが比較的低く、完成した製品を市場へ輸送するコストが高い場合、あるいは原材料が普遍原料と呼ばれる空気や水といったどこにでも手に入るものが多くを占める場合は市場の近くに工場が立地することがあります。これを市場指向型工業といいます。

 

例えば、局地原料であるホップは軽いものの、製品は液体のため重量が増すことから市場(消費地)のすぐ近くに位置しているビール工場(東京都府中市・千葉県船橋市・茨城県取手市)などが代表的な例です。

 

また、情報を製品にする産業(出版やファッション)も市場へのアクセス(情報やマーケットの状況)を重要とすることから、市場指向型工業となります。

労働力指向型工業

(生産にあたり大量の工員を用いる縫製工場)

労働力を重視する工業の場合、人件費の安い地域を選んで工場が立地することがあります。この形態の工業を労働力指向型工業と呼びます。

 

例えば、マスクをはじめとして手作業で縫製作業が行われつつ、大量に生産されるものに関しては労働力指向型工業となり、人件費の安い発展途上国に工場が立地することもあります。

臨海指向型工業

(輸入に依存する地域では、基本的に重化学工業は臨海指向型工業)

工業で用いられる原材料を輸入に依存する場合、船舶による搬入を行いやすくするために工場が海沿いに立地することがあります。

 

これを臨海指向型工業と呼びます。日本においては、造船業や石油化学工業、鉄鋼業といった重化学工業に関しては原材料を海外からの輸入にほぼ依存していることから臨海指向型工業となることがほとんどです。

工業に関する入試問題について

工業に関する入試問題

それでは、工業に関する入試問題を実際に解いてみましょう。

これは、2017年度に神奈川大学で出題された入試問題を改題したものです。

問題の解答及び解説

この問題では、市場指向型工業として適切な工業はどれか?ということを問われています。

 

市場指向型工業で適切なものは、原材料の輸送コストが比較的低く、完成した製品を市場へ輸送するコストが高い場合であることをも学びましたね。それでは、早速、答えと解説を見てみましょう。したのボックスをクリックしましょう。

 

正解は4
選択肢を見ていくと1の石油化学工業と3のパルプ工業にかんしては、原材料を輸入に依存していることから臨海指向型工業になり、2のセメント工業は原材料の生産地の近くに立地する原料指向型工業となるので違います。一方で4のビール工業は原材料(ホップ)は軽いものの、製品は液体のため重量が増すことから消費地に近い市場指向型工業となります。

 

まとめ

ここまで、工業の種類について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか

ここでもう一度おさらいしておきましょう。

工業の種類
重工業

大規模な生産設備を用いて重量の大きな生産財・資本財・耐久消費財を生産する工業

軽工業

生産物の重量が比較的軽いもの、例えば繊維、食料品、皮革製品、木製品などを生産する工業

重化学工業

重工業に加えて石油製品や石炭製品の製造業といった化学工業を総称したもの

工業の型
労働集約型工業

労働力に対する依存度の高い工業

資本集約型工業

資本力に対する依存度が高い工業

知識集約型工業

人間の知識や知恵に対する依存度が高い工業

工業立地
原料指向型工業

原料を輸送するコストを減らすことを目的に、原料が生産される場所の近くに立地

市場指向型工業

物流面あるいは流行等の情報の側面から市場の近くに立地

労働力指向型工業

労働力が重視される場合、人件費の安い地域を選んで工場が立地

臨海指向型工業

工業で用いられる原材料を輸入に依存する場合、船舶による搬入を行いやすくするために工場が海沿いに立地

 

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