造船、航空機、電気(機械工業)について入試問題とともに解説【系統地理】

みなさんこんにちは。今回の記事では造船、航空機、電気(機械工業)についてについて解説していきたいと思います。

 

造船、航空機、電気(機械工業)のいずれも、我々の生活に深くかかわっている大切な工業です。

 

造船や航空機に関しては直接的に使用することはCOVID-19の流行以降、あまり機会に恵まれないかもしれませんが、生活に必要な物資を輸送したりするのに必要であることから非常に大切な産業となっているといえるでしょう。

 

今回はそのような造船、航空機、電気(機械工業)について、盛んな地域や世界における状況、そして造船、航空機、電気(機械工業)に関連した入試問題を解きながら地理における造船、航空機、電気(機械工業)について学んでいきたいと思います。

 

この記事を読んで理解できること・造船、航空機、電気(機械工業)の形態について理解できる

・造船、航空機、電気(機械工業)の国際的な様相について理解できる

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造船、航空機、電気(機械工業)の形態と盛んな地域

造船の形態と盛んな地域

造船とは、船舶を製造することで、造船業はその特性から水辺の立地が必須となります。よって、臨海指向型工業になることが多いです。

 

現在、造船の盛んな国は以下の通りになります。

(出典:一般社団法人日本船主協会 海運統計要覧2019)

造船は主に中国・韓国・日本で行われているということがうかがえます。

 

かつて、造船が盛んな国というと日本でした。日本は20世紀後半までは世界一の造船国家であり、明治時代にイギリスから造船技術を学んで以降、基幹産業の一つとして機能してきました。

 

21世紀に入って中国・韓国が台頭したことによって首位の座を奪われたものの、ダイヤモンドプリンセス号や飛鳥などをはじめとしたクルーズ船をはじめ、日本で製造されているものも多いです。

 

日本の造船所は大小含めれば全国各地に点在していますが、代表的な造船所としては長崎(三菱重工)などがあげられます。

航空機産業の形態と盛んな地域

航空機産業は航空機を製作するのにかかわる産業の総称です。ボーイングやエアバスなどの航空機を製造するメーカーもある一方で、航空機に利用される部品を製造するためのメーカーも存在しています。

 

部品等も含めた航空機産業に関する輸出額の多い国・地域は次のようになります。

(出典:帝国書院)

次に、世界を代表する航空機メーカーの立地状況についての地図を見てください

この2つの表および地図を見ると、代表的な航空機メーカーの存在する国と航空機産業が盛んな国が必ずしも一致しないということが理解できます。

 

例えば、世界最大の航空機メーカーであるボーイング(アメリカ、ワシントン州)を有するアメリカ合衆国は、世界一航空機産業が盛んな国であるというわけではありませんし(第4位)、航空機メーカーこそ存在しているものの、ボーイング、エアバスどちらにも搭載されているエンジンを製造しているロールスロイス社のあるイギリスのほうが輸出額ではアメリカの2倍近くに達している状況にあります。

 

また、日本のように部品等の生産を多く行っていることから上位に位置する国あります。

 

このことから、航空機産業は国際分業体制(国家と国家との間でそれぞれの国が得意な分野のものを製造する分業)がとられているということがうかがえます。

電気機械工業の形態と盛んな地域

普段我々が生活している家電のことを電気機械と呼びます。地理ではこの電気機械に関する工業も取り扱います。

 

家電は、大まかに分けると洗濯機や冷蔵庫、炊飯器、エアコンといった日常生活で用いられ、伝統的に色が白いことが多い家電である白物家電と、テレビやラジオ、ゲーム機、DVDレコーダーなど娯楽用に用いられる娯楽家電(黒物家電)の2つに分けることができます。

 

電気機械工業には現在、2つの立地傾向があります。一つ自動車工業などと同じく、労働力や資本を集積して形成される形態のもので、企業城下町を形成しています。パナソニック(松下電器産業)の本社がある大阪府門真市などが代表的な事例です。

 

また、消費地へのアクセスも立地を選定する要因となり、例えば高速道路が近傍にあり、かつ東海圏や関西圏のどちらへのアクセスも比較的良好な滋賀県草津市などには電気機械の工場が立地しています。

 

一方で、人件費や輸送コスト等を勘案した結果、安価であると判断された場合は中国や東南アジアといった人件費の安い海外にも工場が立地します。ただ、現在では人件費が高騰したことから国内に生産拠点を戻すものもあります。

 

近年では、中国のHaier社のように日系企業での生産ノウハウなどを活かして電機メーカーも登場するようになりました。

 

また、先述の中国のHaier、韓国の三星電子やLGのように、東アジアには世界を代表する電機メーカーが登場し、相対的に日本の家電の位置づけは以前に比べると低くなってきている様子もうかがえます。

 

例えば、下記の表に示すように主要な家電(テレビ、洗濯機、冷蔵庫)のシェアにおいて、中国、韓国企業が目立ち、日本企業はテレビにおいてわずかにソニーを残すのみとなっています。

造船、航空機、電気(機械工業)に関する入試問題について

造船、航空機、電気(機械工業)に関する入試問題(2018年 一橋大学)

それでは、造船、航空機、電気(機械工業)に関する入試問題を実際に解いてみましょう。

これは、2018年度 一橋大学 前期日程で出題された問題です。

問題の解答及び解説

この問題ではアメリカ、ワシントン州の産業構造の変化について問われています。

 

アメリカ、ワシントン州は世界を代表する航空機メーカであるボーイング社の本社があり、主要な工場も多く立地していることから輸送用機械の生産が盛んです。

 

よって、⑧の輸送用機械が影響力のある産業であるといえます。

 

次に、貿易パターンについてですが、ワシントン州を代表する産業である航空機産業では国際分業体制が進んでいるということを学びましたね。

 

国際分業体制は国家と国家との間でそれぞれの国が得意な分野のものを製造する分業のため、必ずしも航空機メーカーの所在する国が航空機産業の輸出額が高いというわけではありません。

 

日本も航空機の生産自体はほとんど行っていないものの、航空機に用いられる部品などを海外に輸出している影響から航空機産業の輸出額では上位に位置しています。

 

日米間では、日本は航空機を輸入して部品を輸出する、アメリカでは反対に航空機を輸出して部品を輸入するといった貿易関係が航空機産業ではおこっています。

 

これらを統合すると、次のような回答が導かれます。

解答

⑧ 航空機産業では国際分業が確立している。日本は航空機を生産せず殆どを米国からの輸入に頼っている。

 

一方、米国の工場では、日本企業等で生産された機体やエンジン・装備品の一部の供給を受け組み立てている。

まとめ

ここまで、造船、航空機、電気(機械工業)について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか

 

ここでもう一度おさらいしておきましょう

造船の形態と盛んな地域
  • 造船は主に中国・韓国・日本で行われている
  • かつては日本は世界一の造船国で、明治時代にイギリスから造船技術を学んで以降、基幹産業の一つとして位置づけられてきた
  • 日本の造船所は大小含めれば全国各地に点在していますが、代表的な造船所としては長崎(三菱重工)など
航空機産業の形態と盛んな地域
  • 国際分業体制で行われている
  • ボーイングやエアバスなどの航空機を製造するメーカーもある一方で、航空機に利用される部品を製造するためのメーカーも存在
  • 代表的な航空機メーカーの存在する国と航空機産業が盛んな国が必ずしも一致しない
  • 日本やイギリスのように航空機部品に強みを持つ国家も
電気産業の形態と盛んな地域
  • 企業城下町が形成される場合もあれば、生産拠点が海外に移る場合も
  • 近年では中国・韓国の家電メーカーが台頭し、日本はかつてほどの勢いを失いつつある

 

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