みなさん、こんにちは。物理基礎のコーナーです。今回は【重力加速度】についてです。
重力加速度とは、自由落下や放物運動、斜面上を物体が滑る問題など「重力」に関係する物理の問題を解くうえで非常に便利な考え方です。
この記事では重力加速度とは何なのか、重力加速度はどうやって算出するのか、重力に関する計算問題を解くうえでどう便利なのか、を解説していきます。
重力加速度とは?
重力加速度について理解するためには「重力」と「加速度」それぞれについて理解する必要があります。まず「加速度」から解説していきます。
加速度
「加速度」とは「単位時間あたりの速度の変化量」を表します。高校物理では加速度の単位はだいたいの場合が「$\rm{m/s}^2$」なので、加速度は「1秒あたりに速度がどれだけ変化するか」を表す量とも言えます。
加速度についてもう一つ知っておくべきことは、加速度が「ベクトル」だということです。加速度は向きと大きさを持つ物理量なので、加速度を聞かれたら、向きまで答えることを意識しましょう。
加速度については「【物理基礎】等加速度運動とは何か?(公式だけでなくグラフ、平均速度、瞬間速度なども解説)」に詳しく載っています。
重力
次は「重力」です。我々は日々、地面に張り付いて生きていまして、ジャンプしてもすぐに地面へと引き戻されてしまいます。
こうなる原因は地球上のあらゆる物体に対して「重力」という力が働いているためです。重力は地球の中心向きに生じ、その大きさは物体の質量に比例します。ジャンプして上向きの速度を得ても、下向きに重力が働くために下向き加速度が生じ、すぐに地面に戻ってくることになります。
「重力」とは地球などの天体上において、物体が地球の中心方向に引っ張られる力であり、その大きさは物体の質量に比例します。
重力は地球以外の天体においても生じます。人が月面に立つとその重力は約 1/6 倍、木星に立つと (木星に立つことはできませんが)、約 5/2 倍になります。
また日常生活では同じもののように扱われますが、物理学において、「質量」、「重力」、「重さ」はそれぞれ別物です。以下にそれぞれをまとめました。
質量・・・物体の「動きにくさ」を表す量。向きは持たない。
重力・・・ある天体上の物体が地面に引き寄せられるように働く力。向きと大きさを持つ。
重さ・・・重力の大きさのこと。向きは持たない。
質量と重さは日常生活で混同しがちですが、物理学において質量の単位は[kg]、重さの単位は「N」です。ご注意を。
重力は「場所」と「時刻」によって微妙に変わってきます。「上空1万メートル」と「地表付近」では重力が異なりますし、「北極」と「ハワイ」でも異なります。また「昨日」と「今日」でも微妙に異なっています。重力について話し始めるとそれだけでこの記事が終わってしまうので、今回はこのぐらいにしておきましょう。
重力加速度
重力加速度とは「重力によって生じる加速度」のことです。そのままですね。
以下で、重力加速度と重力、質量がどのような関係にあるのか考えてみます。
ニュートン先生は「物体に力が働くと、その力の向きに、力の大きさに比例した加速度が生じる」ことを発見し、これを運動方程式という形にまとめました。
ニュートンの運動方程式
$$\overrightarrow{a} = \frac{\overrightarrow{F}}{m}$$
$m$ は物体の質量、$\overrightarrow{a}$ は力によって生じる加速度、$\overrightarrow{F}$ は力を表します。
ここに重力加速度 $\overrightarrow{g}$、物体の質量 $m_0$、重力 $\overrightarrow{F_\rm{g}}$ を代入すると、
$$ \overrightarrow{g} = \frac{\overrightarrow{F_\rm{g}}}{m_0} $$
となり、重力加速度 $\overrightarrow{g}$ と質量 $m_0$、及び重力 $\overrightarrow{F_\rm{g}}$の関係が分かりました。重力加速度の向きは重力と同じ、大きさは(重力の大きさ) / (質量)となっています。
地球上の重力加速度を計算してみる
重力が「場所」と「時刻」によって変化するということは、重力加速度も「場所」と「時刻」によって変化します。とは言ってもほんの少ししか変わらないので、大雑把に考えるならば地球上のどこであっても一定です。
ここでは地球上の重力加速度を計算してみたいと思います。
重力加速度を測定する方法は色々ありますが、最も簡単で、すぐに思いつく方法で調べてみます。下の図をご覧ください。
物体の自由落下は等加速度直線運動であり、初速度、加速度、時刻が分かれば、進む距離を計算可能です。そこで、初速度をゼロとし、一定の距離を落下する時間を測定することで加速度を計算することとしました。
高さ 1.7 mからパチンコ玉を落とし、地面に到達するまでの時間を測定します。パチンコ玉にしたのは空気抵抗の影響を可能な限り除外するためです。ばらつきの影響を減らすため試行回数を30回とし、落下にかかる時間を測定して得られた結果が右の表です。
人力で測定しているため、ご覧の通りデータのばらつきは大きいです。各データで平均を取ると、1.7 m落下するのに掛かる時間は 0.54秒と分かりました。
静止している物体が、加速度の大きさ $g$ で等加速度直線運動をし、時間 $t$ で進む距離は $gt^2 /2$ なので、移動距離を $l$ とすると、
\begin{eqnarray} gt^2 / 2 &=& l \\ g &=& 2l / t^2 \end{eqnarray}
となります。今回の測定結果から、1.7 mを落下するのにかかる時間は 0.54秒だったので、上の式に代入すると、
\begin{eqnarray} g &=& 2 \times 1.7 / (0.54)^2 &\simeq& 11.7 \end{eqnarray}
重力加速度を求めることができました。
上でも述べましたが、この重力加速度は人力で測定しています。人間の反射神経の限界は0.2秒程度と言われていますし、データを見ると$\pm 0.1$秒ほどのばらつきがあります。そもそも大気中で物体を自由落下させれば空気抵抗や物質自体の大きさも加味しなければいけないので、上記結果は正確な測定からは程遠いものです。
ここでは「身近なものを使って簡単に重力加速度の測定が行える」ということが分かっていただければ十分です。
地球上の重力加速度の正確な測定結果
正確に重力加速度を測定するためには振り子やバネの伸びを使う方法が有効です。1901年には重力加速度をちゃんと計算して、標準重力加速度が定められました。
$$g = 9.80665 \; \rm{m/s}^2$$
先ほど計算した重力加速度は20 %ほどずれがあることが分かります。人間の動体視力を用いて測定を行ったにしてはまずまずの結果かと思います。実際、測定結果が本来の値と近いかどうかは些細な問題でして、大事なことは「計算可能であること」と「計算方法」を知っていることです。
今後、物理の問題で重力加速度を使うことがあれば、標準重力加速度の上2桁を使った $g=9.8 \; \rm{m/s}^2$ をご利用ください。
地球上の重力
力が働くと加速度が生じます。逆に言えば、加速度が生じているならば力が働いているということです。
重力加速度は地球上のどこであってもほぼ一定で、およそ $g=9.8 \; \rm{m/s}^2$ になっています。ニュートンの運動方程式を使うことで、この加速度を生み出している力 $=$ 重力を求めることができます。
ニュートンの運動方程式は $\overrightarrow{F} = m \overrightarrow{a}$ です。重力加速度 $\overrightarrow{g}$ を代入すると、
$$\overrightarrow{F} = m \overrightarrow{g}$$
となります。
質量 $m$ の物質に働く重力の大きさが $mg$ であることが分かりました。
この結果は物理の問題を解く上でとてもよく出てきます。「重力の大きさは『mg』」と暗記している人も多いと思いますが、「なぜmgなのか?」ということを忘れてしまったときにはもう一度この記事を確認してい頂ければ幸いです。
今回の重力加速度のまとめ
今回の重力加速度については以下の内容を学びました。再度復習をしておきましょう。
・「重力加速度」は「重力」によって生じる「加速度」
・重力加速度は地球上では常に一定で $g=9.8 \; \rm{m/s}^2$
・重力 $\overrightarrow{F}=m \overrightarrow{g}$
より、物理について学びたい人は「大学入試 漆原晃の 物理基礎・物理[力学・熱力学編]が面白いほどわかる本」が詳しくかいてあるのでおすすめです
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