ベクトルとスカラーや速度と速さなどの物理基礎の用語解説【物理基礎】

等加速度運動

みなさん、こんにちは。物理基礎のコーナーです。今回は物理初学者のための入門編、【物理用語解説】をしていきます。

 

物理学には新しい用語がたくさん出てきますが、それらの意味を正確に理解することは大変なことです。

 

「質量」という物理学用語1つをとってみても、その意味を正確に把握している人は多くありません。しかしながら、用語の意味を正確に把握することは物理についての理解を深め、問題を解くための手助けにもなります。

 

この記事では、意味を間違えやすい物理用語を2種類に分けて解説していきます。

その2種類とは

 

1. 「ベクトル」なのか「スカラー」なのか分かりづらい用語 (速度と速さ、変位と距離 (長さ)、重力と重さ)

2. 単位が分かりづらい用語 (力と圧力、質量と重力)

 

です。

 

まずはベクトルとスカラーについて解説していきます。

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ベクトルとスカラー

高2数学で初めて出てきた新たな数の概念「ベクトル」は、「大きさ」と「向き」を有する数、であると言えます。

 

「速度」はベクトルです。北に向かって1時間で3 km歩いたならば、その人の速度は、「北向き 3 km/h」となります。物理の問題で「速度」を聞かれたならば、向きも答えなければ正解とは言えません。

 

ベクトルと違い、向きを持たず、大きさのみを有する数のことを「スカラー」と言います。質量、エネルギー、長さなどは「向き」が存在しないため「スカラー」です。

 

ベクトルとスカラーでは足し算や引き算、掛け算のルールも異なります。また、ベクトルとスカラーの足し算はできませんが、ベクトルとスカラーの掛け算は可能です。

 

物理において厄介なところは、「ベクトルなのかスカラーなのか分かりづらい用語」が存在することです。それら用語を順に見ていきます。

 

ベクトル・・・向きと大きさを有する数

スカラー・・・大きさのみを有する数

 

速度と速さ

日常生活で「速度」と「速さ」を分けて使っていることはほぼ無いですが、物理学ではこの2つは明確に別物です。

 

「速度」とは「ベクトル」です。単位時間当たりの位置の変化量を「速度」と呼び、向きと大きさを有します。

 

一方の「速さ」は「スカラー」です。大きさのみを持っています。言い換えると「速度」の大きさを「速さ」と言うのです。

変位と距離 (長さ)

変位とは「位置の変化量」のことであり、「ベクトル」です。例えば、数学の関数の問題でよく使う、2軸が垂直に交わる座標系 (xy座標系、正しくはユークリッド座標系)において、点Pが原点 $(0, 0)$ から $(3, 3)$ へ移動したとすると、このときの変位 $\Delta P$は「 x軸から $45^\circ$ の向きに $3 \sqrt{2}$ 」となります (下図参照)。

一方の「距離 (長さ)」とは「スカラー」です。上記の状況で、点Pが動いた距離 (長さ)は $3 \sqrt{2}$ となります。向きは関係ありません。

 

この「変位と距離」の関係はちょうど、「速度と速さ」の関係と同じになっており、「距離」とは「変位の大きさ」を表す量なのです。

重力と重さ

重力は「ベクトル」で、重さは「スカラー」です。すべての「力」は「ベクトル」であり、向きと大きさを持ちます。「重さ」はその単位こそ「力」と同じですが、「重さ」は「力」ではなく、「力の大きさ」を表す量なのです。

 

重力を聞かれた場合には「向き」まで答えなければ正しいとは言えませんが、重さを聞かれた場合には「向き」を答える必要はありません。

 

「重力」については後の方で、より詳細に解説するとして、ここまでに登場した用語を以下にまとめます。

 

「ベクトル」、「スカラー」を間違えやすい用語まとめ

 

速度・・・単位時間の位置の変化量。ベクトル。

速さ・・・速度の大きさ。

変位・・・位置の変化量。ベクトル。

距離・・・変位の大きさ。

重力・・・鉛直下向きに働く力。ベクトル

重さ・・・重力の大きさ。

 

単位が分かりにくい用語

物理学用語の意味を間違えやすい理由のもう一つは、単位が分かりにくいことです。以下では単位が分かりにくい用語をまとめて解説いたします。

力と圧力

高校物理で一般に用いられる力の単位は [N (ニュートン)]です。$[\rm{N}] = [\rm{kg} \cdot \rm{m/s}^2 ]$ で、「質量」と「加速度」の積が「力」になります。

 

一方の「圧力」の単位は $[\rm{N/m}^2 ]$ であり、「力」を「面積」で割ったものです。「圧力」は名前に「力」と入っていますが、「力」ではないのです。

 

よって、「力」と「圧力」で足したり引いたりすることはできません。「圧力」 $\times$ 「面積」 $=$ 「力」なのです。

 

質量と重力

「重力」とは「力」であり、その単位は [N]になります。一方、質量とは「力を加えたときの動きにくさ」を表すスカラー量で、その単位は [kg]です。

 

重力は地球に立ったとき、月面に立ったとき、火星に立ったときでそれぞれ異なりますが、質量はどこにいても同じです。

 

質量 $m$を測定する最も簡単な方法は「重力」の大きさ (重さ)を測定し、「重力加速度」の大きさ $g$で割ることです。

\begin{eqnarray} m = \frac{F_{\rm{重さ}}}{g} \end{eqnarray}

 

皆様もご自身の質量を測定するときには「体重計」という質量測定装置を用いられると思います。体重計とは乗った人の「重さ」を測定し、その重さを「重力加速度の大きさ」で割ることで「質量」へと変換する機械なのです。

 

体重計はいつでもどこでも使える質量測定装置ではありません。この体重計を火星で使うときには注意が必要です。地球製の体重計は地球で使うことを想定しているので、「重さ」を「質量」に変換するとき、常に「地球の重力加速度」で割ります。しかし、火星において測定されるのは「火星における重さ」です。本来、「火星の重力加速度」で割らなければいけないところ、「地球の重力加速度」で割るために本来の値と異なる値が得られます。

 

\begin{eqnarray} m_{\rm{体重計}} &=& \frac{m \times g_{\rm{火星}}}{g_{\rm{地球}}} \\ &=& m \times \frac{g_{\rm{火星}}}{g_{\rm{地球}}} \end{eqnarray}

 

$g_{\rm{火星}} / {g_{\rm{地球}}} \simeq 0.38$ なので、実際の質量より、軽い質量が見積もられることになります。逆に言うと、火星で、地球製の体重計を使って質量を測定する場合には、出てきた値を $0.38$で割ればよいです。

 

正しい質量を得るためには、「質量」とは何なのか、「体重計」がどういう原理で「質量」を測定しているのかを知ることが大切です。

 

皆様も、旅行先の火星でご自身の体重を勘違いしなくて済むよう、十分注意しましょう。

 

今回のまとめ

物理学用語には「ベクトルなのか、スカラーなのか分かりにくい用語」と「単位が分かりにくい用語」が存在します。

今後も意味が分かりにくい用語に出くわすことと思いますが、その用語が「ベクトルかどうか」、「単位は何か」という点に着目すると、理解が容易になると思います。是非意識してみてください。

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