【物理基礎】等加速度運動とは何か?(公式だけでなくグラフ、平均速度、瞬間速度なども解説)

みなさん、こんにちは。物理基礎のコーナーです。今回は【等加速度運動】について解説します。

 

加速度運動を理解することは物体の運動を理解することそのものです。センター試験で頻出どころか、力学のすべての問題に関係します。

 

まずは等加速度運動の公式をしっかりと覚え、練習問題を解きながらこの分野に関する理解を深めていきましょう。

 

この記事では等加速度運動の公式と等加速度運動のグラフについて解説し、その途中で、平均の速度や瞬間の速度という概念にも触れていきます。最終的に等加速度運動とそのグラフが頭の中でリンクすることを目指します。

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等加速度運動とは何か?

分かりやすい等加速度運動の例としては「物体の落下運動」「放物運動」が挙げられます。それぞれ、「高いところから物を落としたとき」と「物を投げたとき」の物の動き方の事です。

 

野球部の皆さんは常日頃「放物運動」を目の当たりにしていることと思います。ピッチャーの放ったボールも、バッターの打球も、ホームへの返球も、すべて等加速度運動です。これを物理学で扱っていきます。

 

等加速度運動とはその名の通り「加速度」が「常に同じ運動」のことです。では、加速度とは何でしょうか。

 

「加速度」という言葉を理解するためには、まず「速度」という言葉を理解しなければなりません。速度 → 加速度 → 等加速度運動という順番で説明します。

速度

速度とは、単位時間当たりの物体の位置の変化量のことです。10秒で北に100 m進んだならば、「北向きに10 m/s」というのが速度になります。”s”は”second”、すなわち「秒」のことです。

 

ここで注意すべきは、速度は「ベクトル」であるということです。「速度」は「向き」と「大きさ」を持つ量なのです。

 

日常生活で「速度」という言葉を使うときには、「速さ」という言葉と同じ意味です。しかし物理学において、「速度」と「速さ」は別物です。

 

速さとは、速度の大きさのみを表します。10秒で北に100 m進んだならば、その速さは「10 m/s」となります。速さには向きが含まれません。このように、ベクトルと違って「大きさ」のみを有する量を「スカラー」と言いますが、これは覚えなくても大丈夫。

 

速度・・・単位時間当たりの物体の位置の変化量 (ベクトル)

速さ・・・速度の大きさ (スカラー)

 

平均と瞬間

速度を理解する上で、もう一つ大事なことは「平均の速度」「瞬間の速度」という考え方です。

100 m走のグラフを例に、平均と瞬間の意味について解説します。下の2つの図はそれぞれ、100 m走をしたときの「スタートしてからの時刻」と「速さ」の関係を表すグラフ、及び、「スタートしてからの時刻」と「距離」の関係を表したグラフです。

 

100 mを10秒で走ったとします (世界記録並みの速さです)。1秒に10 m進めば10秒で100 m進むので、スタートしてから常に同じ速さであったと考えると、速さは10 m/sとなり、図中黒線のように移動します。

 

しかし、100 m走をしたならば、実際には常に同じ速さというわけではありません。スタートしたときには速さは0 m/sで段々速くなり、最高速度になってからは速さは変わらない、という変化を描くはずです。

 

すると、瞬間的には速さが0 m/sだったり、6 m/sだったり、11 m/sだったりするはずです。このような「その時々の速さ」を「瞬間の速さ」と言います。実際の100 m走のグラフは図中赤線のようになるはずです。

 

瞬間、瞬間の速さは常に異なりますが、結果として100 mを10秒で走ったならば、平均すると10 m/sの速さだったことになります。これが「平均の速さ」です。

 

また、もう一つ大事なこととして、速さは時刻-距離のグラフにおける「傾き」に相当します。なぜならば「移動距離」を「かかった時間」で割ったものが「速さ」だからです。であれば、「平均の速さ」と「瞬間の速さ」は以下のように表すこともできます。

平均の速さ・・・出発地点から到着地点までの距離をかかった時間で割ったもの

瞬間の速さ・・・時間-距離の関係が描く曲線の各時間における傾き

以上が速度についてでした。

 

次は加速度です。

加速度

加速度とは、1秒間で速度がどれだけ変化するか、すなわち、単位時間当たりの速度の変化量のことです。静止状態から物体が落下するとして、10秒後に速さが98 m/sとなっているならば、その加速度は9.8 m/s$^2$となります。

 

単位にもご用心。速度の単位は「(距離) / (時間)」になっていて、加速度はそれをさらに時間で割るので、「(距離) / (時間$^2$)」となります。

 

物体の落下のように、常に同じ方向にのみ力 (ここでは重力)が加わっている状態では、物体の加速度は常に一定になります。

 

ここでやっとタイトルの等加速度運動にたどり着いたわけですが、等加速度運動とは上記落下運動のように、常に一定の加速度が加わる運動です。

 

また、加速度はベクトルであることにご注意ください。加速度の「向き」と「大きさ」が常に一定でなければ「等加速度運動」とは呼べません。

 

等加速度運動における速度の公式

それでは等加速度運動をする物体の速度の式はどのように表せるでしょうか。

 

とある物体が時刻 $0$ で初速 $\overrightarrow{V_0 }$を持ち、一定の加速度 $\overrightarrow{a}$ が働くとします。時刻 $t$ における物体の速度 $\overrightarrow{V (t)}$はいくらでしょうか?

 

加速度とは「単位時間当たりの速度の変化量」です。すなわち、加速度が一定であれば、加速度に時間を掛ければ、その時間で速度がどれだけ変化するかが分かります。よって、

 

$$ \overrightarrow{V (t)} = \overrightarrow{a} \times t + \overrightarrow{V_0 } $$

となります。

 

記号の上に付いている矢印はベクトルを表す記号ですね。深く考える必要はありません。一直線上を運動する等加速度運動 (等加速度直線運動)で、正の向きを決めておけば、ベクトルを考える必要はありません。上の式は次のように書き換えることができます。

 

$$ V (t) = a \times t + V_0 $$

 

もっと具体例

等加速度運動がどんなものかを述べましたので、もっとたくさんの運動の例を見つつ、等加速度運動についての理解を深めて頂きたいと思います。

 

これまで述べてきた等加速度運動の定義を考慮すれば、落下運動や放物運動のみならず、以下の運動も等加速度運動と言えます。

 

静止

静止している物体には常に加速度 $\overrightarrow{0}$が加わっています。

 

床の上で物体を滑らせ、摩擦で静止するまで

この場合、物体の運動方向とは逆向きに、摩擦による力が働き、物体の速度を低下させるような加速度が生じます。摩擦により生じる加速度は物体の速度によらずほぼ一定なのでこの場合も等加速度運動と考えることができます。

 

では逆に、等加速度運動ではないものはどのようなものがあるでしょうか。等加速度運動でない運動の例を挙げます。

惑星の公転運動

地球のように、ほとんど真円形の公転軌道を持つ惑星では、惑星から太陽に向かって、万有引力が働き、万有引力と同じ方向の加速度が生じます。

 

惑星から太陽までの距離は常に一定なので加速度の大きさは常に一定となり、公転する速さもほぼ一定となります。しかしながら加速度の向きは常に変化します。等加速度運動は加速度の「向き」と「大きさ」が常に一定でなければならないので、等加速度運動とは言えません。

 

空気抵抗を考慮した落下運動

落下運動は等加速度運動だと述べましたが、空気抵抗を考慮した場合にはその限りではありません。落下速度が大きくなると、速さに比例した空気抵抗が生じます。

 

ゆえに加速度も速さに応じて変化します。このため、等加速度運動とは言えません。

等加速度運動のグラフ

最後のステップです。ここでは、等加速度運動について実際にグラフを描いてみることで、グラフの形と等加速度運動が頭の中でリンクすることを目指します。

 

以下では、簡単な場合を考えるため、放物運動のように複雑な運動ではなく、一直線上を動く落下運動を考えます。

 

時刻-加速度のグラフから見ていきましょう。以下ではベクトルの向きは真下方向 (難しい言葉で鉛直下向き)を正とし、ベクトルの記号 ($\rightarrow$)を省略します。

 

重力が一定なので、加速度も一定です。加速度を $a$ とすれば、以下のような時間によらず一定の値をとるグラフになります。

次に時刻-速度のグラフです。加速度が $a$ であれば、速度は 時刻$t=1$に $a$ 増え、$t=2$に $2a$ 増え、$t=t_0$に $a t_0$ 増えます。初速度が $V_0$ であれば、グラフは以下のように表されます。

1次関数の形ですね。

速度を求めたので、次は物体が動いた距離を求めます。

 

小学校で習った通り、距離とは時間 $\times$ 速さ です。しかし小学校で習ったのは、「速さが一定のときの移動距離の求め方」であり、「速さが変化するときの移動距離の求め方」は習っていません。速さが変化するときの移動距離を求めるためにはこれまでと違う方法を使わなければなりません。その方法を説明していきます。

 

下の図をご覧ください。

この時刻-速度のグラフで、オレンジ台形の面積の単位は「速さ$\times$時間$=$距離」です。実は、この面積が表すものは時刻 $0$から時刻 $t$までに物体が動いた距離となっているのです。 (詳しくは「積分」で学びましょう)

物体の動いた距離 の求め方

 

時間-速度のグラフにおいて「速度の描く曲線」「時間軸」「時間の領域」で囲まれた図形の面積

 

では、初速が $V_0$、加速度 $a$で時刻が $0$から$t$までの間に物体が動いた距離 $x$ を求めてみましょう。動いた距離は時刻-速度のグラフにおけるオレンジ台形部分の面積です。

 

台形面積は (上底 + 下底) $\times$ 高さ $\div 2$ で求められます。

 

よって、

\begin{eqnarray} x &=& (V_0 + V_0 + at) \times t \div 2 \\ &=& \frac{1}{2} at^2 + V_0 t \end{eqnarray}

 

となります。これが等加速度運動における時間と移動距離の関係式です。時間について2次関数の式になっています。

 

では、最後に時刻-移動距離のグラフを描いてみましょう。

2次曲線になっていることが分かると思います。

 

これらグラフの描き方を忘れたときには、もう一度、加速度からスタートして、時刻-速度の関係式 → 時刻-距離の関係式を導出すれば良いです。

 

忘れる度に、最初から導出していけば、この分野についての理解は深まっていくこと間違いなしです。ただし、時間がかかるので受験会場で最初から導出していくのはやめましょうね。

 

等加速度運動のグラフ

時刻-加速度のグラフ:時間軸と平行な直線
時刻-速度のグラフ:1次関数の形
時刻-距離のグラフ:2次関数の形

 

今回のまとめ

・加速度とは「向き」と「大きさ」を持つ物理量であり、単位時間あたりに速度が変化する割合を表す
・等加速度運動とは加速度 (「向き」も「大きさ」も)が常に同じ運動
・等加速度運動では時刻-速度のグラフは1次関数、時刻-距離のグラフは2次関数になる

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