【物理基礎】斜面上の物体の運動

みなさん、こんにちは。物理基礎のコーナーです。今回のテーマは【斜面上の物体の運動】です。

 

斜面上の物体の運動には「運動方程式」や「力」、「ベクトル」についての基本的な要素が詰まっているため、受験生の理解度を判断しやすく、センター試験頻出です。

 

斜面上の物体の運動が難しいところは力が斜めに働いている、ということです。加えて「重力」や「摩擦力」など、様々な力が作用し、問題を複雑にしています。

 

こうした複雑な問題を解くときに大切なことは「分解」です。ここでは典型的な「斜面上の運動」の問題を例にとり、その解法を解説します。

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斜面上の物体に働く力

 

例題 1仰角 $\theta$ の斜面上に質量 $m$ の物体を置くと物体が斜面下向きに動き出した。物体が動き出したときを時刻 $0$ として、物体の速さ $v$ と時刻 $t$ との関係を求めよ。ただし、斜面と物体の間に働く摩擦力の動摩擦係数 $\mu$ は物体の速度によらず常に一定であり、重力加速度の大きさは $g$とする。

斜面上の運動に関する典型的な問題です。

 

斜面上の物体の運動を考えるときには、ひとまず図を描くとよいでしょう。斜面の角度が文字で与えられているときには、混乱を避けるためにも $\theta=45^\circ$ くらいの図を描くのではなく、$\theta=20^\circ$ くらいの図を描くとよいです。

まず、斜面上の物体に働く3つの力について解説します。

重力

重力は鉛直下向きに働き、大きさは質量と重力加速度の積になります。重力は地球上のあらゆる物質に働きます。これは地球が物体に加える力です。今回の問題で斜面上の物体は、この重力によって斜面下方向に滑り落ちていくことになります。

垂直抗力

斜面が物体につぶされまいと抗う力のことです。垂直抗力は斜面から物体に働きます。斜面に対して垂直な上向きの力であり、大きさは物体が斜面に加える力の大きさと同じになります。

動摩擦力

物体の動いている向きと反対方向に加わる、物体の動きを妨げる力です。垂直抗力と同じく斜面から物体に働きます。物体は斜面に平行で下向きに落ちていくので、動摩擦力はそれと反対の向き、すなわち、斜面と並行で上向きに働きます。

 

動摩擦力の大きさは垂直抗力の大きさに比例し、その比例係数が動摩擦係数です。

 

$$\rm{動摩擦力の大きさ}=\rm{動摩擦係数} \times \rm{垂直抗力の大きさ}$$

 

以上の3つの力が斜面上の物体に働く力のすべてです。3つも力が働いていると、このまま物体の運動を考えることは困難です。こういうときには問題を「分解」して解いていきます。

力の分解

今回、物体には3つの力が働いていて、このまま考えるのは困難なので、物体の運動を「斜面に垂直な方向」と「斜面に平行な方向」に分解して考えます。

 

この2つの方向に分けて考えるためには、「斜面に垂直」でも「斜面に平行」でもない力、「重力」をなんとかしなければなりません。

重力の分解

重力は鉛直下向きに働く力なので、問題を「垂直方向」と「平行方向」に分けて考えるためには、重力を「垂直方向の重力」と「平行方向の重力」に分けて考える必要があります。下の図をご覧ください。

重力を垂直方向と平行方向に分解するときには三角比を用いるのですが、どちらが $\sin$ でどちらが $\cos$ なのかには十分注意が必要です。ここで $\theta=45^\circ$ に近い仰角で斜面を描いてしまうと $\sin$ と $\cos$ を間違えやすくなってしまうので、$\theta$ は $20^\circ$ くらいで描くのがおすすめです。こうするとどこが $\theta$ なのか分かりやすくなります。

 

重力を分解すると、斜面に対して垂直な方向の重力の大きさは $F_\rm{Gy}=mg \cos{\theta}$、斜面に平行な方向の重力の大きさは $F_\rm{Gx}=mg \sin{\theta}$ となります。

斜面垂直方向の力

続いて、斜面垂直方向の力について考えていきます。

物体は斜面に沿って滑り落ちていき、斜面垂直方向には物体は移動しません。すなわち、斜面垂直方向の力は釣り合っていることが分かります。

 

斜面垂直方向に働く力は、重力の垂直方向成分と、斜面からの垂直抗力なので、斜面からの垂直抗力を $N$ と置くと、

 

\begin{eqnarray} N &=& F_\rm{Gy} \\ &=& mg \cos{\theta} \end{eqnarray}

となります。

斜面平行方向の力

最後に斜辺平行方向の力について考えます。

斜面平行方向に働く力は「重力の斜面平行方向の成分」と「動摩擦力」です。動摩擦力は垂直抗力 $N$ と動摩擦係数 $\mu$ の積になるので、斜面下向きを正として、斜面水平方向に働く力の合力を $F_\rm{T} とすると、

 

\begin{eqnarray} F_\rm{T} &=& F_\rm{Gx} +\mu N \\ &=& mg \sin{\theta} -\mu mg \cos{\theta} \\ &=& mg \left( \sin{\theta} -\mu \cos{\theta} \right) \end{eqnarray}

 

以上の計算から斜面水平方向には下向きに $F_\rm{T} = mg \left( \sin{\theta} -\mu \cos{\theta} \right) $ の力が加わっていることが分かりました。ニュートン先生の言うことには、力が働くと、その力と同じ向きに加速度が生じます。運動方程式を使って斜面水平方向に働く加速度を求めてみましょう。

 

斜面水平方向、下向きに働く加速度を $a$ とします。

 

\begin{eqnarray} ma &=& F_\rm{T} \\ &=& mg \left( \sin{\theta} -\mu \cos{\theta} \right) \\ a &=& g \left( \sin{\theta} -\mu \cos{\theta} \right) \end{eqnarray}

 

加速度を求めることができました。斜面下方向に滑り落ちる物体の初速度は $\overrightarrow{0}$ なので、物体が動き始めてから時間 $t$ が経過したときの物体の速さは $at$ となります。よって、

\begin{eqnarray} v &=& at \\ &=& gt \left( \sin{\theta} -\mu \cos{\theta} \right) \end{eqnarray}

と求められました。

今回のまとめ

斜面上の物体の運動を考えるとき、最も重要なことは「斜面に垂直な方向と水平な方向に力を分解」することです。

 

斜面上の運動に限らず、複雑な物事を考えるとき、「問題を分解」することは有効です。今後とも「複雑な問題は分解する」ことを意識してみてください。

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