こんにちは。今回は圧力について解説していきます。
圧力や浮力、というと何が違うのか分からなくなってしまったり苦手意識を持っているという方も多いのではないのでしょうか。
圧力や浮力を正確に理解していないと難しく感じてしまうのですが、しっかりと理解していれば他の受験生と差をつけることができます。また熱力学の分野と融合問題として出題されることも多いので今回しっかり学んでいきましょう。
ポイントをまとめた後に実際の入試問題を解いて、圧力の考え方に慣れていきましょう。
圧力とは?
圧力とは、物体の表面の単位面積あたりに垂直に働く力の大きさのことです。つまり全面積に働く圧力(全圧力)pが面積Sの物体に働くときの物体の圧力は
となります。
これは定義なのでしっかりと覚えましょう。
また水圧についても重要です。水圧とは、水中で物体が受ける圧力のことです。
以下の図のようなときの水面からの深さがh[m]のところの水圧p[pa]は、大気圧を$p_{0}$、重力加速度の大きさをg[m/$s^{2}$]とすると
となります。
浮力と混乱して大気圧$p_{0}$を忘れてしまう人が多いので気をつけましょう。これもよく使う公式なのでしっかりと覚えてください。
例えば下図のようなときを考えましょう。
大気圧$P_{0}$、液体の密度が$\rho$のとき上面と底面にかかる力の大きさは
- 上面:$P_{0} S$
- 底面:$(P_{0} + \rho gh)S$
となります。
このとき力の大きさを考えているため、圧力に面積Sをかけるのを忘れないようにしましょう。また、向きは上図のようになります。
浮力について
浮力とは、液体や気体の中にある物体が液体や気体から上向に受ける力のことです。
ジュースを飲むときにストローが浮いてしまうことがありますよね。これはストローに浮力が働いているからです。
浮力の大きさは物体が押しのけた液体(気体)の重さに等しくなります。
つまり下図のように密度$\rho$[kg/$m^{3}$]の液体(気体)中にある体積V[$m^{3}$]の物体が受ける浮力Fは
となります。
これをアルキメデスの原理といいます。入試でも頻出の重要な原理なのでしっかりを押さえておいてください。
なぜこのようになるのかを確認します。下図を考えてください。
側面に働く圧力は打ち消し合うので、鉛直方向のみを考えます。
液体の密度を$\rho$、上面と底面の面積をSとすると働く力はそれぞれ$F_{1}$、$F_{2}$とすると
- $F_{1} = P_{0} S$
- $F_{2} ={P_{0} + \rho g h} S$
それぞれの面に加わる圧力の向きと力の向きは一致するので、働く力の向きは図のようになります。
鉛直上向きを正とすると鉛直方向に働く合力は
$F = F_{2} – F_{1} = {P_{0} + g h } S – P_{0}S$
$= \rho Sgh = \rho g V$ …(*)
となります。
$F_{2} – F_{1} > 0$なので物体全体には鉛直上向きの力が働きます。これが物体に働く浮力です。$\rho$は液体の密度、Vは円柱状の物体の体積なので、$\rho V$は物体が押しのけた液体の質量と一致します。
したがって浮力の大きさは、物体が押しのけた液体の重力の大きさに等しいこと(アルキメデスの原理)が示されました。
圧力と浮力の違いについて
圧力と浮力の公式はなんとなく似ていますよね。混乱してしまうかもしれませんが、使い方をおさえれば他の受験生に差をつけることができます。
先ほど用いた図を比較してその違いを考えてみましょう。
図1 水圧を考えたとき
図2 浮力を考えたとき
上図と合わせて先ほどご説明したアルキメデスの原理の導出方法を思い出してください。
浮力は上面と底面にかかっている力の合力でした。つまり、浮力を考えるときにはすでに圧力を考えているのです。つまり浮力にさらに圧力を足してしまったりすると、圧力を重複して考えていることになります。
よって圧力を書いたら浮力は書かないで、浮力を書いたら圧力は書かないようにすると混乱しないで問題を解くことができます。
圧力を利用した問題について
それでは、実際に入試問題で圧力はどのように問われているのかをみてみましょう。
問1と問3は頻出問題で問2は確認問題としてやってみてください。(出典 2007神戸大学)
解答及び解説
それでは、問題の解答、解説を行っていきましょう。まずは自分で解いた上で解答解説を見て行きましょう。
問1について
上面:$P_{0}+ \rho_{0} gh$
底面:$P_{0} + \rho_{0} g (h + l)$
$\rho_{0} x g$
と表すことができます。
x = hとx = h + lををそれぞれ水圧の式に代入して、大気圧との和を求めると解答を導くことができます。
問2について
$F_{1} = (P_{0} + \rho_{0} gh)S$
$F_{2} ={P_{0} + \rho_{0} g (h + l)} S$
それぞれの面に加わる圧力の向きと力の向きは一致するので、働く力の向きは上面が鉛直下向き、底面が鉛直上向きとなります。鉛直上向きを正とすると鉛直方向に働く合力は
$F_{2} – F_{1} = ({P_{0} + \rho_{0} g (h + l)}) S – (P_{0} + \rho_{0} gh)S$
$= \rho_{0} Slg$ …(*)
となります。$F_{2} – F_{1} > 0$なので物体全体には鉛直上向きに浮力が働きます。
ここで(*)について、$\rho_{0}$は液体の密度、Slは円柱状の物体の体積なので、$\rho_{0} S l$は物体が押しのけた液体の質量と一致します。
したがって浮力の大きさは、物体が押しのけた液体の重力の大きさに等しいこと(アルキメデスの原理)が示されました。
問3について
$\rho S l α = \rho_{0} S l g – \rho Slg$
= $(\rho_{0} – \rho)Slg$
となります。
この式をαについて整理すると、物体の加速度は
$α = \frac{(\rho_{0} – \rho g)} {\rho}$
と求めることができます。
物体は等加速度運動をしているため、距離と時間の関係式を用いて考えます。上面から水面までの距離はh、静かに手を離したため物体の初速度は0であり求める時間tをとすると
$h = 0 \times t + \frac{1}{2} \frac{(\rho_{0} – \rho) g}{\rho} t^2$
この式をtについて整理すると解答を導くことができます。
問4について
という等式を未知数vについて解けば、解答を導くことができます。まず、左辺の液面よりだけ物体が沈んでいる時の力学的エネルギーを考えます。液面よりh低い位置を物体の位置エネルギーの基準面とすると物体の位置エネルギーは0となります。物体は速度を持っていないため運動エネルギーも同じく0となります。したがって、物体の力学的エネルギーは0となります。次に、右辺の液面に浮上した時の物体の力学的エネルギーを求めます。この時の速さをvと置くと、物体の質量は$\rho S l$であるから運動エネルギーは
物体はhだけ上昇するため、位置エネルギーは$\rho Slgh$だけ増加します。物体が上昇すると、物体が押しのけていた体積Slの領域に液体が流れ込みます。これを質量$\rho_{0} Sl$の液体が高さhだけ下降したと考えると、液体の位置エネルギーは$\rho_{0}Slgh$だけ減少します。
よって、全体の位置エネルギーは
$\rho Slgh – \rho_{0} Slgh = (\rho – \rho_{0})Slgh$
となります。以上より力学的エネルギー保存の法則より
$\frac{1}{2} \rho Slv^2 + (\rho – \rho_{0})Slgh = 0$
これをvについて解くと、解答を導くことができます。
圧力を理解しよう
今回は圧力について以下のことを学びました。
- 圧力とは物体の表面の単位面積あたりに垂直に働く力の大きさのことで$p = \frac{F}{S}$
- 水圧とは水中で物体が受ける圧力のことで$p = p_{0} + \rho hg$
- 浮力とは、液体や気体の中にある物体が液体や気体から上向に受ける力のことで$F = \rho g V$[N]
- 圧力を書いたら浮力は書かないで、浮力を書いたら圧力は書かないようにする
おすすめの物理の参考書として「大学入試 漆原晃の 物理基礎・物理[力学・熱力学編]が面白いほどわかる本」があります。こちらもよろしければ参考にしてみてください。
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