【物理基礎】摩擦力の求め方を解説&問題演習つき(動摩擦力と静止摩擦力を理解する)

みなさん、こんにちは。今回も物理基礎を勉強していきましょう。今回は【摩擦力】についてです。

 

今までは摩擦力という力がないとしたときの運動を考えてきました。しかし私たちの周りではごく一部を除いて必ずと言っていいほど摩擦力が働いていています。

 

近くにあるものを指で軽く触ってみましょう。動かない、もしくは動いてもすぐに止まってしまいますよね。これはものに摩擦力が働いているからです。摩擦がなければ永遠に進み続けてしまいます。現実世界では触っただけで永遠に進み続けるなんて現象は思いつきませんよね。

 

よって摩擦力を学ぶことで私たちの周りの実際の現象を考えることができます。

 

まず摩擦力についての基本的な理解をして、その次に摩擦力の求め方を見ていきましょう。

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摩擦力とは

摩擦力とは、粗い面上を滑っている(滑ろうとしている)物体に対して、物体が動いている(動こうとしている)向きと反対向き、つまり滑りを妨げる方向に加わる力のことです。

 

摩擦力には動摩擦力と静止摩擦力の2種類があります。この2つを今から見ていきますが、メカニズムも解き方も全然違うので混乱しないようにしましょう。

動摩擦力と静止摩擦力とは

①動摩擦力

動摩擦力とは、粗い面上を滑る物体に働く摩擦力のことです。物体が動いているのを妨げる向きに働きます。

 

車のブレーキなどを思い浮かべると良いでしょう。ブレーキを働かせると、動いてる車に対して進行方向逆向きに強い動摩擦力がはたらき、停車します。

 

動摩擦力の大きさは必ず垂直抗力の大きさに比例します

 

発展的なことですが、動摩擦力はミクロな無数の分子の衝突が原因で生じます。この衝突による力を平均して求めた、公式を使って力を求めることができます。

 

この公式は次に説明します。

②静止摩擦力

静止摩擦力とは、粗い面上に静止している物体に力を加えたときに働く摩擦力のことです。動摩擦力と同様に物体が動き出すのを妨げる方向に働きます。

 

静止摩擦力は加える力の大きさで変わるので未知数をおいて考えることに注意してください。

 

滑り出す直前に最大となり、この瞬間の静止摩擦力を最大静止摩擦力と呼びます。静止摩擦力の中は未知数をおいて考えると書きましたが、最大静止摩擦力のときのみ垂直抗力の大きさに比例します。

 

因みに静止摩擦力は、地面が粗いために様々な方向に垂直抗力が働いていることが原因で生じます。この様々な方向の垂直抗力を求めることは困難なため、未知数とおいて考えるということになっています。

摩擦力の公式とは

動摩擦力と最大静止摩擦力には公式があります。この2つの公式は必ず覚えましょう。

 

ちなみに摩擦力は粗い面上を運動するときのみ働きます。従って問題文中で「滑らか」という言葉がある場合、摩擦力は無いものと考えて問題ありません。

動摩擦力の公式と最大静止摩擦力の公式

①動摩擦力

上の図を見てください。粗い床の上にある物体の質量をm、加わる重力加速度をgとしたとき、重力mgに対する反作用が垂直抗力Nです。また、動摩擦力をfとしました。

 

このとき、動摩擦力は

f = μ’N

と表すことができます。このμ’は動摩擦係数といい、床の粗さによってそれぞれ変わる比例定数です。

 

この値が大きいほど摩擦力は大きくなります。つまり、滑りにくさを表す値だと言えます。

②最大静止摩擦力

新しく図に付け加えた力Tは、静止している物体を引っ張る力です。

 

このとき、静止摩擦力は動き始める直前までは

 

動き始める瞬間は

(最大静止摩擦力)μN

 

と表すことができます。このμは静止摩擦係数といい、動摩擦係数と同じように床の粗さによって変わる比例定数です。値が大きくなるほど最大静止摩擦力は大きくなります。また、基本的に静止摩擦係数の値は動摩擦係数の値より大きい(μ>μ’)です。

 

ここで注意しなければならないのは、静止摩擦力の大きさが垂直抗力の大きさに比例するのは、動き始める直前(最大静止摩擦力)のみです。

 

最大静止摩擦力以外の静止摩擦力は、公式がないので未知数Rなどとおいてください。

試験に出題される運動は等加速度運動がほとんど

摩擦の問題で試験に出題される運動はほとんどが等加速度運動となっています。

 

よって運動方程式から運動を求めることができます。そのため基本的には今までの運動方程式と同じように解くことができます。では今までとどこが変わるのでしょうか。

 

そうです。運動方程式ma = FのFの部分に摩擦力を追加すれば良いのです。簡単な一次元で考えることのできる例を見てみましょう。

 

[例題] 下図のように粗い面上を運動している物体に力Fを加えた。このとき運動方程式はどうなるか。

 

ma = F – μ’N , N = mg

 

合力の求め方

合力とは、二つ以上の力を合成して一つの力として考えた力です。これらの求め方を見ていきましょう。

 

ざっくりいうと力はベクトル量であるため、力を分解してから合成するという流れで合力を求めます。

 

ただ、これでは何を言っているのか分かりづらいと思うので、合成と合力についてそれぞれ分かりやすく解説します。

(1) 力の合成

上図を見てください。力F1とF2の合力Fは

F = F1 + F2

となります。

(2) 力の分解

力はベクトル量であると言いました。

 

よく分からなくても、とりあえず平面上の物体の運動方程式を立てるときの力はx成分とy成分に分解して2本立てることがあるということを覚えておけば入試では大丈夫です。

上の図を見てください。

 

力がこのように働いているとき、

Fx  = Fcosθ , Fy = Fsinθ

となることがわかると思います。

 

摩擦力を利用した問題について

摩擦力の問題

問1(基本問題)

下図のように。水平とのなす角がθの粗い斜面上で、質量mの物体に斜面に並行で上向の力Fを加える。物体と斜面との間の静止摩擦係数をμ、重力加速度の大きさをgとする。物体を動き出させるには、加える力Fをいくらよりも大きくする必要があるか。

(出典 セミナー物理2017(88番)

問2(入試問題)

慣性力と摩擦の融合問題です。慣性力をまだやっていなければ、まとめまで飛ばしてしまって構いません。

 

図のように、摩擦を無視できる十分広い水平な床の上に、大きさを無視できる質量の小物体と、床との傾斜角がの斜面を持つ質量の三角台が置かれている。三角台の斜面は粗く、小物体と斜面の間の静止摩擦係数を、動摩擦係数をとする。

 

いま、両物体を床に対して静止させたあと、斜面に向けて正面から小物体に速さを与えた。重力加速度をとするとき以下の問いに答えよ。

 

両物体は接触し、その後、小物体は斜面に沿って上向きに滑り、三角台は一定の加速度で床の上をなめらかに滑りはじめた。ただし、小物体は斜面が床と接する境界をなめらかに通過するものとする。

(a)三角台とともに運動する観測者からは、小物体には(イ)重力、(ロ)斜面からの垂直抗力、(ハ)斜面からの動摩擦力、および(ニ)慣性力が作用しているように見える。これらを小物体の中心を始点とする矢印で図に表し、それぞれの矢先に(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の区別を記せ。ただし、それらの大きさを答える必要はない。

(b)小物体が斜面から受ける垂直抗力の大きさをNとする。鉛直下向きについて、三角台に関する運動方程式を立式せよ。ただし三角台の加速度をαとし、解答にはM,N,μ’,θ,αを用いよ。

出典 東京工業大学199年度 前期 一部改変

解答及び解説

問1(基本問題)

[解答]

[解説]物体が斜面から受ける垂直抗力の大きさをとする。斜面に対して垂直な方向を考えると、力の釣り合いより

N = mgcosθ  (1)

 斜面に平行な力の釣り合いも考える。ただし、物体が動き出す直前はストッパーから受ける垂直抗力はになるため、つりあいは以下のようになる。

F = mgsinθ + μN       (2)

式(1)を式(2)に代入してを消去すると、求める力の大きさは

F = mgsinθ +μ(mgcosθ) = mg(sinθ + μcosθ)

問2(入試問題)

慣性力と摩擦力の両方を正しく理解していれば解くことが可能です。

 

まずは問題を解くにあたってポイントとなることをまとめます。既に説明したことなので読みながら確認しましょう。

 

・設問中の「三角台の斜面は粗く」という言葉に注目してください。小物体と三角台の斜面との間には摩擦力が働きます。

・設問中の「摩擦の無視できる(略)床の上」「三角台は(略)床の上を滑らかに滑り」という言葉に注目してください。三角台の底面と床の間には摩擦力が働きません。

 

それでは各問の解答解説に入ります。

(a)以下の図が解答です。

[解説]

(イ)重力は鉛直下向きに加わります。

 

(ロ)垂直抗力は斜面に対して垂直上向きに加わります。

 

(ハ)動摩擦力は斜面に対して水平下向きに加わります。なぜ下向きかというと、注目している小物体は斜面に沿って上向きに上っており、摩擦力は物体の進行方向と逆方向に働くためです。

 

(二)小物体が斜面を上るとき、小物体の重力が斜面に働きます。床が滑らか(=摩擦力が三角台に働かない)であるため、三角台は右方向へ加速度運動します。従って、床に対して水平右方向へ慣性力が働きます。

 

(b)Mα = Nsinθ + μ’cosθ

[解説]

ポイントは小物体による力が、三角台へ働くということです。小物体が三角台から垂直抗力Nが働いているということは、三角台は小物体から反作用Nを受けているということになります。

 

また、小物体が三角台に加える動摩擦力の大きさは、斜面に対して水平右方向にμ’Nです。

 

これらの力が三角台に対してどのように働いているかは、以下の図を参考にしてください。これらを考慮すると、鉛直下向きについて三角台に関する運動方程式を立式すると以下となります。

Mα = Nsinθ + μ’Ncosθ

大学入試に必要な摩擦力を理解しよう

今回は以下の内容を学びました。

 

最後に復習をしましょう。

  • 摩擦力とは粗い面上にある物体の滑りを妨げる方向に加わる力である
  • 動摩擦力はμ’N、静止摩擦力は未知数遠くが最大静止摩擦力はμN
  • 試験に出題されるのは等加速度運動がほとんどであり、他の力と合力を求めることが多い

 

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