みなさん、こんにちは。物理基礎のコーナーです。今回は【作用・反作用の法則】についてです。
例を挙げつつ、「作用・反作用の法則」とは何かを解説していきますので、この記事で「作用・反作用の法則」の意味を理解していただければ幸いです。
また、「作用・反作用の法則」は力のつり合いの問題を考えるときによく出てきます。力のつり合いに関する問題を解けるよう、練習を積んでいきましょう。
作用・反作用の法則とは?反作用の意味
作用・反作用の法則とは、結論、「加える力」を『作用』といい、「力を加えたときに、力を加えた側が受ける力」を『反作用』といいます。
よく子供を叱るときに「叩きたくて叩いているわけじゃない、叩いた手も痛いんだよ」と言ったりしますが、この言説こそ、作用・反作用の法則を最も分かりやすく説明していると言えるでしょう。
人だったり、物だったりを殴ると、殴られた方は当然痛いですが、殴った方も殴った威力に応じて痛みを感じます。実は、物体に触れて力を加えると、力を加えた手も全く同じ力を物体から受けています。
そして、作用と反作用には2つの特徴があります。
1つ目は先ほども申し上げた「力の大きさ」についてです。作用と反作用の大きさは同じになっています。
もう1つは「力の向き」についてです。作用と反作用の力のベクトルは必ず「一直線上にあり、向きが反対」になっています。
この2つの特徴をまとめたものが「作用・反作用の法則」です。
作用・反作用の法則
2物体が互いに力を及ぼしあうとき、それらは向きが反対で大きさが等しい
作用・反作用の法則は経験則なので、これを証明することはできませんが、これまで見つかっているすべての力について成り立つことが分かっています。つまり、力があれば、その反作用が必ず存在しており、反作用の存在しない力は今のところ見つかっておりません。
また、「作用・反作用の法則」は、力には必ず「与える側」と「受ける側」がいることを示唆しています。高校物理の複雑な問題では、1つの物体にたくさんの力が働くことがありますが、そのときに、「与える力」なのか「受ける力」なのかを意識することは重要です。
以上、「作用・反作用の法則」についての簡単な説明した。ここまでだと「だから何なんだ」と思われるはずなので、以下でその具体例を見つつ「作用・反作用の法則」についての理解を深めて頂きたいと思います。
作用・反作用の例
力の作用・反作用を理解していただくためにいくつか例を見ていただきたいと思います。
机上の空箱
上図は机の上に置いた箱の周辺の力を表しています。力の種類を1つずつ解説していきます。
・重力とその反作用
地球上で質量を持つ物質には重力が働き、その大きさは (質量) $\times$ (重力加速度の大きさ)となります。重力は「地球」が「箱」を引っ張る力であり、「力を加える」のは「地球」、「力を加えられる」のは「箱」です。
重力も作用・反作用の法則に漏れず、反作用が存在しますが、上図中にその反作用は描かれていません。重力の反作用は、その「向き」と「力を与える側・与えられる側」が逆になります。すなわち、「箱」が「地球」を引っ張る力が重力の反作用です。
・垂直抗力とその反作用
箱には重力が生じているので、このままでは下向きに引っ張られて、地球の中心まで落ちていってしまいますが、それを押しとどめているのが「垂直抗力」です。垂直抗力は「机」が「箱」に加える力であり、今回は鉛直上向きの力です。
その反作用は「箱」が「机」に加える垂直抗力です。「箱」が鉛直下向きに「机」を押します。
この例で箱に加わる力は、「地球から受ける重力」と「机から受ける垂直抗力」になります。
一般に、物体が他の物体に触れているとき、そこから力 (垂直抗力)を受け、垂直抗力を受けた物体も反作用で力を及ぼします。ただし、物体に直接触れていなくても生じる力が高校物理では3つだけ存在します。
その3つが、「重力」、「磁力」、「クーロン力」です。重力、磁力については上記説明の通りで、クーロン力とは電気のプラスとマイナスが引き合う力のことです。
物体に働く力を考えるときには、「その物体が触れている他の物体から受ける垂直抗力」と「離れていても働く力 (重力、磁力、クーロン力)」を考えることで、すべての力を網羅することができます。
考慮すべき力に漏れがないかのチェックを怠らないようにしましょう。
ロケット
次はロケットがなぜ飛ぶのかを説明します。ロケットの飛び方とヘリコプターの飛び方は異なります。高校物理で、ヘリコプターや飛行機がなぜ飛ぶのかを完全に説明することはちょっと難しいです。一方で、ロケットがなぜ飛ぶのかを理解するのはとても簡単です。ヘリコプターや飛行機に比べてロケットはより高級なもののように思えます (実際そうです)が、そこに使われている物理法則は飛行機よりも原始的で簡単です。
一言で言えば、ロケットは「作用・反作用の法則」で飛んでいます。下の図をご覧ください。
ロケットは内部で燃料を爆発させ、生じた気体を下向きに噴射して、自身の下側にある空気を凄い勢いで押しています。空気は下向きに力を受けるため、その反作用としてロケットを上向きに勢いよく押します。この反作用は重力を上回り、ロケットは上向きの加速度を得るわけです。
力のつりあいと作用・反作用
それでは、作用・反作用の法則を意識しつつ、以下の力のつり合いについての問題を解いていきましょう。
例題摩擦力の大きな床の上にそれぞれ直方体の箱A、箱Bを下図のように立てかけたところ、2つの箱は静止した。箱Bの底面が地面となす角は $\theta$であった。箱A、箱Bの質量を $m_{\rm{A}}$、$m_{\rm{B}}$とし、箱Aが床から受ける垂直抗力と箱Bが床から受ける垂直抗力の関係を求めよ。ただし、2つの箱の間には摩擦力は生じず、垂直抗力のみ働くものとする。
力のつり合いを考えるときには、ひとまず対象となる物体に働く力をすべて書き出してみましょう。床からの静止摩擦力や、箱と箱が及ぼしあう力を正確に描くことが重要となります。
力がたくさん働いていて複雑なので、文字を工夫しました。$N$、$F$ はそれぞれ垂直抗力と静止摩擦力を表しています。添え字のA、B、R はそれぞれ 箱A、箱B、床を表しており、添え字が2つ続く場合は、前の文字が力を受ける側、後の文字が力を与える側です。例えば $N_{\rm{AR}}$は箱Aが床から受ける垂直抗力を表します。
箱Aと箱Bは互いを外側向きに押し合い、このままでは箱は互いに外側に移動しますが、それを防いでいるのが床から箱に働く静止摩擦力です。静止摩擦力の向きはそれぞれ内側に向き、箱の移動を押し留めています。
力を書き出したところで、力を鉛直方向と水平方向に分解し、各物体、各方向で力のつり合いについての式を立てます。今回斜めに働いている力は箱が互いに及ぼす垂直抗力のみです。
箱Aに働く鉛直方向の力のつり合い
\begin{eqnarray} N_{\rm{AR}} = m_{\rm{A}} g + N_{\rm{AB}} \cos{\theta} \; \cdots (1) \end{eqnarray}
箱Aに働く水平方向の力のつり合い
\begin{eqnarray} F_{\rm{AR}} = N_{\rm{AB}} \sin{\theta} \; \cdots (2) \end{eqnarray}
箱Bに働く鉛直方向の力のつり合い
\begin{eqnarray} m_{\rm{B}} g = N_{\rm{BR}} + N_{\rm{BA}} \cos{\theta} \; \cdots (3) \end{eqnarray}
箱Bに働く水平方向の力のつり合い
\begin{eqnarray} N_{\rm{BA}} \sin{\theta} = F_{\rm{BR}} \; \cdots (4) \end{eqnarray}
注目すべきは、$N_{\rm{AB}}$ と $N_{\rm{BA}}$です。この2つの力は、作用・反作用の関係にあるので、大きさが同じ力になっています。このことを利用して(1)式と(3)式から$N_{\rm{AB}}$、及び$N_{\rm{BA}}$を消去すると、以下の式が得られます。
\begin{eqnarray} N_{\rm{AR}} – m_{\rm{A}} g = m_{\rm{B}} g \; – N_{\rm{BR}} \; \cdots (5) \end{eqnarray}
これが箱A、Bの受ける垂直抗力についての関係式です。答えが得られました。答えは得られたのですが、形があまり綺麗でないので、ちょっと変形してみます。
\begin{eqnarray} N_{\rm{AR}} + N_{\rm{BR}} = (m_{\rm{A}} + m_{\rm{B}}) g \; \cdots (6) \end{eqnarray}
このような式が得られました。(6)式左辺は「箱Aと箱Bに床からかかる垂直抗力の合計」であり、右辺は「箱Aと箱Bにかかる重力の合計」です。この式は「AとBを1つの物体と考えた場合」の力のつり合いの式になっています。
(6)式の中にはAとBが互いに及ぼしあう力が含まれていません。そのあたりのことは「内力と外力」という概念を習うときに重要となってきます。そこでは再び作用・反作用の法則が必要なので、忘れたときには再度、思い出してみてください。
まとめ
・物体に力を加える (作用)と、その力と同じ大きさで向きが反対の力 (反作用)を受ける (作用・反作用の法則)
・反作用が生じない力は存在しない
・高校物理において、離れていても生じる力は「重力」、「磁力」、「クーロン力」のみ
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