酸素解離曲線は、特に看護系の大学で良く出ます。
グラフの持つ意味や、情報の整理の仕方をここでは書いていきます。
この記事の最後には、入試問題があります。是非最後まで読んで、入試問題で理解度を確認してみてください。
酸素を運ぶ細胞
私たち人間は、細胞の呼吸に必要な酸素を赤血球に運んでもらっています。
赤血球にあるヘモグロビンというタンパク質と酸素が結合し、肺から各組織へと酸素は運ばれます。
(ヘモグロビンの構造 数研出版 生物図録 より)
ヘモグロビンは、主に酸素濃度が高い時に酸素と結合します。
酸素と結合したヘモグロビンは酸素ヘモグロビンといいます。
ヘモグロビンと酸素ヘモグロビン
酸素を運ぶヘモグロビンというタンパク質は、主に酸素濃度で酸素と結びつくか決まります。
この便利な性質のおかげで、赤血球は必要な組織に酸素を渡すことができます。
酸素濃度が高く、二酸化炭素濃度が低い時
肺胞では、酸素濃度が高く二酸化炭素濃度が低くなっています。
大部分のヘモグロビンが酸素と結合して鮮やかな酸素ヘモグロビンになります。
酸素濃度が低く、二酸化炭素濃度が高い時
組織では、酸素濃度が低く、二酸化炭素濃度が高くなっています。
酸素ヘモグロビンは、この環境だと酸素を離しやすくなります。
酸素ヘモグロビンは、酸素を離して赤褐色のヘモグロビンに戻ります。
酸素解離曲線を見てみよう
酸素解離曲線は、情報がたくさんあって読み方が難しいグラフです。
酸素解離曲線では、三つの情報を扱っています。
- 二酸化炭素濃度
- 酸素濃度
- 酸素ヘモグロビンの割合
です。
順に見ていきましょう。
〔数研出版 生物基礎〕
1 二酸化炭素濃度
酸素解離曲線では多くの場合、一つの図に複数のグラフが乗っています。
この上図では、二酸化炭素濃度が高いグラフと、二酸化炭素濃度が低いグラフがあります。
どちらのグラフを見れば良いかをまず、確認しましょう。
2 酸素濃度
酸素濃度は横軸に書かれています。肺の場合は、酸素濃度が高いところを見ます。
外気に触れているので、酸素濃度が高くなっています。
組織の場合は、酸素濃度が低いところを参照します。
組織では、酸素が使われたので酸素濃度が低くなっています。
3 酸素ヘモグロビンの割合
酸素ヘモグロビンの割合は縦軸から読み取ります。
酸素と二酸化炭素の濃度を調べ、縦軸から酸素ヘモグロビンの割合を求めます。
組織で離される酸素の割合
酸素解離曲線では、組織で離される酸素の割合を聞かれることが多いです。
よく間違えるポイントなので確認していきましょう。
組織から離される酸素は、肺での酸素ヘモグロビンの割合から、組織での酸素ヘモグロビンの割合を引いて求めます。
例題
図は、ある哺乳動物の酸素解離曲線を示したもので、肺胞での酸素濃度は相対値100、二酸化炭素濃度は相対値40であり、組織での酸素濃度は相対値30,二酸化炭素濃度は相対値60である。
(1) (ア)肺胞の血液と、(イ )組織の血液では、酸素ヘモグロビンの割合は、それぞれおよそ何%か。
(2) 組織では、酸素ヘモグロビンの約何%が酸素を解離したか。整数値で答えよ。
〔改訂版 リードα 生物基礎より〕
【解説】
(1) グラフから酸素ヘモグロビンの割合を調べる
1 二酸化炭素濃度
(ア)の肺胞の場合は、二酸化炭素濃度は相対値40です。つまり、①のグラフを読みます。
(イ )の組織の場合は、二酸化炭素濃度は相対60です。つまり②のグラフを読みます。
2 酸素濃度
(ア)肺胞の場合は、①のグラフの横軸を見ます。酸素濃度は相対値100のところを見ます。
(イ )組織の場合は、②のグラフの横軸を見ます。酸素濃度は相対値30のところを見ます。
3 酸素ヘモグロビンの割合
それぞれグラフより、
- (ア)肺胞の場合は、95%
- (イ )組織の場合は、50%
ということが読み取れます。
(2)酸素解離度を求める
で求められます。
1 酸素ヘモグロビンがどれだけ酸素を離したか計算する
%で表されていますが、わかりやすく個数に置き換えてみます。酸素ヘモグロビンの数は、肺胞で95個ありました。
組織に行くと、酸素ヘモグロビンの数は50個に減っていました。さて、いくつの酸素ヘモグロビンが酸素を離したでしょうか。
減ってしまった酸素ヘモグロビンは、酸素とヘモグロビンに分かれてしまったのですよね。
つまり、95ー50で45個の酸素ヘモグロビンが酸素を離したことになります。
2 最初にあった酸素ヘモグロビンの数で割る
次に最初にあった酸素ヘモグロビンの数で割ります。間違えて100で割ってしまうことがないように注意しましょう。
3 100%表記で答える
最後に100%表記にしたいので、100をかけます。
45÷95×100=47.3%
となります。
入試問題にチャレンジ
図はヒトのヘモグロビンの酸素解離曲線である。
肺胞における血液の酸素濃度は相対値100、二酸化炭素濃度は相対値40であり、組織を流れる血液の酸素濃度は相対値30、二酸化炭素濃度は相対値は60である。
肺胞で結合した酸素ヘモグロビンのうち,酸素を組織へ渡すヘモグロビンの割合(%)を,次の①~⑤から1つ選べ。
- ① 20
- ② 40
- ③ 58
- ④ 65
- ⑤ 96
【解説】
まずは、肺胞と組織それぞれの酸素ヘモグロビンの割合を調べます。
● 肺胞
二酸化炭素濃度は相対値40なので上のグラフを見ます。
次に横軸が100のところを探します。
最後に縦軸を読み取ると、酸素ヘモグロビンの割合は約95%となります。
● 組織
二酸化炭素濃度は相対値60なので下のグラフを見ます。
次に横軸が30のところを探します。
最後に縦軸を読み取ると、酸素ヘモグロビンの割合は約40%となります。
肺胞の酸素ヘモグロビンの割合から、組織の酸素ヘモグロビンの割合を引きます。
95ー40=55
これを方法にあった酸素ヘモグロビンの割合で割ります。
55÷95=0.5789
100%になおします。
0.5789×100=57.89••• ≒58
となるので、答えは③になります。
〔数研出版 リードα 生物基礎 08北里大 改〕
まとめ
● 酸素解離曲線の酸素ヘモグロビンの読み取り方は
- 二酸化炭素濃度
- 酸素濃度
- 酸素ヘモグロビンの割合 を見ます。
● 酸素解離は
- 酸素ヘモグロビンがどれだけ酸素を離したか計算
- 最初にあった酸素ヘモグロビンの数で割る
- 100%で表す。
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