人身の自由についてわかりやすく解説(入試問題も用意)【政治第12回】

今回のテーマは人身の自由です。

 

罪刑法定主義・遡及処罰の禁止・一事不再理・令状主義といった人身の自由に関する重要なキーワードをわかりやすく解説しました。

 

また記事の後半には入試問題も用意しています。学習した内容をおさらいできるので、ぜひ最後までお読みください。

この記事からわかること

・人身の自由とは

・罪刑法定主義・遡及処罰の禁止・一事不再理・令状主義など重要なキーワードの意味

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人身の自由とは

(人身の自由:オリジナル)

人身の自由とは、人が不当に身体を拘束されない自由のことです。大日本帝国憲法下での過酷な人権制限を排除するために制定されました。

 

まず第18条で奴隷的拘束・苦役からの自由を定め、第36条では公務員による拷問と残虐な刑罰を禁止しています。

 

第18条:何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
第36条:公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

 

また第31条では法定手続きの保障を定めました。

 

第31条:何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

 

第31条の法定手続きの保障には罪刑法定主義も含まれます。罪刑法定主義とは、犯罪と刑罰はあらかじめ成文の憲法で定められていなければならないとする原則です。

 

罪刑法定主義の考え方は第39条の遡及処罰の禁止にも反映されています。遡及処罰の禁止とは、実行時に適法であった行為を後から制定した法律によって処罰してはならないとするルールです。

 

また第39条では一事不再理も定められています。一事不再理とは、判決が確定した事件について再び裁判をすることを禁止した原則です。

 

ただし有罪判決については再審が認められるケースもあり、免田事件足利事件のように再審で逆転無罪を勝ち取る事例も複数見られます。

 

免田事件は1983年、足利事件は2010年に無罪が確定しました。

 

第39条:何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

 

憲法では被疑者や被告人に複数の権利を保障しているね。
たなかくん
たなかくん

 

被疑者には第34条で弁護人依頼権、第38条1項で黙秘権を保障しているほか、第33条・第35条では令状主義を定めています。

 

令状主義とは、現行犯を除いて逮捕・捜索・押収には裁判官の発する令状が必要とする原則です。

 

第33条:何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
第34条:何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
第35条:① 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
② 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

 

S先生
S先生
ちなみに第33条・第35条に出てくる司法官憲とは裁判官のことです。

 

被告人には第37条1項で公平・迅速な公開裁判を受ける権利、第37条3項で弁護人依頼権、第38条1項で黙秘権を保障しています。

 

さらに第38条2項では強制・拷問などによる自白を証拠として取り上げることを禁止しました。

 

加えて経済的事情で弁護人を選任できない際に裁判所が弁護人を選任する国選弁護制度も用意されています。

 

S先生
S先生
ちなみに捜査機関から犯罪の嫌疑を受け、捜査の対象とされているのが被疑者です。検察官が起訴した後は被告人と呼ばれます。

 

第37条:① すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
② 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
③ 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
第38条:① 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
② 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
③ 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

 

今回の範囲はここまでです。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。

入試問題にチャレンジ

問1 下線部ⓓ(罰則)に関して、日本の刑罰の制度に関する記述として適当でないものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 憲法によれば、犯罪行為の内容とそれに対して科される刑罰の種類および重さが、法律で明確に定められていなければならない。

② 憲法によれば、行為時に適法であった行為について、事後に刑罰を定めることで、遡って処罰することができる。

③ 公訴前の段階の被疑者について、法令上、国選で弁護人を付ける制度が定められている。

④ 検察官が不起訴処分を行った場合、その処分の適否を民意に基づいて判断する検察審査会制度がある。

2019年 センター試験 本試験 現代社会 第2問 問4より)

問2 下線部ⓑ(自由権)のうち、日本における人身の自由に関連する記述として誤っているものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 現行犯として逮捕する場合は、裁判官の発する令状が必要である。

② 憲法上、何人も自己に不利益となる供述を強要されないことが定められている。

③ 公務員による拷問や残虐な刑罰は、憲法上禁止されている。

④ 第一審で有罪判決が出されても、最終的に判決が確定するまでは、被告人は無罪であると推定される。

2019年 センター試験 本試験 政治・経済 第3問 問2より)

2020年 センター試験 本試験 現代社会 第1問 問7より)正解:② 参議院議員の被選挙権年齢は30歳で、衆議院議員の被選挙権年齢は25歳ですが、同規定に対して違憲判決は出ていません。

問3 下線部ⓓ(犯罪)に関して、日本における刑事司法に関する記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 法定手続の保障には、法律の定める手続によらなければ刑罰を科せられないことが含まれる。

② 無罪推定の原則とは、判決が確定した後に同じ事件で再び裁判にかけられないことをいう。

③ 刑事事件における被告人が、弁護人を依頼することができるということは、憲法には規定されていない。

④ 刑事事件において有罪判決が確定した後、再審によって無罪となった事例は現在まで存在しない。

2017年 センター試験 本試験 現代社会 第2問 問4より)

問1:② 遡及処罰の禁止については、第39条で「何人も、実行の時に適法であつた行為…については、刑事上の責任を問はれない。」と明記されています。

アコーディオンボックス内容

 

問2:① 現行犯逮捕の場合は、裁判官の令状は不要です。ちなみに②は黙秘権、④は無罪推定の原則に関する説明で、③については第36条に規定されています。
問3:① ②:問題文は無罪推定の原則ではなく、一事不再理に関する説明です。③:国選弁護人制度は憲法第37条で規定されています。④:免田事件(死刑判決→1983年の再審で無罪判決に)・足利事件(無期懲役→2010年に無罪が確定)など、有罪判決確定後、再審によって無罪となった事例は複数存在するので誤りです。

まとめ

今回は身体の自由について解説しました。

 

罪刑法定主義・遡及処罰の禁止・一事不再理・令状主義といった重要なキーワードは一つひとつ意味を理解しながら覚えていきましょう。

 

入試でも頻出分野なので、ぜひこの記事を読んでマスターしていただければ幸いです。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

前回の記事「経済の自由とは?重要判例もわかりやすく解説(関連入試問題も)【経済第11回】」をご覧ください。

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