今回は江戸時代の農業・各種産業・特産物などについて見ていきます。
キーワードは備中鍬・農業全書・入浜塩田です。センター試験でも頻出の分野となっています。
最後には入試問題を用意しているので、ぜひ最後までご覧いただき江戸時代の産業についてマスターしていってください。
この記事からわかること・備中鍬・千歯扱など様々な農具が生まれた。
・7世紀末には宮崎安貞が「農業全書」を著した。
・製塩業では入浜塩田が発達した。
・出羽地方の紅花・京都の西陣織・阿波の藍が特産物として生まれた。
農業
(備中鍬:wikiより)
まず江戸時代の農業について見ていきます。
農業技術の発達
17世紀の後半あたりから、農業生産は著しい発展を遂げました。その要因の一つが農業技術の発達です。備中鍬・千歯扱(せんばこき)・唐箕(とうみ)・千石簁(せんごくどおし)・踏車など様々な農具が生み出され、村に普及していきました。
その一つ一つの用具について順番に紹介していきます。まず備中鍬は鉄製の農具で、従来の鍬と違って先が分かれていて深く耕せるのが特徴です。また千歯扱は脱穀用として、唐箕や千石簁は選別用として広まりました。さらに踏車は当初の竜骨車に代わる新たな揚水機として普及しました。
肥料の面では新たに遠隔地からの干鰯・油粕などが、金肥として広まっていったこともおさえておいてください。
農書の普及
こうした農業技術が広まった背景には書籍の普及も一役買っています。
17世紀前半には新しい栽培技術や農業知識について書かれた農書「清良記」が記されたほか、17世紀末には宮崎安貞によって「農業全書」が記されました。農業全書は日本における初めての体系的な農書であり、2012年のセンター試験にも出題された重要なキーワードですので、覚えておきましょう。
19世紀になると、大蔵永常の「農具便利論」「広益国産考」といった農書が刊行され、地域の実情に応じた農書が作られるようになりました。
技術革新や新田開発によって田畑面積は約2倍に増加し、幕府の収入を増やすことにつながりました。
各種産業
(各地の特産品:オリジナル)
ここでは各種産業について見ていきます。
漁業
まず漁について見ていきましょう。
漁法の改良や漁場の開発が進み、とくに蝦夷地や陸奥で漁業がさかんにおこなわれました。瀬戸内海の鯛・土佐の鰹などの釣り漁が見られるようになります。九十九里浜では鰯漁が盛んに行われ、これを原料に干鰯が作られました。
また干しアワビやフカヒレなどの俵物が、銅に代わって中国向けに輸出されています。
製塩業・織物・陶磁器・醸造業
一方製塩業では潮の干満を利用して海水を引き込んで製塩する入浜塩田が発達し、瀬戸内海の沿岸部を中心に各地で塩の生産が行われるようになります。
織物では河内の木綿や近江の麻が生まれたほか、京都の西陣では高機(たかばた)を使って高級な絹織物が織られました。
陶磁器の分野では、有田焼をはじめ、尾張の瀬戸や美濃の多治見などでも生産が行われました。
醸造業では、伏見や灘の銘酒や野田や銚子の醤油が生まれたこともおさえておきましょう。
特産物
この時代には、全国各地にそれぞれの風土に適した特産物が生まれました。
とくに出羽村山地方の紅花や京都の西陣織、阿波の藍などはセンター試験でも出題されたことのある部分なので、しっかりおさえておいてください。ほかにも越前の鳥の子紙や奉書紙、紀伊のみかん、宇治の茶なども生産されました。
今回の範囲はここまでです。最後に入試問題を用意していますので、問題を解いて見た上で自分の理解度をチェックしてみてください。
入試問題にチャレンジ
下線部ⓑに関連して、近世の庶民生活にかかわる諸産業に関して述べた文として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 九十九里浜では鰊漁、土佐では鰯漁などがさかんに行われた。
② 瀬戸内海沿岸を中心に、入浜式塩田(入浜塩田)が発達した。
③ 刈敷や草木灰が、金肥として普及した。
④ 灘の醤油、阿波の紅花などの特産品が全国各地に生まれた。
まとめ
今回は江戸時代の農業や各種産業について見てきました。
農業については一つ一つの用具と名称と役割を結び付けて覚えていくことが重要になります。
また栽培技術などに関する農書でいうと、宮崎安貞の「農業全書」や大蔵永常の「広益国産考」が出された時期について違いを理解しておいてください。
各種産業については特に製塩業の入浜塩田、特産物は出羽村山地方の紅花や京都の西陣織、阿波の藍を中心におさえておくと受験に役立つでしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
前回の記事「正徳の治について解説(入試問題も解説)【日本史第50回】」ですのでよければ読んでください。
次回の記事「交通整備の発達や貨幣について解説(入試問題付き)【日本史第52回】」
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