【世界史B】受験に役立つ文化史 近代以降の欧米政治思想史

こんにちは。今回は近代以降の欧米政治思想史です。17世紀から18世紀にかけて、ヨーロッパでは王権神授説にもとづく絶対王政が行われていました。市民たちは啓蒙思想などにより王権神授説に抵抗し、市民革命を起こします。

 

19世紀になると、資本家と労働者の経済格差が拡大。あらたな社会の仕組みを模索する社会主義思想が生まれました。政治思想史は文化史の中では最も出題頻度が高い分野ですので、政治史とリンクさせつつしっかりと整理しましょう。

 

今回の記事のポイント・王権神授説は絶対王政を正当化する思想

・自然法思想や社会契約説は王権神授説を批判する思想

・啓蒙思想は旧制度を批判し、市民革命の理論的支柱となった

・空想的社会主義はイギリスのオーウェン+フランスの3人が頻出

・科学的社会主義はマルクスとエンゲルスが重要

・社会主義運動の潮流は時代を動かし、ロシア革命で結実した

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17・18世紀の政治思想

17世紀、絶対王政を正当化していた思想が王権神授説でした。王権は神に由来し、人民は国王に絶対服従すべきであるという思想は強大な王権を象徴するものでした。イングランドのジェームズ1世が王権神授説の基盤をつくりました。

(ジェームズ1世)

しかし、市民の力が強まってくると国王による絶対的な支配に反発する思想も生まれます。自然、あるいは神によって与えられた永久不変の法は国王といえども尊重すべきだとする自然法思想は、絶対王政を批判する思想的な武器となりました。

 

17世紀中ごろになると、自然法思想が新たな発展を見せます。社会や国家は人民の契約によって成立するとした社会契約説が台頭したのです。社会契約説は市民たちが王権神授説を批判する際の政治思想となりました。

 

有名なのは『市民政府論』を書いたイギリスのジョン=ロック、『リヴァイアサン』を書いたホッブズ、『社会契約説』のルソーです。

 

ホッブズは、国家のない自然状態は万人の万人に対する闘争状態なので、それを制御するために国家というリヴァイアサンに人間の持っている権利を譲渡したという理論を立てました。

(リヴァイアサンの表紙:wikiより)

ロックは、所有権を保護するために国家が成立したという歴史観の下、国家は所有権の侵害ができないという理論を組み立てました。

(ジョン=ロック:wikiより)

また、ロックと啓蒙主義で有名なのがヴォルテール。ただし、その活動は啓蒙家として封建社会や宗教的不寛容などにたいする合理的精神による批判したもので、新たな社会理念を提唱したものではありませんでした。

(ヴォルテール)

ルソーは社会契約論のなかで、人間を自由意思を持つものとして考えます。そのため、社会契約の枠組みに従って人間の自由な意思が社会契約の中で保障されていなければならないとしました。なお、教員をするために彼の『エミール』という著作は必読の書として教育学を勉強するときには必ず読まされます。

(ルソー:wikiより)

17世紀後半から18世紀にかけて、啓蒙思想が生まれます。啓蒙思想はイギリスに始まり、フランスやドイツに広がりを見せた革新思想でした。著書『法の精神』で権力分立を唱えたモンテスキューが有名です。

(モンテスキュー:wikiより)

啓蒙思想は、理性を重んじ、すべての伝統的偏見や迷妄、慣習、不合理な社会制度を批判します。フランス革命においてはアンシャンレジームとよばれた旧制度を批判する市民の思想的武器として機能します。

19世紀の社会主義思想

(マルクス:wikiより)

市民革命後、次代の担い手は王侯貴族から産業資本家・ブルジョワジーの手に移りました。欧米諸国では一部の豊かな産業資本家と大多数の貧しい労働者といった階級分化がおこります。

 

19世紀中ごろ、資本主義を否定し労働者階級の解放を目指す思想が生まれました。それが、社会主義思想です。

初期の社会主義は空想的社会主義といいました。資本主義社会での労働問題を解決し、理想的な社会を築こうとする動きですね。資本主義の範囲内での改良に過ぎないことから、社会改革の理念や手段を持っていないとされ、マルクスらによって空想的と批判されます。

 

19世紀中ごろ、マルクスとエンゲルスは資本主義社会の矛盾を科学的に追求し、社会の変革を目指しました。空想的社会主義のような単なる思想ではとどまらないという意味で、マルクスらは自身の思想を科学的社会主義と呼びます。

 

マルクスはエンゲルスとともに『共産党宣言』を著し、国際的な労働者の組織である第一インターナショナルの成立にこぎつけます。

 

S先生
S先生

エンゲルスはエンゲル係数を唱えた人でもあります。

19世紀後半から20世紀初頭にかけて、社会主義は大きな潮流となりました。1917年、ロシアで初めての社会主義革命が成功しソヴィエト連邦が成立します。

まとめ

 

17世紀から18世紀にかけて、絶対王政を正当化した王権神授説は自然法思想や社会契約説の批判を受けます。18世紀後半に盛んになった啓蒙思想は、欧米の市民革命の思想的なよりどころとなりました。

 

市民革命後に成立した産業資本社会は貧富の差を拡大させます。資本主義社会の矛盾を突き、社会革命の必要性を訴えたのが社会主義でした。空想的社会主義と科学的社会主義の区別をしっかりつけ、混同させないよう注意しましょう。

 

社会主義の思想は19世紀末から20世紀のヨーロッパに大きな影響を与えます。中でも最大のインパクトとなったのはロシア革命でした。革命の結果成立したソヴィエト連邦は超大国の一つとして20世紀の歴史を大きく動かします。

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