こんにちは。今回は世界史Bの明・清の社会・経済・文化について解説します。明・清の時代、中国経済は大いに発展しました。特に、長江流域の経済発展は目を見張るものがあります。長江流域で生産された商品は山西商人や新安商人によって全国各地に運ばれました。その一方、明も清も海禁政策を実施し、海外貿易は制限されます。
明・清の時代、経済的発展を背景に文化も大いに盛んになりました。明・清の社会・経済・文化についてみていきましょう。
今回の記事のポイント・明・清の穀倉地帯は長江中流域の「湖広」。「湖広熟すれば天下足る」
・長江下流域は商品作物の生産に転換
・山西商人や新安商人は会館・公所を設置し、中国全土で手広く商業活動を実施
・海禁政策が緩和されると中国に大量の銀が流入。一条鞭法や地丁銀実施の条件が整う
・明の文化は大学入試でよく狙われます
明・清の産業
(万暦赤絵:wikiより)
明や清の時代、経済の中心は完全に長江流域に移っていました。宋の時代には「江浙熟すれば天下足る」といわれていたのが、明・清の時代には長江中流域で稲作が盛んになり、穀倉地帯となります。そのため、「湖広熟すれば天下足る」といわれるようになります。
「江浙」とよばれた長江下流域では稲作にかわって商品作物の生産が盛んになりました。上海など長江下流のデルタ地帯では綿花や桑の栽培がおこなわれ、周辺都市で綿織物や絹織物が生産されます。
長江流域で生産された商品を全国各地に販売したのが山西商人や新安商人でした。彼らは同郷者や同業者の宿泊施設として会館・公所を各地に設置。商業の拠点として活用します。
陶磁器の輸出が盛んになるのは元代以降です。宋代には白磁や青磁などの宋磁が景徳鎮で生産されました。元代にはイスラーム伝来のコバルト顔料を使った染付が生産されます。明代には赤絵とよばれる陶磁器が発達しました。これらの陶磁器は西洋に輸出されます。
明・清の貿易と銀の流入
(銀のインゴット:wikiより)
明の時代、海禁政策により朝貢貿易以外の海外貿易や海外渡航は禁止されていました。皇帝による貿易独占が狙いです。
これに対し、中国南部の福建省や広東省では、沿岸住民が密貿易を実行。日本人の倭寇のように海賊行為を働くようになります。これを、後期倭寇といいました。
16世紀後半、明は海禁政策を緩和します。民間貿易を認めるようになります。中国産の生糸や東南アジアの香辛料、日本やメキシコなどからもたらされる銀が取引される東アジア貿易圏が成立します。
この結果、中国に大量の銀がもたらされるようになりました。明では銀を中心とした税制である一条鞭法が、清では地丁銀が制定され銀は中国にとって必要不可欠な貨幣として機能します。
清のはじめのころ、鄭成功を封じ込めるため海禁政策がとられますが、鄭一族の降伏後、海禁政策は緩和されました。乾隆帝時代の1757年、ヨーロッパとの貿易は広州1港と定められ、公行が貿易を独占します。
明の文化
(三国志演義:wikiより)
明代に大規模な編纂事業が始まりました。朱熹の「四書集注」をもとにした注釈書「四書大全」や孔頴達の「五経正義」を再解釈した「五経大全」などの儒教の書物が編纂されます。さらに、永楽帝の命で古今の図書を収集・分類した「永楽大典」なども編纂されます。
儒教の新しい動きとして知行合一を基本思想とする陽明学が成立します。王陽明や李卓吾が代表的な陽明学者ですね。
実学も明の時代に発達しました。李時珍の「本草綱目」は薬物の総合書。徐光啓の「農政全書」は中国伝来の農法に加え西洋の水利学も加味された農書。宋応星の「天工開物」は産業技術をまとめた本。「崇禎暦書」はイエズス会修道士のアダム=シャールの協力でつくられた暦書です。
庶民文学は元に引き続き発展します。「西遊記」「金瓶梅」「水滸伝」「三国志演義」は明の時代の作品ですよ。
清の文化
(四庫全書:wikiより)
編纂事業は清の時代にも行われます。康熙帝が編纂させた「康煕字典」や康熙帝や雍正帝が編纂させた百科事典である「古今図書集成」、乾隆帝の命で編纂された重要書籍を分類・整理した書物である「四庫全書」などがあります。
儒教では実証主義的な文献学である考証学が発達します。黄宗羲や顧炎武、銭大昕らが代表的な考証学者ですね。
清代の小説としては満州貴族の家庭を描いた「紅楼夢」、科挙に汲々とするえせ学者たちを風刺した「儒林外史」などがあります。
まとめ
明や清の時代は経済的に大きく発展した時代でした。経済発展を支えたのは長江中流域の穀物生産と長江下流域の商品作物の生産です。それらの品物を全国各地に流通させていたのが山西商人や新安商人でした。
国内産業の発達とともに海外貿易も活発化。中国は貿易黒字により多額の銀を獲得。一条鞭法や地丁銀を実施するのに十分な銀が国内に流通します。
明・清代には大規模編纂事業や庶民の小説なども多く出版されています。良く出題されますので、今回取り上げた分だけでもしっかり押さえておきましょう。
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