みなさんこんにちは。今回は平成29年大学入試共通試験試行調査(プレテスト)の地学分野の分析です。次年度以降の大学入学共通テストの地学の問題の参考にしてみてください。
地学の出題分野の種類とその特徴
プレテストでは今までのセンター試験よりも思考力・判断力・表現力を重視した出題となっています。
探究活動を扱った出題では課題を把握し観察結果や与えられた図・グラフから思考・判断するもので、基礎的な知識を正確に理解し覚えておくのはもちろんのこと、問題文が長くなる傾向にあり文章の読解力と問題の意図をつかむ力が要求されます。
第1問 固体地球、大気・海洋での物質と熱の循環についての出題
地学の各テーマ(固体地球、大気、海洋、宇宙)における物質と熱の循環について設問されています。
問1 地殻プレートと地震の発生についての理解が求められます。東北日本における地震発生場所の図を基に、海洋プレートの生成についての語句を選択する問題です。
問2 マントルプルームとホットスポットという2つの語句について、そのしくみと理解が問われています。
問3 地球表層での地表、海洋、大気の間での水の循環によって引き起こされる風化・浸食・堆積の作用で地形の形成にどのような変化を与えるかについての問題です。
問4 海洋の循環についての問題です。高緯度で沈み込んだ海水が再び表層へ上昇するまでの年数を求めます。
問5 大気や海水の循環による熱輸送についての問題です。ここでは大気の運動の分野のハドレー循環、極循環、偏西風といったそれぞれの現象についての理解が求められます。
問6 太陽の構造と活動について写真を見て解答する問題です。太陽の表面で物質が循環し、対流が起きているしくみについて問われています。
第2問 岩石・鉱物の探究活動で集めた情報の扱い
生徒が探究活動で観察し得られた情報を整理したり、または用具を用いた観察の仕方についての設問となります。
問1 岩石のへき開の観察方法についての問題です。ここでは方解石のへき開の調べ方について問われています。
問2 偏光板と顕微鏡を用いて岩石や鉱物を観察する方法についての問題です。
問3 岩石の色指数について、顕微鏡で観察した資料を見て数値を求める問題です。
問4 火成岩の分類と鉱物の組成についての問題です。観察結果の資料から鉱物の種類を特定します。
問5 岩石中の結晶の生成についての問題です。図示された斜長石の生成する順序と含まれる成分について問われています。
問6 探究活動の報告書の中の結論の書き方について相応しいものを選択し解答する問題です。結論が探究の目的に対応していることが肝要です。
第3問 大気と海洋の観測データから考察する問題
大気の構造・運動と気象、海水の運動や循環について、観測データを基にして情報を分析・考察する設問となっています。
問1 気温と飽和水蒸気圧の関係について理解を問う問題です。グラフが示されており、冷房で除湿をしない場合の湿度を求めます。
問2 海面での蒸発量について海上の水蒸気量と風速から求める式を推測する問題です。
問3 台風の特徴についての問題です。台風は海面からの水の蒸発による潜熱をエネルギーとしており、熱や水を低緯度から中緯度に運んでいます。
問4 冬季の日本付近の天気図を4つの中から選択する問題です。潜熱が大量に海洋から大気に運ばれているものになります。
問5 地衡流の流速を大きくする要因を考える問題です。黒潮での地衡流の発生のしくみを理解します。
第4問 宇宙のテーマから惑星、太陽、皆既日食の出題
天体観察の結果から太陽や恒星の特徴を問う設問があります。
問1 太陽周囲の大気についての問題です。皆既日食の際に見えた放射状に広がる白い光はコロナです。
問2 地球型惑星についての問題です。それぞれの惑星の特徴が問われています。金星には二酸化炭素を主成分とした大気があります。
問3 HR図を使用して恒星を分類する問題です。スペクトル型と絶対等級から恒星を分類します。
問4 皆既日食が見られた場所が移動する速度を求める問題です。図に示された緯度と経度から2点間の距離を算出し求めます。
問5 地球と月の軌道についての問題です。月の公転速度、地球の自転速度、観測地の緯度を基に月影の移動速度を求める式を4つの中から選択します。
第5問 地層の形成と化石について調査結果から考察する
海洋プレートの移動によって形成された新たな地層についてグラフから情報を読み取り考察する内容となっています。
問1 四国沖の南海トラフについて、掘削深度と体積年代の関係を考える問題です。
問2 タービダイトを主とする地層について柱状図から地層の深度と年代の関係を表したグラフを特定し選択する問題です。
問3 示準化石についての問題です。示準化石として役立つ放散虫の特性を選択します。
問4 四国南部における付加体の地質構造についての問題です。模式断面図とモデル図から地質の堆積した時代と断層を選択し回答します。
問5 P波伝わり方について直接波と屈折波の速度、直接波と屈折波の走時曲線の理解を問う問題です。
問6 地球内部の温度・圧力と深さの関係を表した図を選択する問題です。
問題の解き方と解説 ~付加体と地質構造~
第5問の問4について説き方を解説します。これは四国南部の付加体と呼ばれる地質構造についての問題です。
問題の選択肢ではまず堆積した時代が最も古いのはAかCか、ですね。付加体ができるプロセスを見てみましょう。
付加体によって形成される地質構造は、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む際に海洋プレート上の堆積物がはぎ取られ、これが大陸プレートの上に乗せられてできます。
このことから考えると先にはぎ取られて大陸プレートに乗ったAが古いということになります。
そしてAB間、BC間の境界が不整合面か断層か、という判断です。この境界は横方向から力が加わってできた地質のずれなので断層ということになります。
これらのことから正解は2 「堆積した時代が最も古いのはAで,AB間,BC間の境界は断層である。 」となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は平成29年プレテスト地学の分析をお届けしました。
探究活動を題材とした出題は観察結果や図・グラフから情報を整理し考えるもので難度が高いですが、いずれにしても基礎的な知識を正確に理解し覚えておくことが問題を解くための要です。また、潜熱・顕熱など物理の知識も含まれていますので分野をまたいだ横断的な理解が要求されています。毎日コツコツ勉強しましょう。
コメント