みなさん、こんにちは。今回も受験に役立つヨーロッパの歴史シリーズをはじめます。今回の「近現代シリーズ第14回」は【世界恐慌】を取り上げます。
前回は、景気がうなぎ上りのアメリカ1920年代について取り上げました。具体的には「【世界史B】受験に役立つヨーロッパ史(1920年代のアメリカ)【近現代編その13】」をご覧ください。
そして、今回の世界恐慌とは、アメリカの株価暴落をきっかけにした世界的な景気の落ち込みのことです。世界恐慌を乗り切るため、各国は様々な対策を打ち出します。しかし、資金力も植民地ももたない「持たざる国」ではファシズムが台頭するきっかけとなりました。
今回の記事のポイント・世界恐慌に対しフーヴァー政権は無策。ドイツは深刻なダメージ
・ローズヴェルト大統領はニューディール政策と善隣外交を実施
・ニューディールの内容は受験必出。しっかり整理しましょう
・「持てる国」はブロック経済政策を実施。「持たざる国」は周辺国に軍事的に進出
・世界恐慌の結果、金本位制が崩壊し世界貿易が縮小した
世界恐慌の発生
(取り付け騒ぎ:wikiより)
1929年、アメリカの株取引の中心であるニューヨークのウォール街で株価の大暴落が発生しました。人々は自分の財産を守ろうと銀行に押しかけます。銀行は全ての預金者に払い戻しをすることが出来ず倒産が相次ぎました。
銀行が危機に陥ることで、企業は銀行からお金を借りることが出来なくなります。すると、お金を借りられず支払い不能となった企業は倒産しました。倒産した企業にお金を貸していた企業や、倒産した企業から注文を受けていた企業も相次いで倒産します。失業者が町にあふれました。
こうした極端な不景気を恐慌と言います。アメリカで発生した恐慌は瞬く間に世界中に広まったため世界恐慌とよばれるようになりました。フーヴァー政権は自由放任主義の立場だったので恐慌に対する動きが鈍く、恐慌を拡大させます。
[L1_wsbStart][L_wsbAvatar]https://wearewhatwerepeatedlydo.com/wp-content/uploads/2019/10/teacher.png[L_wsbName]S先生[L_wsbText]市場に対する政府がコントロールできない状態だったのね。[L_wsbEnd]
1931年にようやくフーヴァーモラトリアムを出して借金の支払いを一時猶予する法律を作りますが、タイミングが遅く効果がありませんでした。
恐慌の影響が最も深刻だったのはドイツです。ドーズ案を受け入れてからドイツ経済はアメリカ資本に頼っており、アメリカが不景気になるとドイツも一緒に不景気になる仕組みになってしまっていたからでした。
ニューディール政策と善隣外交
(TVAの労働者:wikiより)
1932年、民主党のフランクリン=ローズヴェルトは大統領選挙に勝利しアメリカ第32代大統領に就任しました。ローズヴェルトの最優先課題は世界恐慌からアメリカを脱出させることです。
ローズヴェルトが実施した世界恐慌対策をまとめてニューディール政策といいます。ローズヴェルトは3つのRを掲げて対策に乗り出しました。救済(Relief)、回復(Recovery)、改革(Reformation)の3つです。
救済の対象は銀行でした。金本位制を停止する緊急銀行救済法を成立させ銀行の連鎖倒産を防ぎました。回復の対策は農業調整法(AAA)と全国産業復興法(NIRA)です。しかし、これらの政策は政府による過度な経済介入だとして裁判で違憲判決が出ました。
改革の対策、ひとつめはテネシー川流域開発公社(TVA)の設立です。TVAがテネシー川流域を総合開発するもので、公共事業を起こすことで雇用を増大させようとはかりました。また、ワグナー法では労働者の団結権や団体交渉権を認め労働者の生活を安定させようとします。
外交面では従来の力によるカリブ海やアジア進出を改める善隣外交を実施。ニカラグアやハイチからの撤兵やキューバ独立やソ連の承認、フィリピンの10年後の独立承認などをおこないました。
ブロック経済
(イギリス国会議事堂:wikiより)
イギリスやフランスなど広大な植民地を持つ国は、本国と植民地の結びつきを強め外国商品を締め出し、自国産業を保護する保護貿易を行いました。それぞれの経済圏(ブロック)を築こうとしたため、ブロック経済政策とよばれます。
イギリスが作ったのはスターリング=ブロック(ポンド=ブロック)でした。イギリスは大英帝国の呼び名を改めイギリス連邦にし、連邦経済会議を開催して本国と植民地の結びつきを強化しました。アメリカはドル=ブロック、フランスはフラン=ブロックをつくります。
「持てる国」と「持たざる国」の格差
(ヒトラー内閣:wikiより)
植民地や資本を持つ経済基盤が強い国を「持てる国」、それらを持たない国を「持たざる国」といいます。持てる国はニューディール政策やブロック経済などを実施し自国産業を守ろうとしますが、持たざる国はどうなったのでしょう。
詳しくは「【世界史B】受験に役立つヨーロッパ史(戦間期のヨーロッパ)【近現代編その12】」にて述べましたのでまだ読んでない人は是非読んでください。
ドイツはヴェルサイユ条約に対する不満や世界恐慌の影響による不景気を背景にヒトラー率いる国家社会主義ドイツ労働者党が勢力を拡大します。1933年の選挙で勝利したヒトラーが首相に就任します。
イタリアでは1920年代に成立したムッソリーニのファシスト党政権がエチオピアに侵攻します。また、日本は中国進出を強め1931年の満州事件をきっかけに、翌年、満州国を建国しました。持たざる国々は世界の再分割を要求し、持てる国と争うようになります。
金本位制の崩壊
(金のインゴット)
金本位制は19世紀に世界貿易の覇権を握ったイギリスが提唱した仕組みです。金を国際通貨とし、貿易の支払いなどに使っていました。そのため、主要国の紙幣は金と連動し、必ず金と交換できる紙幣(兌換紙幣)となっていました。
世界恐慌が発生すると各国の銀行に預金者が押し寄せ、銀行からお金を引き出そうとしたので銀行や国が保有する金が不足します。金と紙幣の交換が停止されました。また、金がアメリカに集中する現象も起きたため各国は金本位制を維持できず停止に追い込まれます。
各国は自国産業を守るためブロック経済を実施しました。そのため、世界の貿易は大きく縮小します。金本位制が崩壊し、為替レートが不安定になったため貿易にしにくくもなります。
まとめ
1929年におきた世界恐慌は瞬く間に世界中に広がりました。アメリカはニューディール政策、イギリスやフランスはブロック経済政策で世界恐慌を乗り切ろうとします。
それらを持たないドイツ・イタリア・日本ではファシズムが台頭し周辺国に対し軍事的進出を図りました。世界貿易は縮小し金本位制は崩壊。第二次世界大戦の原因が作り出されます。
次の記事は「ファシズムの台頭」についてです。
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