【世界史B】受験に役立つヨーロッパ史(ファシズムの台頭)【近現代編その15】

こんにちは。受験に役立つヨーロッパの歴史シリーズをはじめます。今回の近現代シリーズ第15回は【ファシズムの台頭】を取り上げます。

 

前回は世界恐慌が起こり世の中の経済がめちゃくちゃになった話をしました。詳しくは「【世界史B】受験に役立つヨーロッパ史(世界恐慌)【近現代編その14】」をご覧ください。

 

今回は、その世界恐慌で大打撃を受けた諸国のうち、日本・ドイツ・イタリアなど植民地や資本を「持たざる国」ではファシズムが台頭します。そしてこれらの国々が世界の再分割を要求し、積極的な対外進出を図ります。

(1930年代)

今回の記事のポイント・世界恐慌後、ドイツ・日本ではファシズム勢力が拡大した

・ドイツではヒトラー率いるナチスが政権を獲得した

・ムッソリーニはエチオピア併合を強行した

・スペイン内戦ではドイツ・イタリアの支援を受けたフランコ将軍が人民戦線内閣に勝利

・ドイツは再軍備、ラインラント進駐、オーストリア併合を実行し勢力を拡大

・ミュンヘン会談で、イギリスはドイツに妥協する宥和政策を行い、ズデーテン地方割譲を承認にした

ファシズムの台頭

(全権委任法:wikiより)

ファシズムは20世紀前半にドイツやイタリア、日本などに現れた全体主義のことを指します。ナチスドイツやムッソリーニのファシスト政権、日本の軍国主義などがファシズムだとされます。ファシズムのあらわれ方は各国で異なりますが、独裁権力のもとで議会制民主主義が否定されることや周辺国を侵略した点などが共通しています。

 

第一次世界大戦の結果、ドイツはヴェルサイユ条約を結ばされ巨額の賠償金を背負わされました。イタリアや日本は戦勝国ですが、その後の世界恐慌では各国のブロック経済から締め出され経済的に苦しみます。

 

詳しくは「【世界史B】受験に役立つヨーロッパ史(戦間期のヨーロッパ)【近現代編その12】」をご覧ください。第一次大戦後、ドイツ、イタリアの惨状がわかります。

 

これらの国では既成の政党が支持を失い、国家による経済統制や民族主義、反自由主義、反共産主義などを唱えた政党や勢力が急速に力を増しました。

ドイツにおけるナチスの勢力拡大

(アドルフ=ヒトラー:wikiより)

ドイツはヴェルサイユ条約の賠償金と世界恐慌で苦しみます。その中でヒトラー率いる国家社会主義労働者党(ナチス)の勢力が急拡大します。1928年には12議席だったナチスは1930年に107議席、1932年に196議席、1933年には288議席を獲得し第一党に躍り出ます。

 

1933年に首相に就任したヒトラーは国会放火事件でドイツ共産党を非合法化します。ヒトラーに全権を与える全権委任法を可決させました。1934年、ヒンデンブルク大統領が死去したためヒトラーは大統領と首相を兼任します。総統に就任し国家の全権力を手中におさめます。

 

ヒトラーがドイツ国民の支持を得たのは、ヴェルサイユ体制の打破や植民地の再分配、反ユダヤ主義などを訴えたからです。ドイツ国民は一向に事態を打開できないヴァイマル政府に見切りをつけヒトラーを選んだといってもよいでしょう。

イタリアのエチオピア併合

(エチオピア併合:wikiより)

第一次世界大戦の戦勝国でありながら、イタリアは広大な植民地を持っていませんでした。そのため、世界恐慌の波をまともにかぶってしまい経済的大打撃を負います

 

ムッソリーニは1935年にエチオピアを侵略します。エチオピアはアフリカでは数少ない独立国でした。他国の植民地になっていないエチオピアをイタリアは狙ったのです。1936年、イタリア軍はエチオピアの首都アディスアベバを占領。エチオピア併合を宣言しました

スペイン内戦

(パブロ=ピカソ「ゲルニカ」:wikiより)

1931年、スペインで革命が発生しブルボン王家が倒されました。スペインは共和制となり1936年に左派の人民戦線内閣が成立します。これに不満を持ったのがフランコ将軍でした。フランコは地主や資本家の支持を得てモロッコで挙兵します。

 

モロッコを拠点とするフランコ軍とスペイン本国の共和派が戦ったこの内戦をスペイン内戦といいます。ドイツやイタリアはフランコの反乱軍を支援しました。ゲルニカなどを空爆しました。このゲルニカ空爆を受けてパブロ=ピカソは「ゲルニカ」を作成します。

 

一方、人民戦線側はソ連の支援や各国からの義勇軍の支援を受けます。しかし、イギリスやフランスはスペイン内戦に対し不干渉の立場をとりました。スペインに対するソ連の影響力増大を嫌ったからです。

 

内戦は1936年から第二次世界大戦直前の1939年まで続きますが、ドイツ・イタリアの直接支援を受けたフランコが勝利。人民戦線内閣は崩壊しました。

ドイツの侵略と宥和政策

(ミュンヘン会談:wikiより)

1935年にザール地方が投票によってドイツに編入されます。同年、ヒトラーは徴兵制を復活させ再軍備を宣言します。イギリスとの間で英独海軍協定を締結しました。また、ヒトラーは公共事業を積極的に行い、ドイツ経済を復活させ人々の強い支持を獲得します。

 

1936年、ヒトラーはロカルノ条約を破棄しラインラントに進駐します。ロカルノ条約とはイギリス・フランス・ドイツ・イタリア・ベルギーの5ヶ国における地域的集団安全保障条約のことでしたね。詳しくは「【世界史B】受験に役立つヨーロッパ史(ヴェルサイユ体制とワシントン体制)【近現代編その11】」を見てください。

 

ラインラント進駐はヒトラーにとって大きなかけでしたが、イギリス・フランスが黙認したためラインラント進駐は成功します。さらにヒトラーの支持率が高まりました。

 

1936年、ドイツはイタリアのムッソリーニに接近しベルリン=ローマ枢軸を結成します。これに日本を加えることで三国の結束を強めました。1937年に日独防共協定1940年に日独伊三国同盟が結成され「持たざる国」が手をくみ世界の再分割を要求します。

 

1938年、ヒトラーは同じドイツ民族の国であるオーストリアを併合します。さらにチェコスロヴァキア領のズデーテン地方の割譲を要求しました。イギリス首相ネヴィル=チェンバレンヒトラーに対話を呼びかけます。

 

1938年9月、イギリスのチェンバレン、フランスのダラディア、イタリアのムッソリーニ、ドイツのヒトラーがミュンヘンに集まって会談しました。いわゆるミュンヘン会談です。イギリスはドイツとの衝突を避ける宥和政策の考えに基づき、ヒトラーの要求を受け入れます。

 

1939年、ヒトラーはズデーテン地方のみでは満足せず、チェコスロヴァキアそのものを解体します。ドイツの支配下に置きました。イギリスの宥和政策の失敗は明白でした

 

[L1_wsbStart][L_wsbAvatar]https://wearewhatwerepeatedlydo.com/wp-content/uploads/2019/10/teacher.png[L_wsbName]S先生[L_wsbText]ここはヒトラーが一枚上手でしたね。相手が懐柔してくるならそれに則ってさらに領土拡大をするという戦わずして勝つの極意です。[L_wsbEnd]

 

まとめ

1920年代から30年代にかけて、資本力も植民地も持たない「持たざる国」ではファシスト勢力が強大化します。特にドイツではヒトラー率いるナチスが政権を握りました。

 

ヒトラーは再軍備やラインラント進駐、オーストリア併合を強行。さらに、チェコスロヴァキア領のズデーテン地方の割譲を要求します。イギリスはドイツに妥協する宥和政策の立場から割譲を承認しました。しかし、ヒトラーの侵略はとどまらずチェコスロヴァキアそのものを解体してしまいました。

 

さて、いよいよ次回は第二次世界大戦についてお話しします。ヨーロッパの歴史は次回で終わりです。長かったですね。お楽しみに!

次の記事「第二次世界大戦」についてです。

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