【世界史B】受験に役立つヨーロッパ史(戦間期のヨーロッパ)【近現代編その12】

こんにちは。今回も受験生に役立つヨーロッパの歴史シリーズをはじめます。近現代シリーズ第12回は【戦間期のヨーロッパ】を取り上げます。

 

前回は、「【世界史B】受験に役立つヨーロッパ史(ヴェルサイユ体制とワシントン体制)【近現代編その11】」について述べました。

 

第一次世界大戦後、荒れ果てたヨーロッパは国際協調を軸として立て直しを図っていました。しかし、ドイツの賠償問題やファシズムの台頭など新たな動きもみられるようになります。今回は1920年代のヨーロッパについて解説します。

 

今回の記事のポイント・イギリスでは労働党のマクドナルド内閣が成立した

・フランスではポワンカレ内閣がルール出兵を強行した

・ルール出兵の危機を乗り切ったシュトレーゼマンはレンテンマルクを発行した

・イタリアではファシスト党のムッソリーニが独裁体制を作り上げた

 

1920年代のイギリス

(マクドナルド:wikiより)

まずは、イギリスについて述べます。イギリスは第一次世界大戦で戦勝国となったものの、経済的に大きなダメージを負っていました。1918年の第4回選挙法改正や大戦後の景気停滞などによりイギリスでは労働党が支持を伸ばします。

 

1924年、労働党は自由党と連立します。第一次マクドナルド内閣が成立しました。マクドナルドはソ連を承認し国際協調路線をすすめます。1928年の第5回選挙法改正では男女完全普通選挙を実現しました。

 

長年、イギリスで問題となっていたアイルランドについては、1922年にアイルランド自由国が成立します。1937年には国号をエールと名乗り(アイルランドのゲール語でアイルランドという意味です)事実上の独立国となりました。また、1926年に開かれたイギリス帝国会議で本国と自治領は対等だと定められます。

1920年代のフランス

(ルール出兵:wikiより)

第一次世界大戦で戦場となったフランスは国土の多くが荒廃していました。と同時に、普仏戦争・第一次世界大戦で戦ったドイツの強大化を警戒します。

 

1920年代、フランスの首相は短期間で交代します。注目すべき首相は2人です。一人はヴェルサイユ条約の時に首相を務めたクレマンソー、もう一人は対ドイツ強硬外交を実施したポワンカレです。

 

ポワンカレ内閣は1923年から1925年にかけてベルギーと共同でドイツのルール工業地域を占領します。これをルール出兵といいました。ドイツからの賠償金支払いが滞ったことが占領の理由です。

 

ルール出兵が終わった1925年、外相のブリアンが中心となりロカルノ条約を締結しドイツと関係を改善します。1928年にはブリアンとアメリカ国務長官のケロッグ中心となって不戦条約が結ばれました。フランスは対ドイツ強硬路線から国際協調路線に切り替えます。

 

[L1_wsbStart][L_wsbAvatar]https://wearewhatwerepeatedlydo.com/wp-content/uploads/2019/10/teacher.png[L_wsbName]S先生[L_wsbText]正直、第一次世界大戦でフランスもボロボロだったんですね。[L_wsbEnd]

大戦直後から1920年代のドイツ

(紙のマルク:wikiより)

第一次世界大戦中、ドイツでは戦争協力を拒否する左派がスパルタクス団を結成します。1918年にドイツ共産党となっていました。1919年1月、ベルリン蜂起に失敗し指導者のローザ=ルクセンブルクカール=リープクネヒトが殺害されてしまいました。

 

1919年7月、ドイツではヴァイマール憲法が制定されドイツ共和国が成立しました。1933年にヒトラー政権が成立するまでの期間をヴァイマル共和国とも呼びます。臨時大統領となったのは社会民主党のエーベルトでした。

 

[L1_wsbStart][L_wsbAvatar]https://wearewhatwerepeatedlydo.com/wp-content/uploads/2019/10/teacher.png[L_wsbName]S先生[L_wsbText]ちなみに、このヴァイマール憲法ですが、男女平等の普通選挙の承認に加えて生存権の保障を世界で初めて規定し、20世紀の憲法として大きな意義があります。[L_wsbEnd]

 

1923年、フランスとベルギーがルール出兵を強行するとドイツの労働者たちはゼネストを実施します。ドイツ政府は消極的抵抗と称してゼネストを支援します。しかし、生産がストップしてドイツ経済はマヒ状態となりました。

 

インフレが急速に進み(ハイパーインフレ状態になります)、ドイツ経済が崩壊状態となると立て直しのためシュトレーゼマンが連立内閣を組織し対応にあたります。シュトレーゼマンは賠償を支払う姿勢を見せフランス・ベルギーに国際的非難が集まるよう仕向けました。

 

[L1_wsbStart][L_wsbAvatar]https://wearewhatwerepeatedlydo.com/wp-content/uploads/2019/10/teacher.png[L_wsbName]S先生[L_wsbText]パン1つ買うのにリヤカー1杯のマルクが必要だったそうよ。以下の写真は実際にマルクが紙屑になった写真よ。[L_wsbEnd]

 

 

これに対し、国内の右派は強く反発します。ミュンヘンを中心に勢力を拡大していた国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)のヒトラーがミュンヘン一揆をおこしましたが鎮圧されます。

 

1923年11月、シュトレーゼマンはレンテンマルクを発行。1兆マルクを1レンテンマルクとする通貨改革を断行しました。これによりインフレは急速におさまります。

 

[L1_wsbStart][L_wsbAvatar]https://wearewhatwerepeatedlydo.com/wp-content/uploads/2019/10/teacher.png[L_wsbName]S先生[L_wsbText]シュトレーゼマンは新たな貨幣を創出して危機を乗り切ろうとしたのね。[L_wsbEnd]

 

[L1_wsbStart][L_wsbAvatar]https://wearewhatwerepeatedlydo.com/wp-content/uploads/2019/10/o050_1.png[L_wsbName]A子さん[L_wsbText]しかし、一兆マルクを1レンテンマルクって・・・めちゃくちゃな価値だったんですね。[L_wsbEnd]

 

また、賠償金問題についてもアメリカが提案するドーズ案を採用することで一定のめどがつきます。この結果、アメリカはドイツ経済支援のため出資します。ドイツはアメリカからの融資をもとに経済成長させ賠償金を支払い、イギリス・フランスはアメリカに戦債を支払うという仕組みが出来上がりました。

 

ドーズ案の成立によりルール占領は解消され、ヨーロッパはつかの間の安定を手に入れます。1925年、ドイツ大統領のエーベルトが死去します。かわって第一次世界大戦の英雄であるヒンデンブルクが大統領となりました。

1920年代のイタリア

(黒シャツ隊:wikiより)

第一次世界大戦では戦勝国となったイタリアですが、戦争後にインフレとなって国内経済が悪化します。北イタリアの労働者によるストライキなどもありイタリアの社会は不安定化しました。

 

この状況で勢力を拡大したのがムッソリーニ率いるファシスト党です。ムッソリーニらは社会主義勢力の打倒などを主張します。1922年にローマ進軍を敢行しました。ファシスト党員がローマの中枢部を占領したことを受け、国王はムッソリーニに組閣を命じます。

 

 

 

1924年、ムッソリーニはイタリア人住民が多く住むフィウメをめぐってユーゴスラヴィアに圧力をかけます。その結果、フィウメを併合することに成功し国民の支持を高めました。1926年にはアルバニアの保護国化行います。

 

1928年、ファシズム大評議会が最高機関とされ、ファシスト党による一党独裁体制が完成します。その一方、教皇庁とはラテラン条約を結んで関係を改善します。ヴァチカン市国が成立しました。

 

まとめ

1920年代のヨーロッパ諸国は第一次世界大戦からの復興を模索しました。イギリスではマクドナルド内閣がアイルランド問題や選挙法改正などに取り組みます。フランスでは対ドイツ強硬外交が失敗に終わったのち、国際協調外交が行われます。

 

ドイツはシュトレーゼマンが中心となって賠償問題や通貨問題解決に努めました。イタリアではファシスト党のムッソリーニが勢力を強め、一党独裁体制をつくりあげます。

次回の記事は「1920年代のアメリカについて」です。

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