今回のテーマは、裁判所です。
裁判所の役割・裁判所の種類・三審制の仕組みについてわかりやすく解説しました。
裁判所の種類っていろいろあってどれがどれだかさっぱりわからない。
それに三審制ってイマイチどんな仕組みかわからないなぁ。控訴・上告って難しい言葉も出てくるし。
高校生の僕でも理解できるようにわかりやすく解説してくれているサイトないかな。
この記事は、上記のような悩みに応えます。記事を読めば、裁判所の主要な仕事・裁判所の種類・三審制とは何かをしっかり理解できるでしょう。
また記事の後半には関連する入試問題を用意しています。学習した内容のおさらいもできるので、最後まで読んでみてください。
この記事からわかること
・裁判所とは何をするところなのか
・裁判所の種類
・三審制の仕組み・目的・例外
裁判所とは?
(日本の裁判所:wikiより)
裁判所とは、社会で起きる争いごとを適切に解決へと導くための機関です。
具体的な役割としては、
- 憲法や法律に基づいて公平な立場で裁判をおこなう
- 容疑者に対して有罪・無罪の判決を下す
があげられます。
(三権分立:オリジナル)
日本は上記の図のように、立法権・行政権・司法権をそれぞれ異なる機関がもっています。
三権のうち、司法権をもっているのが裁判所なのです。
裁判所の種類
(最高裁判所:wikiより)
裁判所には、最高裁判所と下級裁判所の2種類があります。
最高裁判所
最高裁判所は、裁判所のなかでも最上級の機関です。
具体的な役割としては、
- 裁判に対して最終的な判決を下す
- 法律・命令・規則・処分が合憲か違憲かの判断をおこなう(違憲法令審査権)
- 下級裁判所の裁判官の指名
- 規則の制定(例:裁判所の内部規律)
があります。
最高裁判所は東京都千代田区にあります。全国で1か所だけしか設置されていません。
最高裁判所のメンバーは、最高裁判所長官1人とその他の裁判官14人で構成されています。
最高裁判所の長官は、内閣の指名に基づいて天皇が任命します。
一方その他の裁判官は、内閣の任命に基づいて天皇が認証します。
下級裁判所
下級裁判所は、
- 高等裁判所
- 地方裁判所
- 家庭裁判所
- 簡易裁判所
の4つです。それぞれの裁判所で扱う事件の内容が異なります。
高等裁判所
高等裁判所は
- 札幌
- 仙台
- 東京
- 名古屋
- 大阪
- 高松
- 広島
- 福岡
の計8か所あります。
主に地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所の裁判に対する不服申し立てを扱っています。
地方裁判所
地方裁判所は、各都府県に1か所ずつ設置されています。面積の広い北海道だけは4か所あります。
地方裁判所が取り扱っているのは、主に請求額が140万円をこえる民事事件・一般的な刑事事件の第一審です。
第一審とは、訴えが起こされた事件について最初におこなわれる裁判(審判)のことを指します。
民事事件とは、簡単にいえば私人間のトラブルのことを指します。個人だけではなく、法人も含まれるのが特徴です。
例としては以下があげられます。
- 金銭の貸し借り
- 交通事故の損害賠償
- 遺産相続
そして民事事件に関する裁判を民事裁判といいます。
一方刑事事件とは、窃盗や詐欺など刑法の適用によって処罰される事件のことです。裁判所は、被告人に対して罪を科すかどうか、量刑をどうするかを決めます。
そして刑事事件に関する裁判を刑事裁判といいます。
家庭裁判所
家庭裁判所も地方裁判所と同様、各都府県に1か所ずつ設置されています。北海道のみ4か所あります。
家庭裁判所が主な業務として取り扱っているのは、家庭に関わる事件の審判・調停です。
具体的には、
- 離婚
- 遺産相続
- 親権
などがあげられます。
また少年事件の裁判も家庭裁判所が扱っています。
簡易裁判所
簡易裁判所は、全国に438か所設置されています。
主に請求額が140万円以下の民事事件や比較的軽い刑事事件を扱っています。
三審制
(東京高等・地方・簡易裁判所:wikiより)
三審制とは
三審制とは、1つの事件につき、原則3回裁判を受けられる制度のことです。日本でも三審制が採用されています。
三審制の目的は以下のとおりです。
- 公正かつ慎重に裁判をおこなうことで裁判の誤りを防ぐため
- 裁判を受ける人の人権を守るため
仮に裁判が1回だけしかおこなわれない場合、事実と異なる判決が下されるリスクが高くなります。
もし事実と異なる判決により、有罪が確定してしまったら、どうなるかを想像してみてください。
より正確な裁判をおこなうために、裁判を3回受けられるようにしているのです。
三審制の仕組み
三審制の流れは、第一審→第二審→第三審です。原則第三審が最終審になります。
第一審の判決が不服の場合、上級の裁判所へ第二審をおこなうよう訴えを起こすことが可能です。
第二審の実施を訴えることを控訴といいます。
控訴をしても第二審の判決に納得できない場合、より上級の裁判所へ第三審をおこなうよう訴えることが可能です。
第三審の実施を訴えることを上告といいます。
民事裁判の場合
(三審制(民事裁判の場合):オリジナル)
民事裁判の場合、第一審は家庭裁判所・地方裁判所・簡易裁判所のいずれかでおこなわれます。
扱う事件は以下のとおりです。
判決が不服の場合は、控訴できます。第二審は、原則高等裁判所でおこなわれます。
ただし第一審が簡易裁判所だった場合は、第二審が地方裁判所になるので注意が必要です。
第二審の判決が不服であれば、上告できます。第三審は、原則最高裁判所でおこなわれます。
ただし第一審が簡易裁判所だった場合は、高等裁判所が第三審になるので気をつけてください。
刑事裁判の場合
(三審制(刑事裁判の場合):オリジナル)
刑事裁判の場合も民事裁判と同様、第一審は家庭裁判所・地方裁判所・簡易裁判所のいずれかでおこなわれます。
扱っている事件はそれぞれ以下をご参照ください。
判決が不服の場合は、控訴できます。第二審は、高等裁判所でおこなわれます。
また第二審の判決が不服であれば、上告をすることが可能です。第三審は、最高裁判所でおこなわれます。
三審制の例外
日本の裁判は三審制が原則ですが、例外もあります。
- 再審制度
- 特別上告
- 跳躍上告
の3つです。
再審制度
再審制度とは、一度確定した判決であっても一定の要件を満たせば裁判のやり直しができる制度のことです。
冤罪(えんざい)を防止するために設けられました。
具体的には、
- 判決確定後に新たな証拠が見つかった場合
- 証拠が虚偽である場合
のように、有罪判決を受けた人の利益になる場合にのみ認められています。
再審制度により無罪を勝ち取った例としては、
- 免田事件(1983)
- 財田川事件(1984)
- 足利事件(2010)
があります。
特別上告
特別上告とは、下記の両方の要件を満たす場合に、最高裁判所へ上告ができる制度です。
- 民事裁判で高等裁判所が第三審になる場合
- 高等裁判所の判決で憲法違反がある場合
特別上告が認められている理由は、憲法第81条に「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」と規定されているからです。
跳躍上告
跳躍上告とは、第一審判決が憲法や法律に違反する可能性のある場合に、控訴審を飛び越して上告できる制度です。
刑事裁判では跳躍上告と呼ばれるのに対して、民事裁判では飛躍上告と呼ばれます。
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓒ(裁判手続)に関して、日本の裁判制度に関する次の文章中の【A】~【C】に入る語句の組合せとして最も適当なものを、下の①~⑧のうちから一つ選べ。
憲法の規定を受けて、裁判所法は、高等裁判所や地方裁判所、【A】などを下級裁判所として定めている。また、憲法の実効性を確保するため、【B】が法令などの憲法適合性を審査する権限をもつとされている。しかし、高度に政治的な問題について裁判所は判断すべきではないという考え方もあり、一般に、その理論は「【C】論」と呼ばれている。
① A 簡易裁判所 B すべての裁判所 C 統治機構
② A 簡易裁判所 B すべての裁判所 C 統治行為
③ A 簡易裁判所 B 最高裁判所のみ C 統治機構
④ A 簡易裁判所 B 最高裁判所のみ C 統治行為
⑤ A 特別裁判所 B すべての裁判所 C 統治機構
⑥ A 特別裁判所 B すべての裁判所 C 統治行為
⑦ A 特別裁判所 B 最高裁判所のみ C 統治機構
⑧ A 特別裁判所 B 最高裁判所のみ C 統治行為
A:下級裁判所には、高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所があります。なお特別裁判所の設置は、日本国憲法で禁止されています。司法権の独立についてはこちらの記事「司法権の独立とは?2つの意味をわかりやすく解説(入試問題付き)【政治第21回】」もあわせてご覧ください。
B:日本国憲法は最高裁判所だけではなく、すべての裁判所に違憲法令審査権を与えています。
C:高度に政治性を有する行為については憲法判断を控えるべきとする考え方を統治行為論といいます。統治行為論により憲法判断を回避した例としては、百里基地訴訟や砂川事件などが挙げられます。統治行為論について詳しく学習したい方はこちらの記事「平和主義についてわかりやすく解説(判例・入試問題も解説)【政治第16回】」も読んでみてください。
まとめ
ここまで裁判所の役割・裁判所の種類・三審制の仕組みについて解説しました。今回のおさらいです。
- 裁判所は、社会で起きる争いごとを公平な立場で解決へと導くための機関。
- 裁判所には、最高裁判所と下級裁判所の2種類がある。下級裁判所は高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所の4つに分かれている。
- 三審制とは、判決が不服な場合、原則3回まで裁判を受けられる制度。
この記事を読んで裁判所の種類・三審制の概要をしっかりマスターしていただければと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「内閣の仕組み・権限についてわかりやすく解説(入試問題も解説)【政治第19回】」をご覧ください。
次回の記事「司法権の独立とは?2つの意味をわかりやすく解説(入試問題付き)【政治第21回】」をご覧ください。
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