みなさん、こんにちは。今回のテーマは新しい人権です。
知る権利・アクセス権・プライバシーの権利のように、憲法には明文化されていない人権について判例付きでわかりやすく解説しました。
また記事の後半では入試問題も用意しています。学習した内容をおさらいできるので、ぜひ最後までお読みください。
この記事からわかること
・新しい人権とは何か・種類
・新しい人権に関連する重要判例
新しい人権とは
(新しい人権:オリジナル)
新しい人権とは、憲法には明文化されていないものの、憲法上の権利として保障すべきだと主張されている権利です。
主な例としては、知る権利・アクセス権・プライバシーの権利・環境権があります。
知る権利
知る権利とは、国や地方公共団体に対して情報の開示を請求できる権利です。憲法第1条の国民主権や、同第21条の表現の自由を根拠に主張されています。
知る権利に対する侵害への対策として1999年には情報公開法が成立し、国の行政機関に文書の開示を義務づけました。地方レベルでは47都道府県すべてで情報公開条例が制定されています。
知る権利に関する判例として代表的なのが、外務省公電漏えい事件です。
記者Xは親密な関係だった外務省の事務官Yから秘密文書を入手したところ、Xは秘密漏えいをそそのかした罪、Yは守秘義務違反でそれぞれ起訴されました。
Yは一審で有罪判決が確定しましたが、Xは最高裁まで争います。
最高裁は、秘密文書を手に入れるためにYに接近したXの行為は正当な取材活動の範囲を逸脱していて違法であると結論づけ、Xに有罪判決を言い渡しました。
外務省公電漏えい事件からおさえておきたいポイントは以下の2つです。
アクセス権
アクセス権とは、マス=メディアに対して意見広告や反論記事の掲載を要求できる権利です。憲法第21条で規定されている表現の自由を根拠に主張されてきました。
アクセス権に関する判例には、サンケイ新聞意見広告事件があります。
サンケイ新聞は紙面上に自民党の意見広告を掲載しました。すると共産党は掲載された意見広告が党に対する誹謗中傷にあたるとして、反論文の掲載を求めて新聞社相手に訴えを起こします。
1987年に最高裁は、具体的な成文法がない以上、反論文掲載請求権を認めることはできないとして共産党の訴えを退けました。
プライバシーの権利
プライバシーの権利とは、当初私生活をみだりに公開されない権利と解釈されてきました。
しかし現在では、自己に関する情報をコントロールする権利としても考えられています。
プライバシーの権利は憲法第13条の幸福追求権を根拠に主張されてきました。
プライバシーの権利に関する判例には、「宴のあと」事件と「石に泳ぐ魚」事件の2つがあります。
「宴のあと」「石に泳ぐ魚」どちらも小説内で特定の人物をモデルにしたとわかる内容が書かれており、原告のプライバシー権を侵害しているとして裁判で争われました。
最高裁はいずれの事件でも損害賠償請求を認めています。
とくに「宴のあと」事件は、はじめてプライバシーの権利が認められた裁判なので、覚えておきましょう。
環境権
環境権とは、良好な生活環境を享受できる権利です。憲法第13条の幸福追求権と同第25条の生存権を根拠に主張されてきました。
最高裁は環境権を認めていないものの、国は1997年に環境アセスメント法を制定するなど環境汚染・破壊への対応を進めています。
環境権に関する判例としては、大阪空港公害訴訟があります。
大阪空港公害訴訟とは、大阪空港周辺の住民が離着陸時の騒音により睡眠妨害などの被害を被っているとして、国に対して夜間飛行差し止めと損害賠償を求めた裁判です。
最高裁は過去に被った損害への賠償請求を認めた一方、将来の損害賠償と夜間飛行の差し止め請求は却下しました。
最高裁の判例では環境権を憲法上の権利として認めていないものの、損害賠償請求が認められたケースはあるということを理解しておいてください。
今回の範囲はここまでです。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。
入試問題にチャレンジ
問1 下線部ⓓ(新しい人権)として日本で主張されている次の権利の名称A、Bと、それらに対応する記述ア~ウとの組合せとして最も適当なものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。
A 知る権利
B プライバシーの権利
ア 自らの情報が勝手に利用されないように、その情報をコントロールする。
イ 患者が自己の宗教的信念に基づいて、輸血を拒否する。
ウ 税金の使途が適切かどうかを確認するため、国に対して情報の公開を求める。
① A-ア B-イ
② A-ア B-ウ
③ A-イ B-ア
④ A-イ B-ウ
⑤ A-ウ B-ア
⑥ A-ウ B-イ
問2 下線部ⓓ(権利)に関して、日本における人権に関する記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 日本国憲法では、刑事被告人が弁護人を依頼することができるとは、規定されていない。
② 日本国憲法では、抑留または拘禁された後に裁判で無罪となったとしても、その人が国に補償を求めることができるとは、規定されていない。
③ アクセス権とは、マスメディアを通じて、自分の意見を表明する権利として、主張されているものである。
④ プライバシーの権利は、新しい人権として主張されているが、裁判所の判決では認められていない権利である。
(2020年 センター試験 本試験 現代社会 第1問 問7より)正解:② 参議院議員の被選挙権年齢は30歳で、衆議院議員の被選挙権年齢は25歳ですが、同規定に対して違憲判決は出ていません。
問3 下線部ⓗ(基本的人権などさまざまな権利の保障)をめぐる日本の現状についての記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 経済および産業の発展を図るために特許権などの知的財産権の付与を行う行政機関は、設置されていない。
② 最高裁判所が環境権を認めていないため、公害被害を受けた市民の損害賠償請求は認められていない。
③ 情報公開法は、プライバシーの権利を積極的に実現することを目的として制定されている。
④ 公務員の違法な権限行使により損害を受けた者は、国または地方公共団体に対して損害賠償を請求することができる。
まとめ
今回は新しい人権について解説しました。
知る権利・アクセス権・プライバシーの権利・環境権がどのような権利なのか一つひとつ覚えていきましょう。
新しい人権に関する判例についても、この記事を読んで理解を深めていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「参政権・請求権についてわかりやすく解説(入試問題付き)【政治第14回】」をご覧ください。
次回の記事「憲法第9条に関連する判例についてわかりやすく解説(入試問題も用意)【政治第16回】」をご覧ください。
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