みなさん、こんにちは。「数学IA」の今回のテーマは、絶対値と平方根です。中学数学で習った基礎から少し発展させた、数の概念を学びます。
ここでは、数学のテストで安定して得点できるようになるために、絶対値と平方根について基礎から応用へとステップを踏んで説明します。具体的には初歩的な説明から大学入試に耐えうる問題まで出題します。
数学が苦手な人は、始めは基礎の部分だけを克服して、苦手意識が払拭できてきたら徐々に応用に進んでもいいでしょう。
まずは、各カテゴリーで少しずつでも得点し、試験でどんな範囲が出ても安定的に得点できるようにすることが目標です。次のステップでは、入試対策として苦手な科目やカテゴリーを戦略的に克服して、できるだけ満点に近づけるように持っていきましょう。
絶対値と平方根は、数の基本的な概念の一部です。特に二次試験では、この分野を踏まえて、不等式や二次方程式、さらにはそれを証明する問題として出題されます。ただ、解法において重要なことはあまり多くないので、例題を繰り返し練習して、きちんと理解しておきましょう。
まずは、絶対値から!
はじめに、絶対値の定義です。
絶対値とは、数直線上で原点\(O\)からある点までの距離のことです。図示すると、
例を見てみましょう。
\(|3| = 3\) 3の原点からの距離 \(=3\)
\(|-5| = 5\) -5の原点からの距離 \(=5\)
距離なので、負の数はありません。
絶対値をはずすには?
さて、絶対値に関する問題は、まず絶対値をはずすのが基本です。
絶対値の中身が数字の場合は、絶対値の中身が正ならばそのまま、負ならば正にしてしてはずします。つまり、\(+\)や\(-\)の符号を取るだけ。これは難しくないと思います。
\(|6|= 6\)
\(|-2|=2\)
文字の絶対値をはずすときは場合分け!
絶対値の中身が文字のときも、難しく考える必要はありません。絶対値の中身が正か負かに注意することが大事です。
\(|x|\)の絶対値をはずすとき。
\(x\geq0\) のとき \(|x|=x\)
\(x<0\) のとき \(|x|=-x\)
\(x<0\) てどういうこと??。
絶対値をはずすときは、絶対値の中身が正ならばそのまま、負ならば正にしてしてはずします。\(x\)は負の数なので、正にするには符号を逆転させる、つまり\(-\)(マイナス)をつけます。\(x\)が負の数なので、\(-x\)は正の数です。
次はちょっと発展させます。\(|x-4|\)の絶対値をはずしてみましょう。
\(x-4\geq0\) つまり、\(x\geq4\) のとき \(|x-4|=x-4\)
\(x-4<0\) つまり、\(x<4\) のとき \(|x-4|=-(x-4)=-x+4\)
では、例題です。
例題(1) \(|-1|+|4|\) (2) \(|3\sqrt{7}-8|\) (3) \(|x^2+1|\)
(4) \(|\pi-4|+|3-\pi|\) (5) \(|x-2|+3|x+4|\)
どうですか?できましたか?実際答え合わせをしてみましょう。
(2) は少し難しいので解説します。
\(3\sqrt{7}\)と\(8\)のどちらの数が大きいかが、ポイントになります。
覚えていなくても比較する方法があります。もちろん\(\sqrt{7}\)の近似値で計算して比較しても問題ありませんが、計算する時間もかかるし、比較する値同士がかなり近い値であればあるほど、危険です。
そこで、両方の値を二乗する方法をとります。
\((3\sqrt{7})^2=9×7=63\)
\(8^2=64\)
よって、\(8>3\sqrt{7}\) なので、
よって\(|\pi-4|+|3-\pi|=-(\pi-4)-(3-\pi)=1\)
(5) はまた、少し難しいので解説をします。
絶対値をはずすときは、中身の符号で場合分けするんでしたね。
前半の絶対値は、
\[
|x-2| = \begin{cases}
\text{\(x-2\geq0\) のとき、つまり\(x\geq2\) のとき} & (x-2) \\
\text{\(x-2<0\) のとき、つまり\(x<2\)のとき} & -(x-2)
\end{cases}
\]
後半部分は、以下のようになります。
\[
3|x+4| = \begin{cases}
\text{\(x+4\geq0\) のとき、つまり\(x\geq -4\) のとき} & 3(x+4) \\
\text{\(x+4<0\) のとき、つまり\(x<-4\) のとき} & -3(x+4)
\end{cases}
\]
以上、これをまとめます。慣れるまでは図示するのが確実です。
前半・後半をまとめると、場合分けは\(3\)種類になることがわかります。
(5)の解答は以下の通りになります。
\[
|x-2|+3|x+4| = \begin{cases}
\text{\(x<-4\) のとき} & -(x-2)-3(x+4)=-4x-10 \\
\text{\(-4\leq x<2\) のとき} & -(x-2)+3(x+4)=2x+14 \\
\text{\(x\leq2\) のとき} & (x-2)+3(x+4)=4x+10
\end{cases}
\]
ちなみに、場合分けのときの\(=\)ですが、どちらか片方につけて\(x<a\)と\(x\geq a\)としても、両方につけて\(x\leq a\)と\(x\geq a\)としても構いません。ただ、どちらにも\(=\)がないと、\(x=a\)のときの場合分けがないことになりますから、注意が必要です。
絶対値が理解できたら、平方根にとりかかりましょう。
平方根って何?
平方根という言葉は、主に「\(a\)(正の数)の平方根」というように使います。定義は、「二乗すると\(a\)になる数」です。正のものと負のものの\(2\)個があり、それぞれ\(\sqrt{a}, -\sqrt{a}\)と表します。
少し理解を深く掘り下げていきましょう。
二乗すると負の数になる数は、実数範囲では存在しません。つまり、負の数の平方根は存在せず、\(a\)は常に正の数でなければなりません。(さらに高等な数学に発展すると、二乗すると負の数になる「虚数」という数もあります。ただ、概念的な数で、現実には存在しません。)
さらに、二乗の平方根\(\sqrt{a^2}\)について考えます。
\(\sqrt{a^2}\) は、マイナスの符号がついていないので、二乗して\(a^2\)になる数のうち、正の方のみを表します。二乗して\(a^2\)になる数は、\(a\) と\(-a\) があります。\(\sqrt{a^2}\) は、その二つのうち、正の方のことです。
場合分けしてみましょう。
\(a>0\) であれば、正の方は\(a\) になりますが、\(a<0\) の場合、正の方は\(-a\) です。よって、
\[
\sqrt{a^2} = \begin{cases}
\text{\(a\geq0\) のとき} & \sqrt{a^2}=a \\
\text{\(a<0\) のとき} & \sqrt{a^2}=-a
\end{cases}
\]
簡単な例題で理解しましょう。
例題
\(\sqrt{(-3)^2}\) を計算せよ。
上の場合分けを適用してみます。
ルートの中身が負の数なので、\(\sqrt{a^2}=-a\)を使います。
\(\sqrt{(-3)^2}=-(-3)=3\)
順を追って計算してみます。
\(\sqrt{(-3)^2}=\sqrt{9}=\sqrt{3^2}=|3|=3\)
上の場合分けは、絶対値を使って、以下のようにもまとめられます。
\(\sqrt{a^2}=|a|\)
最後に、理解を深める例題です。
例題\(\sqrt{x^2+4x+4}+\sqrt{4x^2-12x+9}\) を計算せよ。
\begin{eqnarray}
\sqrt{x^2+4x+4}+\sqrt{4x^2-12x+9}&=&\sqrt{(x+2)^2}+\sqrt{(2x-3)^2}\\
&=&|x+2|+|2x-3|
\end{eqnarray}
この絶対値の計算には場合分けが必要でしたね。絶対値の計算は上の絶対値の例題(5)で3つの場合に場合分けしましたよね。理解できない人はもう一度上の絶対値の計算を解き直してみましょう。
\[
|x+2|+|2x-3| = \begin{cases}
\text{\(a\geq\frac{2}{3}\) のとき} & (x+2)+(2x-3)=3x-1 \\
\text{\(-2\geq a<\frac{2}{3}\) のとき} & (x+2)-(2x-3)=-x+5 \\
\text{\(a<-2\) のとき} & -(x+2)-(2x-3)=-3x+1
\end{cases}
\]
最後の例題は、過去に入試で出された問題です。実際の問題では、解法の流れは与えられていていくつかの数字が穴埋め式になっていましたが、決して難しい問題ではないので、計算問題として解いてみましょう。
例題\(A\)を求めよ。
\(A=\sqrt{9a^2-6a+1}+|a+2|\) [2019 センター試験]
$$A=\sqrt{9a^2-6a+1}+|a+2|=\sqrt{(3a-1)^2}+|a+2|=|3a-1|+|a+2|$$
よって、
\[
A = \begin{cases}
\text{\(a\geq\frac{1}{3}\) のとき} & (3a-1)+(a+2)=4x+1 \\
\text{\(-2\geq a<\frac{1}{3}\) のとき} & -(3a-1)+(a+2)=-2a+3 \\
\text{\(a<-2\) のとき} & -(3a-1)-(a+2)=-4x-1
\end{cases}
\]
例題は以上です。
場合分けがやっかいですが、ルールは単純です。慣れないうちは、面倒くさがらず図示して解くのが、回り道に見えて近道です。繰り返し練習して、確実に解けるようにしておきましょう。
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