みなさん、こんにちは。今回は数学IAの【三角比】について勉強します。


よくわかりませんね…
新しいことのように聞こえますが、こちらもこれまでに習った直角三角形の性質を基礎として、少し発展させた内容にすぎません。
今回の記事は中学の直角三角形の比を復習して三角比とは何か定義を明らかにしつつ、三角比の性質についての解説していきます。
受験で必須の知識なので、三角比はしっかりとマスターしましょう!
三角比とは?
中学校では、ある特定の三角形における、辺の長さや角度の関係を学びました。そこで、中学の復習ですが直角三角形の比について見ていきましょう。
(1) 3つの角が45°・45°・90°の直角三角形の3辺の長さの比は、1:1:√2
(2) 3つの角が30°・60°・90°の直角三角形の3辺の長さの比は、1:√3:2
(3) 直角三角形の3辺の長さの関係は、a2+b2=c2
高校数学1Aでは、この内容を、もっと広い範囲に適用できるように発展させます。上では直角三角形に限定していましたが、直角三角形以外の三角形では、辺の長さや角度にどのような関係があるのかを考えます。つまり、辺の長さと角度を結びつける新しい概念を取り入れます。
三角形は、例えば鋭角θ を持つ直角三角形など、同じ形でも大きさが違うという相似なものがたくさん存在します。
辺の長さと角度の関係を考えるにあたって、辺の長さをそのまま使って考えると、いろんな大きさの三角形が出てくるたびに、新しい定義が必要になってきます。


辺の長さの比です。比を使えば、辺の長さに影響されずに、辺の長さや角度の関係を表すことができます。この考えに基づいて、3辺のうちの2辺ずつを用いた比を、分数の形で定義したのが三角比です。
これは定義です。つまり、覚えることです。この定義を覚えないと先には進めません。


それぞれの初めのアルファベットを、筆記体で、三角形を囲むように書いてみます。
最初に通る辺が分母、次に通る辺が分子になります。このとき注意するのが三角形の配置です。正弦・余弦・正接など、求める角を左下にします。その右に直角の角を置き、残りの角が頂点になるようにします。この配置を間違えると、この後正しく計算できません。
また、30°・45°・60°くらいは、値も思い出せるようにしておきましょう。三角形を思い出せば、今ある知識で導き出せます。
例えば、
といった具合です。ここまで、三角比の定義について説明しました。
三角比を図にしてみると…
これまでの定義では、直角三角形についてのみ考えていたので、sinθ・cosθ・tanθ において、θ が鋭角(0°<θ<90°)と限定されていました。
これをさらにどんな角度にも適用できるように、定義を拡張します。三角比をさらに深く考えるにあたって、どのような三角形を使って考えるのが、楽に考えられるでしょう?

定義では、三角比はすべて分数で表されていました。分数の分母が1 なら、つまり斜辺の長さが1 なら、sinθ=対辺斜辺,cosθ=底辺斜辺 は、それぞれ対辺と底辺の長さで表されます。
よって、角度θ の角を原点に置き、斜辺1 の三角形を考えます。θ を変化させると、原点を中心とする半径1 の円ができます。これを単位円と呼びます。
図からわかるように、斜辺と円の交点P の座標は、斜辺の長さが1 なので、P(cosθ,sinθ) となります。cosθ,sinθ の値が座標(x,y) として求められます。
よって、単位円を用いると、三角比は下のように定義されます。
長さが1 でx 軸正方向からの回転角θ の線分と、単位円の交点P の座標は(cosθ,sinθ)
単位円の考えを取り入れることによって、θ は鋭角に限定される必要がなくなり、三角比の定義が拡張されました。
例題sin120° , cos120° の値を求めよ。
単位円を描いてみます。
図を描いてみると、これまで習った知識で解けることがわかります。ピンクの直角三角形に注目して、辺の長さの比から求めます。斜辺の長さが1 であることから、答えは、
単位円を用いて、sinθ やcosθ がどのように表されるかはわかりました。では、tanθ はどのように表されるでしょうか?


tanθ=対辺底辺 なので、分母を1 にするということは、底辺の長さを1 にするということです。底辺の長さが1 の直角三角形で考えると、tanθ は対辺の長さと一致します。座標を描くと、
θ を鋭角から鈍角まで拡張した場合を、120° を例に考えてみると、
上図のように、120° の場合も、60° の知識から求められることがわかります。
三角比ってどういう性質があるの?
次は、定義から導き出される性質を説明します。教科書では公式と表されているかもしれません。


3つの三角比の関係について
3つの三角比、sin,cos,tan の関係は以下のようになっています。
では上から順に証明します。
まずは、tanA=sinAcosA から証明しましょう。
上の図の△ABC において、
sinA=ac,cosA=bc より、a=csinA,b=ccosA ⋯(ア)
ここで、tanA=ab に(ア)の両式を代入すると、
tanA=csinAccosA=sinAcosA
他の2つの角についても、同様に証明されます。

次は、sin2A+cos2A=1 について証明します。
上図の△ABC において、三平方の定理より、a2+b2=c2
これに、(ア)の両式を代入して、
c2sin2A+c2cos2A=c2
両辺をc2 で割ると、
sin2A+cos2=1 ⋯(イ)
この式は、sinA とcosA の関係を示しています。
残りの2式、1+tan2A=1cos2A,1+1tan2A=1sin2A については、(イ)の両辺をそれぞれcos2A,sin2A で割ることで導かれます。
∠A≠90° のとき、(イ) の両辺をcos2A で割ると、
sin2Acos2A+cos2Acos2A=1cos2A
tanA=sinAcosA より、1+tan2A=1cos2A が導かれます。これは、cosA とtanA の関係を示しています。
∠A≠0°,180° のとき、(イ) の両辺をsin2A で割ると、
sin2Asin2A+cos2Asin2A=1sin2A
ここでも、tanA=sinAcosA より、1+1tan2A=1sin2A となり、これは、sinA とtanA の関係を示しています。
例題を解いてみましょう。
例題0°≦θ≦180° とする。sinθ=1517 のとき、cosθ,tanθ を求めよ。
sinθ から、cosθ を求めるときは、sinθ とcosθ の関係を表す式を使います。
sin2θ+cos2θ=1 より、
$
cosθ=±√1−sin2θ=±√1−(1517)2=±√64289=±817
$
$
tanθ=sinθcosθ=1517±817=±158
$
余角90°−θ と補角180°−θ を考えてみる!
90°−θ、180°−θ のことを、それぞれ余角、補角と呼びます。特に名前を覚える必要はありません。下の図で位置関係を表します。
余角・補角の三角比も、θ の三角比から求められます。

《 余角の公式 》
{sin(90°−θ)=cosθcos(90°−θ)=sinθtan(90°−θ)=1tanθ
《 補角の公式 》
{sin(180°−θ)=sinθcos(180°−θ)=−cosθtan(180°−θ)=−tanθ
まずは余角の公式から証明します。文字は上の余角・補角の図と対応していますので、わかりにくいときは図と照らし合わせながら、以下を読んでください。
直角三角形を用いた三角比の定義より、sinθ=yr、cosθ=xr、tanθ=yx
直角三角形の一つの角がθ であるとき、もう一つの鋭角は90°−θ と表されるので、90°−θ の角に注目して三角比を求めると、
sin(90°−θ)=xr、cos(90°−θ)=yr、tanθ=xy
よって、
{sin(90°−θ)=xr=cosθcos(90°−θ)=yr=sinθtan(90°−θ)=xy=1yx=1tanθ
以上より、余角の公式について証明されました。
次は、補角の公式を証明します。
単位円を用いた三角比の定義より、回転角θ のときの座標を(x,y) とすると、cosθ=x,sinθ=y
回転角180°−θ のとき、座標はy 軸に対して対称となるため、(−x,y) となる。よって、
{sin(180°−θ)=y=sinθcos(180°−θ)=−x=−cosθ
これらを使って、
$
tan(180°−θ)=sin(180°−θ)cos(180°−θ)=sinθ−cosθ=−tanθ
$
以上より、補角の公式についても証明されました。
では、余角と補角の公式の考え方を応用した例題です。
例題sin(90°+θ),cos(90°−θ),tan(90°−θ) を、sinθ,cosθ,tanθ を使って表せ。
単位円を描いて、どこが対称になっているかを考えても求められますが、ここでは式変形を使った方法で解いてみます。
{sin(90°+θ)=sin{180°−(90°−θ)}=sin(90°−θ)cos(90°+θ)=cos{180°−(90°−θ)}=−cos(90°−θ)tan(90°+θ)=tan{180°−(90°−θ)}=−tan(90°−θ)
よって、答えは、
\cos (90°+\theta)=-\sin \theta
\tan (90°+\theta))=-\dfrac{1}{\tan \theta}
以上です。
まとめ
今回は、暗記する式がたくさん出てきました。こういうときは、式とにらめっこしたり、何度も書いたりして覚えるよりも、練習問題で繰り返し使ってみるのが一番です。
最初は、公式を見ながらじゃないと何もできないかもしれませんが、何度も使っているうちに、公式を覚えられるのはもちろん、どういうときにどの公式を使うのがいいのかの判断もできるようになって、一石二鳥です。一緒に頑張りましょう!
前回は、二次不等式について学びました。二次不等式については「【数学IA】二次不等式をマスターしましょう!」を詳しくみてください。

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