みなさん、こんにちは。今回のテーマは、地方自治です。
地方自治が民主主義の学校と呼ばれている理由や地方自治の本旨とは何か、住民自治と団体自治の違いについてわかりやすく解説しました。
この記事は、上記のような悩みに応えます。記事を読むだけで地方自治の基礎が学べますよ。
また記事の後半には関連する入試問題を用意しています。学習した内容の復習もできるので、最後まで読んでみてください。
この記事からわかること
・地方自治とは何か
・地方自治の本旨
・住民自治と団体自治の違い
・直接請求権の種類
地方自治とは
地方自治とは、住民の身近な問題を住民みずからの手で解決するための仕組みです。
かつてイギリスの政治家ブライスは、「地方自治は民主主義の学校である」と述べました。
住民が地域の自治に参加することで、民主政治の担い手として必要な能力を身につけられるという意味です。
地方自治は民主主義を活性化させるための原動力だと考えてください。
大日本帝国憲法には、地方自治に関する規定が一切ありませんでした。そこで日本国憲法では、憲法上の制度として地方自治を厚く保障しています。
第92条には以下のように規定されています。
本旨とは、本来の目的のことを指します。地方自治の本旨は、以下の2つです。
- 団体自治
- 住民自治
団体自治
団体自治とは、国から独立した団体が地方政治を運営することです。
権力を中央と地方に分けることで、中央政府に権力が集中するのを防止するねらいがあります。
地方公共団体の仕組み
地方自治をおこなうのは、地方公共団体(地方自治体)と呼ばれる機関です。
地方公共団体には、議決機関である議会と執行機関である首長が置かれています。団体自治に基づいて、財産の管理や事務処理、条例の制定をしています。
司法機関は設置されていません。
議会は一院制です。主に条例の制定・改廃、予算の議決などをおこなっています。議員は住民の直接選挙で選ばれます。任期は4年です。
首長も住民の直接選挙で選ばれます。任期も同じ4年です。条例の執行や議案・予算の議会への提出、規則の制定などをおこないます。
議会は首長に対する不信任決議権がある一方、首長は議会の解散権・拒否権をもっています。
条例の制定・改廃や予算の議決について異議がある場合は、再議に付すことが可能です。
出席議員の2/3以上の賛成で再議決すれば議決は確定します。
住民自治
住民自治とは、地方政治が住民の意思に基づいておこなわれることです。
住民自治を実現するため、地域住民にはさまざまな地方参政権が認められています。
具体例としては、以下のとおりです。
- 地方公共団体の長や議員の直接選挙
- 直接請求権
- 住民投票の実施
とくに直接請求権が導入されているのが大きな特徴です。
直接請求権とは、有権者の一定数以上の署名により、地方公共団体の重要事項について直接請求できる権利のことを指します。
直接請求権の種類は、
- イニシアティブ(住民発案):条例の制定・改廃請求権・事務の監査請求権
- リコール(住民解職):議会の解散請求権・解職請求権
- レファレンダム(住民投票):地方特別法制定時の住民投票など
があります。
必要な署名数や取り扱いは、下記の表にまとめているので、チェックしてみてください。
直接請求権の種類(オリジナル)
また1990年代後半から、住民投票条例による住民投票が各地でおこなわれるようになりました。
投票結果に法的拘束力はありませんが、住民投票は住民の意思を地方の行政に反映させる有効な手段です。
なかには中学生や定住外国人の住民投票を認めている地方公共団体もあります。
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓑ(地方自治)に関連して、生徒Yは、日本国憲法が保障している地方自治について調べ、次の文章のようにまとめた。文章中の空欄【ア】~【ウ】に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。
日本国憲法第92条は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」としている。ここでいう地方自治の本旨は、団体自治と住民自治の原理で構成される。団体自治は、国から自立した団体が設立され、そこに十分な自治権が保障されなければならないとする【ア】的要請を意味するものである。住民自治は、地域社会の政治が住民の意思に基づいて行われなければならないとする【イ】的要請を意味するものである。国から地方公共団体への権限や財源の移譲、そして国の地方公共団体に対する関与を法律で限定することなどは、直接的には【ウ】の強化を意味するものということができる。
① ア 集権 イ 自由主義 ウ 住民自治
② ア 集権 イ 自由主義 ウ 団体自治
③ ア 集権 イ 民主主義 ウ 住民自治
④ ア 集権 イ 民主主義 ウ 団体自治
⑤ ア 分権 イ 自由主義 ウ 住民自治
⑥ ア 分権 イ 自由主義 ウ 団体自治
⑦ ア 分権 イ 民主主義 ウ 住民自治
⑧ ア 分権 イ 民主主義 ウ 団体自治
ア:「国から自立した団体」に「十分な自治権が保障されなければならない」と書かれているので、「分権」が正解です。分権とは、「権」力を「分」けることを指します。権力を中央と地方に分け、1か所に集中させるのを防ぐのが団体自治のねらいです。
イ:空欄の直前に「地域社会の政治が住民の意思に基づいて行われなければならない」と書かれているので、「民主主義」が正解です。ちなみに自由主義とは、個人の自由な活動を尊重すべきとする思想のことです。ウ:空欄の直前には「国から地方公共団体への権限や財源の移譲」「国の地方公共団体に対する関与」とあるように、住民ではなく地方公共団体に関する内容が書かれています。よって「団体自治」が正解です
まとめ
今回は、地方自治について解説しました。本記事で学習した内容のまとめです。
- 「地方自治は民主主義の学校である」=住民が地域の自治に参加すれば、民主政治の担い手として必要な能力を身につけられるという意味を表している。
- 団体自治とは、国から独立した団体が地方政治を運営すること。一方住民自治とは、住民の意思に基づいて地方政治をおこなうこと。
- 直接請求権には、イニシアティブ・リコール・レファレンダムの3つがある。
この記事を読んで、地方自治について理解を深めていただけると幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「裁判員制度とは?陪審制や参審制との違いについてわかりやすく解説【政治第22回】」をご覧ください。
次回の記事「地方分権改革についてわかりやすく解説(入試問題も用意)【政治第24回】」をご覧ください。
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