民主政治の基本原理(権力分立など)についてわかりやすく解説【政治第3回】

今回は、人権保障・国民主権・権力分立・法の支配といった民主政治の基本原理を取り上げます。

 

立憲主義とは何か・モンテスキューの思想・法の支配と法治主義の違いなど幅広い内容を解説しました。

 

最後には入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。

この記事からわかること

・近代憲法の目的

・民主政治の基本原理とは何か

・権力分立について~ロックとモンテスキューそれぞれの権力分立論~

・法の支配とは・法治主義との違い

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近代憲法の役割とは

(憲法:wikiより)

近代憲法は、国民ではなく国家権力を制限する役割を担っています。

 

国家は軍事・警察権や刑罰権といった巨大な強制力を独占している組織です。ゆえに国家が政治権力を濫用(らんよう)して国民の権利や自由を侵害しないよう、憲法により国家の暴走に歯止めをかけているわけですね。

 

このように憲法によって国家権力を制限し、国民の権利・自由を守ろうという思想立憲主義といいます。

 

憲法の最大の目的は人権保障です。その目的を達成するために国家権力を制限する手段として、国民主権権力分立法の支配があります。

 

そして人権保障・国民主権・権力分立・法の支配の4つこそが近代民主政治の基本原理というわけです。

近代民主政治の基本原理

(フランス人権宣言:wikiより)

人権保障~基本的人権の成立~

(アメリカ独立宣言:wikiより)

 

田中くん
田中くん

憲法の最大の目的が人権保障なのはわかったけど、そもそも人権って何?

 

 

人権とは、性別・国籍・民族などに関係なく、人間が生まれながらにして持っている生来の権利であり、たとえ国家であっても絶対に侵害できない永久不可侵の権利です。

 

人権が生来かつ永久不可侵であるとする考え方は、市民革命の時代に出された人権宣言によって確立されました。

 

主な人権宣言には、アメリカ独立革命でのバージニア権利章典アメリカ独立宣言(いずれも1776年)、フランス革命でのフランス人権宣言があります。

 

近代憲法は、こうした人権宣言によって打ち出された原理を取り入れ、国民の基本的人権を保障しました。

 

しかし、憲法で人権を保障しても国家権力を行使する方法がそのままだと権力が濫用されてしまいます。そこで登場するのが国民主権の考え方です。

国民主権

(議会:wikiより)

国民主権とは、国政の最終決定権が国民にあるとする考え方です。国民の意思に基づいて政治を進めていこうという発想ですね。

 

そして国民主権を実現させるための制度が間接民主制です。間接民主制とは、国民が選挙で選んだ代表者によって政治が行われる仕組みを指します。

 

S先生
S先生
間接民主制とは対照的に、国民が直接政治に参加する仕組み直接民主制です。

権力分立

ロックとモンテスキューの権力分立論(オリジナル)

権力分立とは、国家権力を複数の機関に分けて、相互に均衡・抑制を図ることにより、権力の濫用を防ぐ仕組みです。

 

権力が1つの機関に集中してしまうと、権力が濫用されてしまいます。そこで権力分立により、国家の暴走を抑制しようとしたわけですね。

 

権力分立論を唱えた代表的な人物は、ロックモンテスキューです。

 

(ロック:wikiより)

イギリスの思想家・ロックは、主著である「市民政府二論」のなかで、国家機関を議会と国王に分け、立法権を握る議会が国王の執行権・連合権を抑制する立法権の優位を唱えました。

 

(モンテスキュー:wikiより)

モンテスキューは、フランスの思想家です。彼は著書「法の精神」で、国家権力を立法権・行政権・司法権に分けて、三権をそれぞれ異なる機関で運用させ、権力相互の抑制と均衡を図る三権分立を主張しました。

法の支配

(エドワード・コーク:wikiより)

法の支配とは、権力者を法で拘束して国民の権利や自由を守ろうという考え方です。国王がすべてを支配する人の支配とは真逆の考え方ですね。

 

法の支配は、中世イギリスのコモン・ローの優位という思想から生まれました。

 

コモン・ローとは、裁判所が判決を通じて作り上げた慣習法のことです。

 

17世紀初頭に、イギリスの裁判官であるエドワード・コークがジェームズ1世の裁判干渉に抗議し、「王は何人の下にも立つことはない。しかし、神と法の下には立たなければならない」というブラクトンの言葉を引用して法の支配を強調しました。

 

つまりコークは、国王に対するコモン・ローの優位を主張したわけです。

 

法の支配と似た言葉で法治主義という考え方があります。

 

法治主義は、公権力が法に従って行使されなければならないとする原則です。19世紀のドイツで生まれました。

 

法の支配は法の内容まで重視するのに対して、法治主義は法の形式を重視したのが違うところです。

 

今回の範囲はここまでとなります。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。

入試問題にチャレンジ

問 下線部ⓓ(法の支配)の説明として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 法は、それに違反した場合に、刑罰など国家権力による制裁を伴う点に特徴があるとする考え方である。

② 法は、主権者である国王や権力者が出す命令であって、国民はこれに従わなければならないとする考え方である。

③ 議会の制定した法に基づいて行政が行われなければならないという、形式面を重視する考え方である。

④ 個人の権利を守るため、国王や権力者といえども法に従わなければならないとする考え方である。

2018年 センター試験 本試験 政治・経済 第1問 問5より)

 正解⑤ ア:「抵抗権」というキーワードから、空欄にはロックが入ります。ウ:「一般意志」というキーワードから、空欄にはルソーが入ります。残ったイには、ブライスがはいるので、正解は⑤です。
正解:④ ①:古代中国の法家思想に近い考え方です。②:人の支配の説明なので、間違いとなります。③:法治主義の説明なので、誤りです。
正解③ ①:リンカーン・②:ルソー・④:フランス人権宣言の第16条の一部です。

まとめ

今回は、近代民主政治の基本原理について解説しました。

 

国民主権・権力分立・法の支配といった基本原理の根本概念をしっかりおさえておきましょう。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

前回の記事「王権神授説と社会契約説の違いについてわかりやすく解説【政治第2回】」をご覧ください。

王権神授説と社会契約説の違いについてわかりやすく解説【政治第2回】
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次回の記事「人権宣言の歴史についてわかりやすく解説(入試問題つき)【政治第4回】」をご覧ください。

人権保障の歴史についてわかりやすく解説(入試問題つき)【政治第4回】
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