古典文法の敬語のうち、尊敬語・謙譲語と比べて地味に見えるのが丁寧語です。しかし「侍り(はべり)」「候ふ(さぶらふ)」は入試で頻出の語であり、本動詞と補助動詞の識別、現代語訳の違いが問われます。この記事では、丁寧語の種類・意味・識別方法を体系的に解説します。
丁寧語とは
丁寧語とは、話し手が聞き手(読者・会話の相手)に対して敬意を表す敬語です。動作の主体(主語)でも動作の受け手(目的語)でもなく、文を聞く・読む相手を高めます。現代語の「です・ます」に相当します。
古文の丁寧語の代表は「侍り(はべり)」と「候ふ(さぶらふ)」の2語です。どちらも「あります・います・〜でございます」という意味の丁寧語として使われますが、時代・文体によって使い分けが生じます。侍りは主に平安時代の和文・物語に、候ふは鎌倉時代以降の書き言葉・武家文書に多く用いられます。
「侍り」「候ふ」の基本の意味
| 語 | 読み | 本動詞の意味 | 補助動詞の意味 |
|---|---|---|---|
| 侍り | はべり | あります・います(丁寧) | 〜でございます(丁寧) |
| 候ふ | さぶらふ | あります・います(丁寧) | 〜でございます(丁寧) |
本動詞と補助動詞の識別方法
「侍り」「候ふ」も、尊敬語・謙譲語と同様に本動詞と補助動詞の2つの用法があります。識別のポイントは「直前の語が何か」です。
本動詞として使われるとき、「侍り」「候ふ」は単独で「あります・います」という存在・所在の意味を持ちます。直前に体言(名詞)や助詞「に」が来る場合や、単独で文末に置かれる場合は本動詞です。たとえば「京に侍り(京にいます)」「御前に候ふ(御前に控えております)」のように、それ自体が動作の意味を担っています。
補助動詞として使われるとき、「侍り」「候ふ」は他の動詞・形容詞・助動詞の後ろに付いて丁寧の意味を加えます。直前が活用語(動詞・形容詞・形容動詞・助動詞)の連用形の場合は補助動詞です。たとえば「書きて侍り(書いております)」「うれしく候ふ(嬉しゅうございます)」の「侍り」「候ふ」は補助動詞です。
識別のポイントまとめ
| 直前の語 | 用法 | 訳し方 |
|---|---|---|
| 体言・助詞「に」など | 本動詞 | あります・います・ございます |
| 活用語の連用形 | 補助動詞 | 〜ています・〜でございます |
「侍り」の尊敬語との区別
「侍り」は丁寧語として使われますが、「候ふ(さぶらふ)」は文脈によって謙譲語(お側に控える)の意味にもなります。平安時代の「候ふ」には「高貴な人のそばに控える・伺候する」という意味の謙譲語的用法もあります。文脈と時代を確認して判断することが必要です。
また「はべり」は「居り(をり)」(存在を表す動詞)の丁寧語として発達したとも言われます。「をり」は丁寧の意味がない中立的な「います・あります」ですが、「はべり」は丁寧・へりくだりの意識を含みます。
入試で問われる主なパターン
入試で「侍り・候ふ」が問われるパターンは主に3つです。1つ目は「本動詞か補助動詞かを識別して現代語訳せよ」という問題です。直前の語を確認し、本動詞・補助動詞を判断したうえで訳します。2つ目は「敬語の種類(尊敬語・謙譲語・丁寧語)を答えよ」という問題です。「侍り・候ふ」が文中でどの敬意の方向を持つかを確認します。3つ目は「誰への敬意を表しているか」という敬意の方向を問う問題です。丁寧語は「話者 → 聞き手(読者・会話相手)」への敬意です。
尊敬語・謙譲語・丁寧語の比較まとめ
| 種類 | 高める対象 | 敬意の方向 | 代表的な語 |
|---|---|---|---|
| 尊敬語 | 動作の主体 | 話者 → 動作する人 | 給ふ・おはす・宣ふ・たまふ |
| 謙譲語 | 動作の受け手 | 話者 → 動作を受ける人 | 奉る・申す・聞こゆ・参る |
| 丁寧語 | 聞き手(読者・会話相手) | 話者 → 聞き手 | 侍り・候ふ |
まとめ
古文の丁寧語は「侍り・候ふ」の2語が中心です。丁寧語の敬意の方向は「話者 → 聞き手」で、尊敬語(話者 → 動作の主体)・謙譲語(話者 → 動作の受け手)と異なります。本動詞と補助動詞の識別は「直前が体言・助詞なら本動詞、活用語の連用形なら補助動詞」という基準で判断します。謙譲語(奉る・申す・聞こゆ等)の識別については、詳しくは「古典の謙譲語まとめ【補助動詞・本動詞一覧と敬意の方向の見分け方】」をご覧ください。



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