古典文法において、助動詞の勉強は最重要項目であり、全て勉強を終えるのには相応の時間がかかります。
そのためには、1つ1つの助動詞につき、接続・活用・意味の3方向から整理しなければなりません。そこで今回は助動詞「たり」について意味と活用形及び接続について説明をしていきます。
この記事の中で助動詞「たり」について断定の意味の助動詞「たり」と完了の意味の助動詞「たり」についてどのように区別をすべきかしっかりと理解してきましょう。
まずは断定の意味の「たり」を解説した上で完了の助動詞「たり」との区別について解説していきます。
今回の記事のポイント・断定の助動詞「たり」の活用・接続
・完了の助動詞「たり」との区別
助動詞「たり」とは
接続とは「その言葉は、どんな形の言葉の後につくか」を指します。
例えば、「ある言葉の未然形+る」となるなら、この「る」は未然形接続ということです。
接続は、古典の文法を理解する上で必須なので必ず覚えましょう。
断定助動詞「たり」とは
断定の意味を持つ「たり」について話しましょう。訳す場合の意味としては断定(~だ・~である)です。
断定助動詞「たり」の接続は、体言接続です。つまり、名詞の後に来ます。
例文を見てみましょう。
とありますが「せうと(兄弟)」という名詞の後に「たり」の連体形「たる」という形が来てますよね。よって体言接続です。
また、活用は、以下の表の通りです。
未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 |
たら | たり(と) | たり | たる | たれ | たれ |
たら・たり(と)・たり・たる・たれ・たれ、です。
助動詞「たり」の断定と完了の識別
古典文法を勉強していると、識別問題というものに出くわします。
識別問題とは、1つの助動詞に複数の意味がある場合にそれを見分ける問題、ないしは同じ表現が様々なところで出てくる場合(例えば「なり」であれば、断定の助動詞「なり」・伝聞推定の助動詞「なり」・形容動詞ナリ活用・動詞が考えられます)にその見分けが問題となるケースを言います。
そして本件の断定「たり」の識別としては、断定の体言接続の助動詞「たり」と完了の連用形接続助動詞「たり」が問題となります。ちなみに、完了の「たり」の活用も恐ろしいことに補助活用の「と」を除いて断定のたりと全く同じ形で活用します。
たら・たり・たり・たる・たれ・たれと活用します。
つまり活用形だけでは断定も完了も区別できないことになります。しかも意味は「〜である」が断定に対し「〜した」と言うのが完了なので訳を全然違う形で捉えかねません。
では、どのように見分ければよいのでしょうか。
見分け方は接続に着目するだけで大丈夫です。
具体的には、上にも書いた通り断定の助動詞「たり」は体言、と完了の助動詞「たり」は連用形接続です。
例を挙げてみます。枕草子に『うつくしきもの、瓜にかきたるちごの顔』とあります。
ここに出てくる「たる」を考えてみますと、「かき」は「かかず」となるので四段活用の連用形です。ゆえに「たる」は連用形接続である必要があるので、完了の連用形接続助動詞「たり」となります。ちなみに訳は「かわいらしいもの、瓜に描いた子供の顔。」です。「瓜に描くに違いない」と言う断定ではありません。
助動詞「たり」のまとめ
いかがだったでしょうか。意味の見分けも問題とならないため、完了の助動詞「たり」との識別についてしっかりと頭に入れておきましょう。
実際に問題を解いてみよう!!
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コメント
断定のたりは体言接続では?
ご連絡ありがとうございます。おっしゃるとおりです。こちらの勘違いでした。修正させていただきます。
[…] […]