古典 古文助動詞「す」「さす」「しむ」について

教科書や参考書に載っている助動詞の一覧表を覚え、使いこなせるようになることが受験生としては必要です。とはいえ、どう覚えたらよいか、どう使いこなすのかがわからない生徒も多いかと思います。

助動詞は、接続・活用・意味の3方向から整理し、識別問題についても理解し頭に入れておくことが必要とよく言われます。

 

と言われても抽象的でよくわからないと思いますので、今回は助動詞の説明において序盤に出てくる傾向のある「す」「さす」「しむ」を例に整理してきます。

 

この記事のポイント・「す」「さす」「しむ」の接続、活用、意味がわかる
・使役尊敬の区別がわかる 

「す」「さす」「しむ」の接続・活用・意味

それでは、早速勉強をしていきましょう。接続、活用、意味の順番で解説していきます。最後は意味についての識別問題がありますので、最後まで読んでくださいね。

 

それでは、レッツトライ!!!

「す」「さす」「しむ」の接続

まずは、接続についてです。接続は本当に大事なので、きちんと覚えられるようにしましょう。直前の動詞をしっかりとチェックしましょう!!

 

  • 「す」は四段・ナ変・ラ動詞の未然形接続
  • 「さす」は四段・ナ変・ラ変動詞以外の未然形接続
  • しむ」は未然形接続

すべて未然形接続という点で共通ですが、「す」「さす」については四段・ナ変・ラ変動詞の未然形か否かによって区分されます。注意ですね

 

ナ変動詞とラ変動詞の活用のについては以下がポイントです。「る」「らる」のところでも勉強しましたね。忘れた人は再度チェックしましょう。

■ナ変動詞は「ぬ」「ぬ(ぬ)」のみの動詞です

■活用は「な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね」です

■ラ変動詞は「あり」「をり」「はべり」「いますがり」の4つ

■活用は「ら・り・り・る・れ・れ」です

ちなみに、「る」「らる」の区別については以下の記事が参考になります。まだ読んでいない人やきちんと覚えていない人はは、確認してみて下さい。

覚え方としては、四段・ナ変・ラ変動詞の未然形はすべて「~ア」となる点を意識すればよいでしょう。それでは、いくつか例題を解いてみましょう。まずは平家物語からみていきましょう。

 

例:めでたき祝ひの中に、涙を流し心を痛ましむ。(平家物語)

「痛ま」というマ行四段活用未然形の後に助動詞「しむ」の終止形がきていますよね。「しむ」の前が未然形ならこれは助動詞「しむ」と考えてもいいでしょう。

次の例題は伊勢物語からです。

例:御供なる人、酒をもたせて野より出で来たり。(伊勢物語)

「もた」というタ行四段活用未然形の後に助動詞「す」の連用形「せ」がきていますね。

次は、「す」「さす」「しむ」の活用について見ていきましょう。一つ一つきちんと覚えていきましょう。いきなりできなくてもいいのですが、リズムをとってるうちに覚えますよ。

 助動詞「す」の活用は以下の形になります。

未然連用終止連体已然命令
するすれせよ

「せ・せ・す・する・すれ・せよ」で覚えちゃいましょう。多分10回くらい繰り返すと覚えるのじゃないでしょうかね。大変でしょうか(^^;

次に、助動詞「さす」の活用は以下の通りになります。

未然連用終止連体已然命令
させさせさすさするさすれさせよ

「させ・させ・さす・さする・さすれ・させよ」という形ですね。「す」の活用に「さ」という言葉を入れればいいだけなので、「す」を覚えれば十分です。

次に「しむ」は以下の形になります。(あ〜大変)

未然連用終止連体已然命令
しめしめしむしむるしむれしめよ

「しめ・しめ・しむ・しむる・しむれ・しめよ」という形で活用しますね。それでは、実際の例題をみてきましょう。伊勢物語からです

例題:女はこのをとこをと思ひつつ、親のあはすれども、聞かでなむありける。(伊勢物語)

直後に「ども」という条件の接続詞があるので、助動詞「す」の已然形「すれ」が来てますよね。このように、助動詞含め古文の文法ってかっちりしているのでしっかり暗記していかないといけません。

ただ、活用の型としてはすべて下二段型ですので覚えやすいでしょう。また、「す」の活用を覚えて頭に「さ」をつけることで「さす」の活用に応用できます。

「す」「さす」「しむ」の意味

最後は意味についてです。これが今回のキモの部分です。正直、ここが一番難しいところです。「す」「さす」「しむ」の意味ですが、以下のたった2つです。この2つを押さえていけるようにしましょう!!!

①使役(~せる・~させる)

②尊敬(~なさる・お~になる・~れる)

意味は基本的に①使役②尊敬の2つです。見分け方を覚えれば十分に得点が取れるところなので、以下、識別問題という形で整理していきます。 

識別問題について

それでは、早速2つの意味①使役 ②尊敬の見分け方について見ていきましょう。見分け方は以下の2ポイントで判断していきます。

①使役=直後に尊敬語(給ふ・おはす・おはします)がない場合

②尊敬=直後に尊敬語(給ふ・おはす・おはします)がある場合(但し、文脈判断が必要です)

基本的には、直後に尊敬語が来るか否かで見分けます。

②の場合には例えば「せ」+「給ふ」となり尊敬が2つ並ぶことになります。この用法を二重尊敬と言い、いわゆる偉い人・身分の高い人が多数登場するような文章では使われますので意識をしておきましょう。

上記の通り、基本的には二重尊敬になるかで判断ができますが、必ず②尊敬になるかについては、一応文脈判断が必要です。もっとも、文脈判断は最終手段であるのでまずは基本の見分け方のルールをしっかりと守りましょう。 

例題:さがらふ者をば、弓の筈に取りつかせよ。


後に流される者がいたら、弓のはしにつかまらせよ。

直後に尊敬語がなく文末なので使役。

例題:一芸あるものをば下部までも召しおきて、不便にさせれ給ひければ、(徒然草)


一芸に優れているものを身分の低いものまでも召し抱え、面倒も見られたので

直後に「給ひ」があるので基本的には②尊敬。実際に訳してみても、尊敬で問題がない 

例題:「萩の葉、萩の葉。」と呼ばすれど、答へざなり。(更級日記)


「萩の葉、萩の歯。」と呼ばせたが、返事がなかった。

直後に尊敬表現が無いので、①使役

例題:芸はこれうたなけれども、人の耳をよろこばしめむとにあらず。(方丈記)


芸については下手であるが、聞く人の耳を喜ばせようとするものではない。

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