こんにちは。今回も受験生に役立つヨーロッパの歴史シリーズをはじめます。シリーズ第6回はローマの文化についてです。前回までで帝政ローマが一通り終わりましたが、今回はその文化的側面についてです。
ローマの文化はギリシア文化とならんでヨーロッパの古典文明とよばれます。文化のほかにもローマのすぐれた建築技術や法律は後世に大きな影響を与えました。
ちなみに、前回は「【世界史B】受験生に役立つヨーロッパの歴史(帝政ローマ:カエサル以降)」について記載しました。
この記事のポイント・ローマ文化は実用的。
・歴史・地理・法律・建築を先に覚えよう
古代ローマの文化
(アッピア街道:Histranceより)
古代ローマ文化の特徴は実用的なものが多いです。歴史や地理、自然科学や法律、建築などに注目していきましょう。入試に必要な範囲に絞っているので、しっかりと覚えていきましょう。
古代ローマの文学
(キケロの彫像:wikiより)
古代ローマの文学史で出題されるのは以下の3人。
- 散文のキケロ
- ローマ建国叙事詩の『アエネイス』を書いたウェルギリウス(ラテン語で書かれているのに注意!)
- 『叙情詩集』を書いたホラティウス
を覚えておけばOK。ちなみに、キケロはカエサルと同時代の人で、反カエサル派だったようです。最後は第二回三頭政治の一人アントニウスの放った刺客により殺されるそうです。
詳しい話は塩野七生『ローマ人の物語』に書かれています。
古代ローマの哲学
(マルクス=アウレリウス=アントニウス:wikiより)
哲学で出題されるのはストア派の哲学者2人。書物とともに覚えましょう。エピクロス派はいないので間違えないでください。
- 皇帝ネロの師匠であるセネカ:『幸福論』
- 哲人皇帝ことマルクス=アウレリウス=アントニヌス:『自省録』(ギリシア語で書かれています)
とセットで覚えましょう。マルクス=アウレリウス=アントニウスは中国の前漢の光武帝の時代に遣いを送って「大秦王安敦」という名前が残っていたのですね。前漢についての記事はこれをお読みください。
ちなみに、上述の書籍はともに名著です。大学に入ってからでも是非とも読んでみてください。特にマルクス=アウレリウス=アントニウスの「自省録」は今の我々にも行動の指針となるいい書物です。
ローマの歴史書、地理書
(タキトゥス:wikiより)
ローマ文化史で最も出題されるのは歴史書と地理書に関する人々です。めちゃくちゃ良く出てくるので絶対にしっかり覚えましょう。
- ボリビオスは政治システムが変化しつつ繰り返されるとする「政体循環史観」を主張します。
- カエサルは『ガリア戦記』
- リウィウスの『ローマ(建国)史』
- タキトゥスの『ゲルマニア』
このあたりはしっかりと覚えておきましょう。個人的に特におすすめなのがカエサルの「ガリア戦記」。これはカエサルがガリア地域を制圧する時の記録を書物に残したものです。内容が客観的でカエサルは自分のことを「カエサル」と書いてます。
一文を引くと「これに対してカエサルは、それを良く承知している。ヘルウェティー族の使節の言うことは自分も良く覚えており…」みたいに相当冷静に書かれています。
高得点を狙うなら、ギリシア文化との対比でギリシア文化で登場するヘロドトス、トゥキディデスの区別も忘れないようにしましょう。トゥキディデスはペロポネソス戦争の時代の歴史『
ヘロドトスが物語風歴史に対して、トゥキディデスはより正確で客観的な記述を心がけ、厳密な史料批判をしました。ヘロドトスの「エジプトはナイルの賜物」と言う表現は物語風の面白い修辞だと思います。
ギリシアとの対比といえばプルタルコスの『対比列伝(英雄伝)』も覚えておくとよいでしょう。なぜ、「対比」かと言うと、ギリシア人とローマ人の英雄を対比させているから対比列伝と言うのですね。カエサルとアレキサンドロス大王が対比されているのは面白いです。
ストラボンだけは『地理誌』なので歴史ではありませんが、47巻にわたり西洋事情の情報をまとめるために書かれました。
ローマの自然科学
(天動説:wikiより)
ローマでは科学も大きく発展しました。自然科学は2人の人物を覚えておきましょう。
一人目はプリニウス。プリニウスは百科事典である『博物誌』を書きました。また、ポンペイ火山の噴火に巻き込まれたことでも有名です。
もう一人は天動説を説いたプトレマイオス。地動説ではないので要注意。宇宙の中心には地球があり、太陽を含め全ての天体は約1日かけて地球の周りを公転すると考えました。
暦はユリウス暦を覚えておきましょう。ユリウス・カエサル によって紀元前45年から導入された太陽暦です。1年を、通常は365日、4年に1回366日のうるう年を挿入するという暦を作りました。
ローマの法律について
(ユスティニアヌス帝:wikiより)
ローマは法律の国です。しかも、法律は平民と貴族との身分闘争の歴史でもあります。さらっと覚えるのではなく、彼らの願いや思いを少し感じてもらいたいです。
まずは、十二表法。最初、公職は全て貴族(パトリキ)に独占されていたので、平民(プレブス)が貴族の譲歩を勝ち得て12枚の板に明文化したのですね。前451年出されました。前451(ヨコイチレツ)になるよう平等を図った十二表法と覚えましょう。
次に前367年にリキニウス・セクスティウス法。最高官のコンスルの一人を平民出身とすることなどが定められ、両者の法的身分がほぼ平等となったのですね。367(ミロ、ナんとコンスル一人が平民だ)みたいに覚えると良いでしょう。
そして、前287年に制定したホルテンシウス法。平民会の決議は元老院の承認が無くとも、ローマの国法とされることとなりました。これにより貴族と平民の身分の差はなくなりローマの共和政は完成しました。
また、ローマはギリシアと違い元老院がしっかりと機能をしていたので、衆愚政治(デマゴーゴス)に陥ることなく体制は安定していました。
ローマ帝国滅亡後、東ローマ皇帝ユスティニアヌスがトリボニアヌスに命じて編纂させた『ローマ法大全』はローマ法の集大成です。これにより、我々はローマの事情を詳しく知ることができます。
ローマの建築物
ローマの建築物といえば、コロッセオ、水道橋、道路、凱旋門、公共浴場などがあります。これらに共通するのは実用的な公共建築だということ。アーチや天蓋を使っているのも特徴です。
アッピア街道の舗装も押さえておきましょう。現在でもこの街道は使用されているので相当技術の高さを伺うことができますね。ちなみに覚えなくてもいいけど「街道の女王」と言うあだ名があります。
次回は、ローマの中で特に重要になってくるキリスト教史について簡単にお話をしていきます。しっかりと勉強していきましょう。
次回のお話
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コメント
[…] なお、前回はローマの文化について語りました。大事なところなのでしっかりと復習をしましょう。「【世界史B】受験生に役立つヨーロッパの歴史(ローマ文化史)」をしっかりと読んでください。 […]