【世界史B】受験に役立つ中国史(秦〜前漢末)第二回

前回、古代文明から春秋戦国時代までを話ししました。きちんと理解していますか?理解していない人はこちら

さて、今回は春秋戦国時代の覇者・嬴政が秦という国で中国を統一したことから話を始め、前漢の時代の制度についてまで話をします。

 

秦が中国を統一した過程については漫画キングダムで詳しいので、興味がある人はそちらを読んでみましょう。

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秦と始皇帝について

前221年、秦の王である嬴政が中国統一に成功し、自らを始皇帝と名乗りました。始皇帝というのは、彼が今後も皇帝の子孫が続いていき2世、3世と考えていたため、自らを最初の皇帝である「始」を名乗ったということです。

都は咸陽(今の西安です)に置きました。詳しい場所は上のマップにあります。そして、彼の政策については次の5点をおさえましょう。

始皇帝の行った5つの政策

①郡県制の実施

これまで諸侯が支配していた「国」を廃止して、支配地域を36の郡に分けて、そこに皇帝が直接任命した官吏を長官として派遣しました。漢代の郡国制と間違えないように覚えましょう。秦では国は廃止ですから。

②焚書・坑儒の実施

思想統制と弾圧をしました。現代で言論の自由が保証されていますが、当時はありませんでした。秦は法家の色合いが強く、徳という訳のわからない儒家を排除するために儒家を生き埋めにし(坑儒)、関連する書物を焼きます(焚書)。人からの伝達と書物からの伝達を排除するために行いました。

SNS全盛の時代では考えられないですね。なお、土に埋めるために「坑儒」の「坑」はつちへんなので書くときには気をつけましょう。

③貨幣や度(長さ)・量・衡(重さ)の単位の統一

            (秦小篆です)

秦以前は国がバラバラでまた文化もバラバラでした。そこで、彼らの最低限の生活部分を統一する必要がありました。

そこで、貨幣は半両銭を作らせ、文字を小篆(しょうてん)に統一しました。また、長さ(度)の単位の「一歩」を6尺と定め、量をはかる「ます」と重さ(衡)をはかる「はかり」の標準器を製造して全国に分配しました。

④蒙恬に匈奴を攻撃させ万里の長城の改修をさせた

北方での匈奴の侵略に備えるために長城の改修を行いました。なお、蒙恬は改修工事がうまく行かず自害に追い込まれます。

⑤南海郡を置いた

ベトナム北部までを制服して、南海郡などの3郡を置きました。これによりベトナム北部までを支配する大帝国となりました。

始皇帝の死後

始皇帝の死後、秦の国はあっさり滅びます。理由としては改革が急すぎて周りがついて来れなかった(郡県制などを実施したため諸侯からの反発があったなど)り、万里の長城の修復や阿房宮などの宮殿を立てたりと重税を課したりします。

 

なお、始皇帝は驪山陵(りざんりょう)という墓を建て、その周囲には兵馬俑という陶製の人形で作った兵士や軍馬7000体が埋めました。

 

秦を滅ぼした反乱の名前は陳勝・呉広の乱と言います。これは中国史上最初の農民反乱と言われています。きっかけは、労役の到着期日に間に合わないために(間に合わなかったら死罪でした)陳勝が反乱を起こします。「どうせ死ぬのならば、名を残して死ぬべきだ。もとより人間に王侯将相の種族の別があろうか」という言葉は有名ですね。

 

結局、この反乱の中で、陳勝も呉広も戦死しますが(正確には部下に殺されてしまいます)、一度ついた火種は大きくなりついに秦を滅ぼします。

 

この陳勝・呉広の乱の中で、楚の名門貴族出身の項羽と農民出身の劉邦が出てきます。ここら辺は項羽と劉邦という物語でよく語られるところですが、入試に出ないのでカットで…。

前漢について

劉邦は項羽を破って前202年に漢王朝を成立させます。都は長安(今の西安)です。ほぼほぼ咸陽と同じなので今回は地図は載せません。ちなみにこの年はローマでスピキオがハンニバルを破った第二回ポエニ戦争のザマの戦いがあった年なので覚えておきましょう

詳しくは「【世界史B】受験生に役立つヨーロッパの歴史(古代ローマ:ユリウス=カエサル以前)」に詳しく書いてます。

 

劉邦の行った政策として以下のものが挙げられます。

郡国制を実施

これは劉邦が完全に支配できる地域については郡県制を実施し、力が及ばないところは彼らの国として納めさせる、という秦の郡県制を弱めたバージョンです。諸侯の国という形での統治だったので郡国制です。

 

冒頓単于に貢物

劉邦の時代、匈奴からの侵略がひどく、圧迫を受け続けました。そこで、単于(匈奴で王という意味)に食料や貢物を毎年送るという屈辱的な政策を強いられました。

呉楚七国の乱について

景帝の時代に呉の国と楚の国の反乱が起こります(前154年)。これは、景帝が諸侯の土地を削って諸侯の力を押さえ込もうとした事がきっかけです。それに対し、呉と楚ら七国が反乱を起こします。

 

しかし、結果として鎮圧に成功し、中央から派遣された官吏がその国の政治を動かす事になり、中央集権化が進みました。

武帝について

景帝の息子であった武帝の時代、前漢で最盛期を迎えます。彼のやった事、5つをしっかりと覚えましょう!!

郷挙里選を実施

中央官である公卿もしくは地方官である郡太守が、「賢良、方正、直言、極諫(きょっかん)、秀才、孝廉(こうれん)、有道」などの項目をみてこれに相当する人材を発見し、中央に推薦し、推薦された者が中央・地方の官吏に任命される推薦方式でした。特に重視されたのが孝廉で、要するに親孝行をして清廉潔白だといいという形でした。

 

ただ、こうした推薦方式は、結局は地方官自らの子弟が「孝廉」と判断し、推薦される形になりました。まぁ、縁故採用ですね。

 

儒学を国家の学問とした

董仲舒(とうちゅうじょ)という儒学者の提案を受け入れて儒学を国家の学問という形にしました。郷挙里選の孝廉が重視されるのも儒学重視の考え方からきているようですね。

 

五経(「詩経」「易経」「書経」「春秋」「礼記」)が大切な書物と定められ、この五経を司る学者を五経博士と言いました。

 

均輸・平準法を実施し、塩鉄酒の専売実施

均輸法は多く取れる特産物を他の不足している所に転売する場所を移す方法で、平準法は品物が安い時期に蓄えておき品物が少なく高くなった時期に売り出す時期をずらして売るという物価調整法です。また、塩鉄酒という生活必需品を政府が独占して販売する独占的に利益をあげました。

 

さらに、この時期に五銖銭という貨幣を作り物価を安定させようとしました。この貨幣は唐の時代まで使用され続けます。

 

張騫の派遣

武帝の時代においても外圧として目の上のたんこぶは匈奴でした。そこで、西方の大月氏という部族と匈奴を挟み撃ちするために部下の張騫を派遣します。

 

張騫は大月氏の所に向かう途中で匈奴に捕まり、なぜかそこで妻子をもらったりします。そして匈奴で10年間暮らしますが、隙をみて最終的に逃亡し大月氏の所にいきます。しかし大月氏は同盟を断り、帰路につく途中も再び捕らえられ一年後に脱出という形をとります。

 

大変な旅でしたが、張騫のもたらした西方の情報は漢にとって大事な情報となりました。なお、張騫は烏孫という部族と提携関係を結ぶべきと進言しますが、彼の生前にはうまくいきませんでした。

 

なお、武帝は大月氏の付近の大宛(フェルガナ)に汗血馬という馬を得るために遠征を命じたりしています。

 

敦煌郡の設置

漢は西域まで進出して敦煌郡などの4つの群を設置しました。敦煌は西域の出入り口となり中国史上大事な場所となります。

新の王莽について

武帝の死後、国の財政がうまく行かず、宦官や外戚などが好き勝手します。そこで、外戚の王莽が前漢を倒し「新」という国を作りました。

 

しかし、この王朝は15年ほどで消滅します。理由としては、国を周の時代のように周の制度を復活させようとして周りの反感をかった(今で言うと平安時代の制度を復活させるようなものです)ため社会混乱になりました。

 

最終的に赤眉の乱と言う農民反乱によって王莽は殺されてしまいます。今回は、ここまでとします。次回は後漢から話していきましょう。

秦から前漢末までのまとめ

今回は、秦から前漢までを話をしました。秦の始皇帝と前漢の劉邦では統治形態が全く異なります。そこで両者の違いなどもきちんと頭に入れて理解をしておきましょう。次回は新と後漢、三国時代について述べていきます。お疲れ様でした。

前回の記事「夏、殷、周、秦王朝までを一気に解説!春秋の諸子百家なども細かく解説!歴代王朝の覚え方も!(世界史B

次回の記事「【世界史B】受験に役立つ中国史 (後漢から三国時代まで) 第三回

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