こんにちは。古文の敬語の中の丁寧語について解説をします。古文の丁寧語は敬語の動詞をチェックしていくので、本動詞と補助動詞をチェックしていきます。
そもそも、丁寧語とは、話者が話し相手に対して直接に敬意を表する表現を指します。古文を読む時には、敬語の知識が大きな鍵になります。その中でも、丁寧語は敬意を示す対象が尊敬語や謙譲語と異なり、読み手や聞き手です。そのため、丁寧語も正確に見分けることが必要です。
ただ、丁寧語は覚えるべき動詞がたった2つであり、敬語の中で一番簡単と言うこともあり、きちんと勉強されないことが多いです。そこで、今回は古文の丁寧語を解説するとともに、丁寧語を尊敬・謙譲と区別できるよう敬意の対象を問う問題の解説もしています。
今回の記事を読めばできること・古文の丁寧語の本動詞と補助動詞の意味が分かる
・古文の丁寧語が他の敬語(尊敬語・謙譲語)との区別をすることができる
敬語の種類と用法
敬語の種類と用法については、「敬語について(謙譲語の補助動詞と本動詞)」を参照してください。結論、敬語には丁寧語と尊敬語、謙譲語があり敬意の対象によって使い分けがなされると言うことです。
今回の課題である「丁寧語」は、「書き手(話し手)から読み手(聞き手)」に対する敬意を示す敬語です。
丁寧語の敬語動詞
丁寧語の敬語動詞は、本動詞も補助動詞も「侍り」「候ふ(さぶらふ・さふらふ)」の2つだけです。
たった2つ!少なっ!!
ちなみに、本動詞、補助動詞の区別は他の動詞がその動詞の下にある場合は補助動詞、ない場合は本動詞です。詳しい説明は、「受験に役立つ古文 敬語について(謙譲語の補助動詞と本動詞)」を参照してください。
丁寧語の補助動詞
丁寧語の補助動詞は「侍り」「候ふ(さぶらふ・さふらふ)」です。補助動詞は上にある語に丁寧の意味を付け加える役割を果たします。
口語訳は「侍り」「候ふ」どちらも、「~です、~ます、~(で)ございます」を使います。
例)年頃思ひつること果たし侍りぬ。(口語訳)長年思っていたことを果たしました。
丁寧語の本動詞
丁寧語の本動詞は「侍り」「候ふ(さぶらふ・さふらふ)」です。本動詞は、その動詞が本来持っている意味で用いられます。
「侍り」「候ふ」はどちらも「あり・をり」の丁寧語で、口語訳は「あります・ございます」です。
例)昨日今日物忌みに侍りつれど(口語訳)昨日、今日は物忌みでございましたが
【注意!】「侍り」「候ふ」は謙譲語になる時も!
「侍り」「候ふ」は多くは「あり・をり」の丁寧語ですが、「仕ふ」の謙譲語(お仕えする)になる時もあります。
例)「誰々か侍る」と問ふこそをかしけれ。(口語訳)「誰と誰がお仕えしているのか」と尋ねるのは趣がある。本動詞の「侍り」「候ふ」が丁寧語であるか、謙譲語であるかは、文脈により判断します。
《練習問題》
次の下線部の「侍り」「候ふ」を口語訳しよう。
(1) やがてとどむる類あまた侍りき。
(2) ほどなく失せにけりと聞き侍りし。
(3) この太秦殿に侍りける女房は
(4) 全くさる事候はず。
(5) 「まことにさにこそ候ひけれ」
(6) 故宮に候ひし小舎人童なりけり。
《解答&解説》
「侍り」が本来の意味で用いられているので、本動詞です。また、「あります」で意味が通りますので、丁寧語です。
「侍り」が直前の「聞き(聞く)」に丁寧の意味を付け加えていますので、丁寧語の補助動詞です。「侍り」が補助動詞である時、付け加えるのは丁寧の意味のみです。
「侍り」が本来の意味で用いられているので、本動詞です。「太秦殿」と人名があること、「あります」では意味が通らないことから、謙譲語だと判断します。
「候ふ」が本来持つ意味で用いられているので、本動詞です。「ございます(あります)」で意味が通りますので、丁寧語です。
「候ふ」の直前に、断定の助動詞「なり」の連用形「に」があることから、補助動詞と判断します。「候ふ」が補助動詞である時、付け加えるのは丁寧の意味のみです。
「候ふ」が本来の意味で用いられるので、本動詞です。「故宮」と人名があること、「あります」では意味が通らないことから、謙譲語だと判断します。
敬意の対象を見分けよう
・敬語動詞の種類と敬意の対象
敬語動詞の種類により、敬意の対象が異なります。
〔地の文〕
-尊敬語 筆者(作者)から動作主
-謙譲語 筆者(作者)から動作の受け手
-丁寧語 筆者(作者)から読み手
〔会話文〕
-尊敬語 会話の話し手から動作主
-謙譲語 会話の話し手から動作の受け手
-丁寧語 会話の話し手から会話の聞き手
2019年大学入試センター試験の問題より
2019年大学入試センター試験の第3問 問2は敬意の対象を答える問題でした。
a (狐は、姫君を)見奉るとかの花園によろぼひ出づれば
「奉る」は補助動詞で、直前の「見る」に謙譲の意味を付け加えています。そのため、「見る」という動作の受け手である「姫君」が敬意の対象となります。
b (主の女房は、娘に)「もし見給ふ君など候はば、我に隠さず語り給へ」と慰めければ
「候は(候ふ)」は本動詞で、「ございますなら」で意味が通るので丁寧語です。ですから、会話の聞き手である「娘」が敬意の対象です。
c (娘は、主の女房に)「…御宮仕へ申したく侍るなり」と言へば、
「侍る」は直前に「申し・たく」とあるので補助動詞ですから、丁寧語です。そのため、会話の聞き手である「主の女房」が敬意の対象になります。
d (玉水は、姫君に)御手水参らせ供御参らせ、
「参らす」は本動詞で、「差し上げる」という意味の謙譲語です。ですから、「参らす」という動作の受け手である「姫君」が敬意の対象になります。
古典文法の問題については「古文上達 基礎編 読解と演習45」がおすすめです。初学者から中上級者まで古文の問題をしっかりとかばーしてくれます。
丁寧語の補助動詞と本動詞のまとめ
今回の課題である丁寧語は「侍り」「候ふ」の2語ですが、本動詞と補助動詞を見分けるのが大きなポイントです。
問題を丁寧に解いたり、敬語に気を付けて古文を読む癖をつけたりすることで、古文をより深く読解できるようになります。尊敬語、謙譲語、丁寧語それぞれ1つずつしっかり身に付けていきましょう。
コメント