こんにちは。今日の課題は敬語のうち「尊敬の補助動詞」についてお話をします。古文を読解する時、敬語は重要な手がかりになります。しかし、古文の敬語を苦手な人は意外と多いですよね。これを逆に考えれば、敬語を読解に使えるようになれば、古文で一歩リードできるということです。
敬語は特に文章理解をする上で必要な知識です。気合を入れて、今回の課題である「尊敬の補助動詞」に取り組んでいきましょう。
敬語の基本を復習しよう
尊敬の補助動詞を詳しく学ぶ前に、まず敬語について基礎的な内容の復習です。古文の敬語は3種類あります。まずは、その区別ができるか確認しましょう。
尊敬語は動作主
尊敬語は、その動作をしている人(=動作主)に対して敬意を示す敬語です。
〔地の文〕 作者(筆者)→動作主
〔会話文〕 会話の話し手→動作主
例文 このことを帝聞こし召しす。(このことを帝はお聞きになる)
*「聞こし召す」は、作者(筆者)から「聞こし召す」という動作をした「帝」に対しての敬意を示す。
謙譲語は動作の受け手
謙譲語は、その動作を受ける人(=動作の受け手)に対して敬意を示す敬語です。
〔地の文〕 作者(筆者)→動作の受け手
〔会話文〕 会話の話し手→動作の受け手
例文 (かぐや姫は)公(おほやけ)に御文奉りたまふ。((かぐや姫は)帝にお手紙を差し上げなさる)
*「奉る」は、作者(筆者)から「奉る(差し上げる)」という動作の受け手「公」に対しての敬意を示す。
丁寧語は読者
丁寧語は、読者や会話の聞き手に対して敬意を示す敬語です。
〔地の文〕 作者(筆者)→読者
〔会話文〕 会話の話し手→会話の聞き手
例文 (かぐや姫は翁に)「この春より思ひ嘆きはべるなり」と言ひて、いみじく泣くを……。((かぐや姫は翁に)「この春から思い嘆いているのです」と言って、ひどく泣くのを……)
*会話文中の丁寧語なので、会話の話し手「かぐや姫」から、会話の聞き手「翁」に対しての敬意を示している。
●今回は「尊敬の補助動詞」が課題ですから、尊敬語の内容を念頭に置きながら、次へ進みましょう。
ポイント 尊敬語はその動作をしている人(=動作主)への敬意を表す
本動詞と補助動詞を見分けよう
では、次に本動詞と補助動詞の見分け方を学びます。まずは、本動詞とは何か、補助動詞とは何かから押さえましょう。
本動詞はそのままの意味で使う
本動詞は、その単語がもともと持っている意味を表し、それだけで使われる動詞です。
例文 宮は大殿籠りにけり。(若宮はお休みになってしまった)
*「大殿籠る」は「おやすみになる」というもともと持っている意味で、この一語だけで独立して用いられているので、本動詞である。
補助動詞は上の語の意味を補助する
補助動詞は、動詞などの下に付き、上の動詞に意味を付け加える働きをする動詞です。
例文 人目も、今はつつみたまはず、泣きたまふ。(人目も、今ははばかりなさらず、お泣きになる)
*「たまは(たまふ)」は、「つつむ」という動詞に付いて、尊敬の意味を付け加えているので補助動詞である。
*「たまふ」は、「泣く」という動詞に付いて、尊敬の意味を付け加えているので補助動詞である。
●本動詞と補助動詞の違いは押さえられましたか。
ポイント 補助動詞は動詞などの下に付き、意味を付け加える働きをしている
つまり、今回の課題である「尊敬の補助動詞」は、動詞などの下に付いて、「尊敬」の意味を付け加えているのですね。では、「尊敬の補助動詞」をどう見分けるか。その方法を見ていきましょう。
尊敬の補助動詞はこう見分ける
主な尊敬の補助動詞には次のようなものがあります。
-たまふ(四段活用)
-たぶ・たうぶ
-おはす・おはします
-ます・います
-あそばす
-いますかり・いまそがり
この中で大切なのは「たまふ(四段活用)」「おはす・おはします」です。
まずはこの3つをしっかり覚えてください。
また、これらの補助動詞の現代語訳はすべて「…なさる、お…になる」です。
尊敬の補助動詞の見分け方
① 原則として、動詞、助動詞、補助動詞の下に付いている敬語動詞は補助動詞
例文 子となりたまふべき人なめり。(私の子どもにおなりになる人であるようだ。)
*四段活用動詞「なる」の下に付いて、尊敬の意味を付け加えているので、「たまふ」は補助動詞である。
② 形容詞、形容動詞、断定の助動詞「なり」の連用形(「に」)、助動詞「ず」の連用形(「ず」)の下に付いている「おはす、おはします」は補助動詞
*これらに助詞「て」が付いた形に接続することもある
例文 人ざまもよき人におはす。(人柄も良い人でいらっしゃる)
*断定の助動詞「なり」の連用形の下に付いて、尊敬の意味を付け加えているので、「おはす」は補助動詞である。
確認問題―本動詞と補助動詞の見分け
◇次の下線部の動詞のうち、本動詞はA、補助動詞はBと答えよう。
① かぐや姫いといたく泣き給ふ。
② 「このありつる人たまへ」と主に言ひければ、おこせたりけり。
③ 右大将おはして、物語したまふ。
④ 宮なむうつくしくおはする。
⑤ 重き病をし給へば、え出でおはしますまじ。
解答と解説
四段活用動詞「泣く」に付いて、尊敬の意味を付け加えているので補助動詞である。
動詞などに接続しておらず、また、「給ふ」の本来の意味「お与えになる、くださる(「与ふ」の尊敬語)」で用いられているので、本動詞である。
動詞などに接続しておらず、「おはす」の本来の意味「いらっしゃる(「来」の尊敬語)」で用いられているので、本動詞である。
形容詞「美し」の下に付き、尊敬の意味を付け加えているので、補助動詞である。
「たまふ」に注意!
補助動詞「たまふ」には2種類あるので注意しましょう。
補助動詞「たまふ」の種類
-四段動詞「たまふ」=尊敬語
-下二段動詞「たまふ」=謙譲語
*四段動詞「たまふ」は本動詞(尊敬)で用いる場合もあります
確認問題―「たまふ」の見分け
◇次の下線部の「たまふ」のうち、尊敬の補助動詞はA、謙譲の補助動詞はBと答えよう。
① 子となりたまふべき人なめり。
② かく思ひたまへき。
③ 彼を見知り給へり。
解答と解説
助動詞「べし」は終止形接続である。補助動詞「たまふ」が終止形である場合、ほとんど四段活用であるため、尊敬の補助動詞と判断できる。
助動詞「き」は連用形接続である。連用形が「たまへ」とエ段音になっていることから、この補助動詞「たまふ」が下二段活用であると判断できる。そのため、謙譲の補助動詞である。
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