第一次護憲運動について解説(語呂合わせ・入試問題つき)【日本史第74回】

今回は第一次護憲運動についてわかりやすく解説します。

 

第一次護憲運動が起きる契機となった二個師団増設問題や、山本権兵衛内閣が退陣に追い込まれる要因となったシーメンス事件についても取り扱いました。

 

最後には第一次護憲運動に関する語呂合わせや入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。

この記事からわかること

・二個師団増設問題で第二次西園寺公望内閣は総辞職に追い込まれた。

・第三次桂太郎内閣は、第一次護憲運動の勢いを止められず、わずか50日余りで退陣を余儀なくされた。これを大正政変という。

・海軍に関する賄賂事件であるシーメンス事件により、山本権兵衛首相が辞任した。

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第一次護憲運動

(犬養毅:wikiより)

大まかな流れとしては、二個師団増設問題→第一次護憲運動→大正政変→シーメンス事件です。このことを頭に入れたうえで本文を読み進めていってください。

二個師団増設問題

(西園寺公望:wikiより)

桂太郎が1901年に総理に就任して以降、桂と西園寺公望が交互に首相の座につく桂園時代に入ります。

 

第二次西園寺内閣が発足したのち、時代は明治から大正へと変わりました。

 

第二次西園寺内閣の主な出来事としては、二個師団増設問題が挙げられます。

 

当時中国では辛亥革命により清が滅亡し、中華民国が建国されたばかりでした。つまり政治の状態は不安定だったわけです。そこに目を付けたのが、日本の陸軍でした。

 

陸軍は大陸進出の好機ととらえ、西園寺内閣に対して朝鮮に師団(陸軍軍隊)を2個増やすよう要求しました。しかし西園寺内閣は、お金がないことを理由に拒否します。

 

すると反発した陸軍大臣が単独で天皇に辞表を提出しました。西園寺内閣は次の陸相が決まらず、結局総辞職へ追い込まれ、第三次桂内閣が発足します。

大正政変

(尾崎行雄:wikiより)

西園寺は、立憲政友会の人間です。立憲政友会は、陸軍によって内閣がつぶされてしまったわけですから、たまったものではありません。

 

「こんなのは憲法に基づく政治ではない!」

 

これが第一次護憲運動のきっかけとなるわけです。

 

では第一次護憲運動について詳しく見ていきましょう。まずスローガンは、「閥族打破憲政擁護」です。

 

「閥族」とは藩閥のことを指します。藩閥とは、明治政府のなかでとくに実権を握っている薩摩・長州の人間です。薩長のメンバーを「打破」しようとするわけですね。

 

S先生
S先生
ちなみに桂太郎も長州出身です。

 

「憲政」とは、憲法に基づいた政治のことを指します。憲法に基づいた政治を「擁護」する、つまり特権を持つ政治家たちに、好き勝手な政治をさせないようにしようというわけです。

 

主な参加者には、立憲政友会の尾崎行雄や、立憲国民党の犬養毅らがいます。

 

また運動には、商工業者・都市の民衆も加わり、過激な民衆が国会議事堂を包囲したり新聞社や交番を襲撃したりして大いに暴れました。

 

運動に対抗するため、桂は立憲同志会を結成しようとしましたが、運動の勢いを止められず、わずか50日余りで退陣に追い込まれます。これが大正政変です。

 

大正政変は、大正デモクラシーのはじまりと位置付けられています。

 

S先生
S先生
桂は程なくして病死したため、立憲同志会の総裁は加藤高明が就任しました。

シーメンス事件

(山本権兵衛:wikiより)

第一次護憲運動の結果、与党を立憲政友会とする新しい内閣ができました。第一次山本権兵衛内閣です。

 

ただし山本権兵衛は、立憲政友会の人間ではありませんでした。そのため与党である立憲政友会の顔色を伺う政治を行います。

 

まず政党の人間も上級官吏になれるよう、文官任用令を緩和しました。続いて軍部大臣現役武官制を改正し、現役の軍人でなくても、予備役・後備役なら陸軍・海軍の大臣になれるようにします。

 

しかしこうした政治には当然反発が起きるわけです。山本内閣をつぶそうとする動きが形となって現れます。

 

政治家にとって命取りともいえるスキャンダル、それは賄賂事件です。

 

1914年に軍需品購入をめぐる、ドイツのシーメンス社と海軍首脳部との贈収賄事件が発覚します。これがシーメンス事件です。

 

なぜ海軍なのでしょうか?

 

それは山本が海軍の実力者だからです。

 

結局山本権兵衛内閣はシーメンス事件の責任を取り、退陣を余儀なくされます。そして大隈重信が総理に復帰し、立憲同志会を与党とする新内閣が発足しました。

 

今回の範囲はここまでです。続いて語呂合わせ・入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。

語呂合わせ

ここでは今回登場した重要なキーワードにまつわる語呂合わせを紹介しています。年号の暗記にお役立てください。

第一次護憲運動:行くいつ(1912)?今でしょ!第一次護憲運動
シーメンス事件:引く意志(1914)見せる、山本権兵衛

入試問題にチャレンジ

史料にかかわるデモクラシーの政治としておきた、第一次護憲運動の説明として正しいものはどれか。すべて選べ。

ア 大正政変により、山本権兵衛内閣は、わずか50日余りで退陣を余儀なくされた。

イ 軍部の力を制限するなかで、陸軍高官の軍艦購入にかかわる贈収賄事件がおきた。

ウ 西園寺公望首相は、天皇を政治利用したとして批判を浴び、憲政擁護運動がおきた。

エ 憲政擁護運動には、立憲政友会の尾崎行雄、立憲国民党の犬養毅らが参加した。

オ 都市では、民衆により政府系新聞社や交番を襲う事件がおきた。

2021年 早稲田大学 教育学部 日本史 大問Ⅴ 問4より)

 

正解:エ・オ アの大正政変により、50日余りで退陣したのは、山本権兵衛内閣ではなく、桂太郎内閣(第3次)です。よってアは間違いとなります。またイはシーメンス事件のことを説明している文章なのですが、そもそもシーメンス事件は、「陸軍高官」の「軍艦購入」によっておきた事件ではありません。軍需品の購入をめぐる「海軍高官」の汚職事件です。したがってこれも誤りとなります。最後のウですが、西園寺公望首相ではなく、桂太郎首相なので間違いです。

 

いかがだったでしょうか?

 

今回学習した範囲の内容をしっかりマスターできていれば、早稲田大学のような難関私立大学で出題される日本史の問題も解けるということが理解できたと思います。

 

先ほどの問題に正解できた人は、この調子で学習を続けていきましょう。残念ながら間違えてしまったという人も大丈夫です。記事を通して、今回学んだ内容をもう一度復習しておいてくださいね。

まとめ

今回は第一次護憲運動について見てまいりました。

 

第一次護憲運動が始まるきっかけ・運動の過程やその後に発足した内閣についてマスターできたでしょうか。

 

この記事が日本史を学ぶ読者にとって有益なものとなっていれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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