皆さんこんにちは!今回の記事では水産業について解説したいと思います。
皆さん、魚をよく食べますか?魚をよく食べる人にとって水産業は必要不可欠ですし、そうでない人にとっても水産業は生活に深くかかわる大事な産業です。
地理ではそのような水産業について水産業が行われる地域や水産業が盛んな地域の特性について学びます。入試では頻度は低めですが、小学校から習う内容も一部あり、ここで落とすと差がついてしまう内容でもあります。
今回の記事では、水産業に必須の地形条件のみならず、世界の水産業及び日本の水産業について概括したあと、実際の大学入試問題を解きます。この記事を読むだけで地理の水産業分野についてはほぼ網羅できます。
この記事を通して水産業について理解しましょう!
この記事を読んで理解できること・水産業の形態について理解できる
・水産業が盛んな地域について理解できる
・水産業についての入試問題が解ける
水産業地域の形成
水産業が盛んな海域の代表例である潮目
水産業は水がある地域であればどこでもできるというわけではありません。水産業に適した条件というものがあります。
その条件としてキーワードとなってくるのが湧昇流、大陸棚、バンク、潮目です。これらが卓越する地域こそ、行業が盛んな地域であるといえます。それぞれ次のような特徴を持っています。
湧昇流(ゆうしょうりゅう)
湧昇流とは海水の鉛直上方への運動のことを指し、深海から水が湧きあがってくる自然現象です。この現象は表層部の海水の発散を下層部の海水で補おうとするために生じます。
深海の水はきわめて滋養分に富み、魚のえさとなるプランクトンが生産されるため、湧昇流の海域は良好な漁場となります。
大陸棚
大陸棚とは、大陸の縁辺部にある水深200メートル程度まで続く緩やかに傾斜した海底のことを指します。この地形を有する海域では底引網漁業や沿岸漁業の好漁場として利用され、最近ではさらに養殖漁業の場として活用されています。
バンク
バンクとは別名堆(たい)と呼ばれる海底地形のことで、大陸棚または島棚の上にあって航海に危険のない水深を有する海底の隆起のことをさします。
火山や地質の構造によって成因します。堆は海流変化に富み好漁場となるものが多いのが特徴です。
潮目
潮目とは、寒流と暖流といった、異なる二つの潮流の接する海面に現れる帯状の筋のことを指します。潮流によって流れてきた栄養分が潮目で収束することによって、豊富な栄養分を持つ海域となることから好漁場となることが多いです。
ここまで説明してきた湧昇流、大陸棚、バンク、潮目はいずれも魚のえさとなるプランクトンが多く生息する地域であるということが特徴として挙げられます。
すなわち水産業が発達する地域とは、何らかの条件でもって魚のえさとなるプランクトンが多く住むなど、栄養にとんだ海域であるということがあげられます。
国別漁獲量の推移
1970年まで漁獲量世界一を誇っていたのは南米のペルーでした。ペルーではペルー沖で豊富にとれるアンチョビ(イワシの一種で、おつまみやピザのトッピングなどに使われることが多いです)の漁獲が中心となっていました。
1980年代には日本が漁獲量世界一を誇っていましたが、1990年代以降は中国が漁獲量を伸ばしています。
日本の水産業
日本は漁獲量を全盛期と比べるとかなり落としているものの、依然として、水産業が盛んな国といえます。
日本には、水産業に特化した景観(漁港)や漁場・漁法を有してきました。ここではそれらについて説明したいと思います。
日本の主な漁港
日本の主な漁港は表で示した通りです。水揚げ高で日本一を誇るのは銚子(千葉県銚子市)、水揚げ金額で日本一を誇るのは焼津(静岡県焼津市)です。このほかにも水揚げ高でいえば釧路(北海道釧路市)や長崎(長崎県長崎)が、水揚げ金額でいえば福岡(福岡県福岡市)や境港(鳥取県境港市)が代表的な漁港として知られます。
日本を代表する漁港(銚子)
日本を代表する漁港(焼津)
日本の漁場
島国である日本は海に取り囲まれ、また暖流と寒流がぶつかる潮目が太平洋側、日本海側のいずれにも位置することから栄養分の豊富な海となっており、漁場としては好立地の海域を数多く有しています。
なかでも沖縄県から中国にかけての東シナ海では水深が200Mほどの浅い海底がある大陸棚であることから、世界でも有数の漁場として漁業が盛んです。
また、北海道の網走から根室にかけてのオホーツク海やより遠方にある北太平洋、ベーリング海といった北洋漁場が、焼津などを拠点として南方に広がっている南太平洋の漁場があります。
北洋漁場ではスケトウダラ、サケ、マス、カニなどが、南洋漁場ではマグロなどが取れます。
日本の漁法
日本の漁法として代表的なものとしては、遠洋漁業、沖合漁業、沿岸漁業があげられます。これらは漁業を行う地域に違いがあるとともに、漁法やとる魚についても違いが見られます。2016時点での漁法別の漁獲高は次の通りです。
これによると、沖合漁業が最も多く、沿岸漁業と養殖業が同じぐらいで、遠洋漁業は少ないということが読み取れます。
しかしながら、1965年からの50年近くのスパンで漁獲量を見てみると、ここ50年で漁獲量に大きな変化が生じてきたことがうかがえます。漁獲量の遷移については次のグラフをご覧ください。
総漁獲量は1988年をピークに全体的に減少傾向にあります。とくに沖合漁業は、依然として総漁獲量の中では高い比率を示しているものの漁獲量の減少量については他の漁法に比べて顕著です。
遠洋漁業
遠洋漁業は主として諸外国の排他的経済水域内、あるいはどの国にも属さない公開を漁場として行う漁業です。非常に長い期間海に出ることから、大型漁船が使われるのが特徴です。
代表的なものとしてははえ縄漁(マグロなど)、一本釣り漁業(カツオ)、イカ釣り漁、遠洋トロール漁業などがあります。マグロやカツオ、イカ、カレイなどが遠洋漁業で獲得する魚介類となります。
1970年代に漁獲量はピークを迎え、一時期は沖合漁業よりも漁獲高が多かったものの、排他的経済水域の制定などによって漁を行う機会が減少したこともあり、徐々にその漁獲量は減少していきました。
沖合漁業
沖合漁業は、排他的経済水域内までの沖合で行われる漁業のことを指します。日本の漁獲量の半分近くはこの漁法でとられたものです。
代表的なものとしてはまき網漁業、底曳網漁業などがあります。1980年代には年間漁獲量が700万トン近くを誇ったものの、90年代より漁獲量は急速に減少していますが、依然として漁獲量に占める割合は高いです。
沿岸漁業
沿岸漁業は比較的陸地に近い沿岸部で行われる漁業のことを指します。基本的には漁港に日帰りできる距離で漁が行われます。
家族労働が主体で、使われる漁船も小ぶりなものが多いです。あらかじめ網を設置しておいて後でそれをとりに来る形態で漁を行う定置網漁業や、ハマチやノリなどの養殖業などが代表的なものです。
1990年代前半まではおおむね年200万トン程度の漁獲高で推移したものの、漁業従事者がへったこともあって、現在は減少傾向にあります。
水産養殖と栽培漁業について
ところで、スーパーマーケットの鮮魚コーナーに行くと(養殖)と書かれたラベルの魚をよく見かけませんか?実は、近年では、漁業はただ魚を捕るだけのものではなくなり、育てるものになりつつあります。
このような形態の漁業を養殖業あるいは栽培漁業と呼びます。養殖業は出荷するまで人口的に管理して魚を育てていくのに対し、栽培漁業は卵をふ化させ、ある程度の大きさの稚魚になったところで放流し、大きくなってから捕獲するという違いがあります。
漁獲量は徐々に増え、年100万トン近くを推移しています(2011年に漁獲量が減ったのは、東日本大震災の影響によるものです)。
水産業に関する入試問題について
水産業に関する入試問題
では、実際に水産業に関する入試問題を解いてみましょう。
これは、2017年度に日本大学の文系学部(法学部・経済学部など)で出題された入試問題です。遠洋漁業に該当するグラフを選択します。①A②B③C④Dの中から選んでみましょう。
ここでは、漁業部門別の生産量の変化について問われています。
問題の解答及び解説
解説
それぞれの選択肢がどのような変遷をたどっているかをグラフから検討してみましょう。
- A…1980年代から1990年代にかけてピークを迎えるも、それ以降は急速に減少
- B…1970年代中ごろにピークを迎えるも、それ以降は減少の一途をたどり、ほかと比べても少ない状況に
- C…1990年代ごろまではおおむね安定しているが、それ以降は減少
- D…2000年ごろまでおおむね上昇気味
であることがグラフから読み取れます。
先ほど、遠洋漁業は1970年代に漁獲量はピークを迎え、一時期は沖合漁業よりも漁獲高が多かったものの、排他的経済水域の制定などによって漁を行う機会が減少したこともあり、徐々にその漁獲量は減少していきました。
これに該当するのはBとなります。ゆえに答えはBを選択肢に持つ②となります。
まとめ
ここまで水産業について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか
ここで、もう一度今回の記事の内容をおさらいしておきましょう
水産業が盛んな地域
湧昇流、大陸棚、バンク、潮目 … 何らかの条件でもって魚のえさとなるプランクトンが多く住む栄養にとんだ海域
国別漁獲量の推移
1970年代まではぺルー、1980年代から90年代は日本、現在は中国
日本の水産業
漁場としては好立地の海域
代表的な漁港としては銚子(千葉県)・焼津(静岡県)など
遠洋漁業・沖合漁業・沿岸漁業・養殖業など多種多様な漁業形態が営まれている
ということが理解できましたね。
ちなみに、地理をより詳しく理解するために「村瀬のゼロからわかる地理B 系統地理編 (大学受験プライムゼミブックス)」がおすすめです。ぜひとも一読してみてください。
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