みなさん。こんにちは。今回は「不等式」とくに【連立不等式】について述べていきます。
この分野はセンター試験にも必ず出題されますし、図形問題や文章題との親和性も高いので、応用問題も多岐に渡ります。
不等式は、これまで等式(方程式)で扱ってきた等号(=)が不等号(<)に変わっただけなのですが、この違いのせいで理解が難しく、ミスが起きやすいです。
今回は、不等式問題で確実に点を取るため、不等式の簡単な復習と、連立不等式の問題でミスを防ぐ最強の解法を紹介します。
不等式の基本
不等式の解き方も等式の解き方も大きくは変わりません。しかしながら違う点もあります。
不等式の基本
1. 両辺に同じ実数を加える、同じ実数を引く操作は等式と同様に可能
2. 両辺に正の実数を乗じる操作は等式と同様に可能
3. 両辺に負の実数を乗じると、不等号が反転する
4. $\leqq$ は両辺が等しい場合を含むが、$<$ は両辺が等しい場合を含まない
実数というのは、高校2年で習う「虚数」と対になる数のことです。無理数($\sqrt{2}$など)も実数です。今は「普通の数」だと思っておけばよいです。
不等式には上記のような性質があるのでした。足し算、引き算、正の掛け算での移項は普通にできるけども、負の掛け算をするときのみ、注意が必要です。誰もが、一度と言わず百度くらい間違えると思いますので、間違える度に思い出して定着させてください。
では例題で一緒に練習していきましょう。
(2) $6(x+1) \geqq 2(5x +6) $
(3) $\frac{3x+1}{4} + \frac{1}{6} x > \frac{1}{3} x +2$
(1) 負の数を掛けない限りは等式と同様に解くことができます。
\begin{eqnarray} 5x +18 &>& 2x \\ 3x &>& -18 \\ x &>& -6 \end{eqnarray}
(2) 負の数を掛ける (または負の数で割る)ときは不等号が反転します。要注意!
\begin{eqnarray} 6(x+1) &\geqq& 2(5x +6) \\ 6x+6 &\geqq& 10x +12 \\ -4x &\geqq& 6 \\ x &\leqq& -\frac{3}{2} \end{eqnarray}
(3) 掛け算をするときは常に注意しましょう。
\begin{eqnarray} \frac{3x+1}{4} + \frac{1}{6} x &>& \frac{1}{3} x +2 \\ 3(3x+1) +2x &>& 4x +24 \\ 9x+3 +2x &>& 4x +24 \\ 7x &>& 21 \\ x &>& 3 \end{eqnarray}
一次不等式や二次不等式について、もっと学びたい方はこちらもご参照ください。
続いて、本日のメインテーマである連立不等式に参ります。
連立不等式とは
不等式とは「変数 ($x$など)が満たすべき条件」を示しています。
雑な例え話として、某テーマパークで「着ぐるみアルバイトを雇う場合の条件」を考えます。この着ぐるみは小さなネズミさんなので身長は160 cm以下の人でなければなりません。
$$ \rm{中の人の身長} \leqq 160 \rm{ cm} $$
これが「中の人の身長」が満たすべき不等式、「身長の条件」です。
ここで、経営状況的に中の人の時給は1200円以下でなければならず、教育期間が必要なので1年以上の長期契約でなければならないとすると、条件が増えます。
$$ \rm{中の人の時給} \leqq 1200 \rm{円} $$
$$ \rm{中の人の契約期間} \geqq 1 \rm{年} $$
このように、中の人が満たすべき条件が複数あるものが、連立不等式です。
連立方程式の場合、「変数が2つある場合、各変数を1つに定めるためには式が2つなければならない」という特徴がありましたが、連立不等式にはそういった決まりは特にありません。文字1つに対して、式が3つも4つもある場合があります。
連立不等式の解き方
連立不等式の解き方は通常の不等式の解き方と途中まで全く同じです。不等号の反転に注意しつつ不等式を解いていきます。
そして最後に、解いたすべての不等式の共通部分を求めます。すると共通部分は、すべての条件を満たす領域となります。
連立不等式に式の数の制限はないので、変数が満たすべき条件も3つだったり、4つだったりします。そうするとちょっと困ったことになります。
例えば、問題を解いたら以下のような条件が出てきたとします。
$x \leqq -1$、$x >-3$、$x<5$、$x \leqq 8$
共通部分、分かります?
これを見て共通部分がパッと思い浮かぶならば何も言うことはないのですが、これぐらいから人間の処理能力の限界になりますし、そもそも条件が6つ、7つと増えていけば、どんな人間でもお手上げです。
こうした連立不等式の問題を解決する最強の方法が「数直線による視覚化」です。上の例を数直線によって視覚化したものが下図になります。
この図の描き方と共通部分の求め方を以下にまとめました。
1. 数直線 (矢印)を描いて、条件文の中に出てくる数 (今回は$-3$、$-1$、$5$、$8$)を書き込む。
2. 各条件を満たす領域を描く。このとき、$\leqq$ や $\geqq$ で定められる領域の境界は黒丸 (●)で、$<$ や $>$ で定められる領域の境界は白抜きの丸 (◯)で描く。
3. 各条件の領域が、条件の数 (今回は4つ)だけ重なっている領域がすべての条件の共通部分となる。
こうして数直線を描けば、すべての領域が重なっている場所が一目で分かりますし、また等号の有無 ($\leqq$と$<$)によるミスも大きく減ることでしょう。
上の条件の共通部分は$-3 < x \leqq -1$ となります。
綺麗に描く必要はありません。数字の間隔がでたらめでも問題無いので、慣れないうちはとにかく数直線を描きましょう。慣れても描きましょう。
連立不等式の練習問題
それでは最後に、連立不等式の練習問題を解いていこうと思います。
例題 2
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