古文助動詞「む」について(助動詞編)【大学受験の古典文法】

みなさんこんにちは。古典の時間です。今回は、めちゃくちゃ意味の多い古文助動詞「む」についてお話しします。毎回思いますけど、古文助動詞って「む」とか「たり」とか文字数少ないですよね。

しかし、そうした一文字を巡って様々な意味の解釈があるのです。そして、その一文字を巡って受験での1点に繋がるのです。面倒ですけどこの文法をおさえていきましょう!

助動詞は、接続・活用・意味の3方向から整理していく必要があります。どの方向から聞かれても答えられるように、理解をしたうえで頭に入れ、問題演習をこなしていく必要があります。

この記事のポイント・「む」の接続、活用、意味がわかる。

・「む」の意味の見分け方がわかる。

助動詞「む」について

今回は助動詞「む」につき整理をしていきます。助動詞の中でも特に多くの意味を持つものですので、訳し方をしっかりと頭に入れましょう。

 

ちなみに、この助動詞「む」は大体鎌倉時代以降、「」と「」の表記に変わりました。ですので、文章で平安時代までは「む」鎌倉以降は「ん」「う」を使うということをおさえておきましょう。

 

今回は、「む」という形で統一します。混乱する場合は、なんども記事を読んでいきましょう!!

「む」の接続・活用・意味

「む」は推量の助動詞と言われます。推量の助動詞はその派生系も含めてかなりの数があります。識別問題への取り組み方など、他にも応用できることが多いですので、しっかりと理解しましょう。

助動詞「む」の接続について 

まずは、接続について見ていきます。接続というのは、助動詞の直前の形によって変化するという話でしたね。しつこいようですが、確認のため。もし接続がわかっていない人はこちら

 

 助動詞「む」は未然形接続です。したがって、直前に動詞や形容詞・形容動詞の未然形が来ることになります。具体例を見てみましょう。「懈怠の心あることをらんや。(徒然草)」

 

「知ら」というラ行四段活用の動詞の未然形がきていますね。ですので「む(ん)」という助動詞がくることができます。

 

ちなみに、「徒然草」は鎌倉時代の作品ですから「む」でなく「ん」が来ていることもチェックしましょう!作者は兼好法師でしたね。

助動詞「む」の活用について

それでは、次は助動詞「む」の活用を見ていきましょう。○は空白、ないという意味でしたね。しっかりと、活用の表を覚えていきましょう。

未然連用終止連体已然命令
む(ん)む(ん)

「○・○・む(ん)・む(ん)・め・○」と終止、連体、已然しか存在しませんね。○(空白)が多い点は注意が必要ですが、活用の型としては四段型になります。

 

きっと、ここまできて助動詞「む」って楽勝!と思われるかもしれませんね。違います。ここからが「む」の難しいところなんです。助動詞「む」の意味がこの助動詞の難所となります。気後れせずしっかりとやりましょう。

助動詞「む」の意味について 

早速、助動詞「む」の意味を扱います。ここがポイントです。しっかりと覚えていきましょう

「む」の意味①推量(~う・~だろう)

②意志(~う・~よう)

③適当(~がよい)

④勧誘(~しませんか)

⑤仮定(~であろう・~としたら)

⑥婉曲(~ような)

細かく分けると6つとなりますが、勧誘と適当、仮定と婉曲をまとめて4つとする考え方もあります。とりあえずこの4つは覚えていかなければなりません。

 

そして、この意味を覚えるのにゴロ合わせが存在します。『スイカ変えて』と覚えていきましょう。(量)+(志)+(誘)+定)+(曲)+(当) という形で頭文字を組み合わせた造語みたいなものですね。

 

この言葉の意味するところは不明ですが、昔からこのゴロ合わせが代々受け継がれています。スイカを変えて何をしたいのかわかりません。が、大事なので呪文のように唱えて覚えてしまいましょう。

 

では、次にこの複数ある意味をどのように区別していくのかお話ししていきます。しっかりと理解してくださいね。

識別問題について(推量・意思・勧誘・仮定・婉曲・適当の区別)

上記の通り「む」には量、志、誘、定、曲、当の6つの意味がありました。基本的な見分け方は以下のようになります。

①推量→主語が三人称の場合

②意志→一人称が主語

③適当・勧誘→「こそ~め」という係り結びの形で使われる

④仮定・婉曲→直後に体言・名詞が来る

一般的な見分け方としては上記の説明となります。少し補足をしていきますと、③「こそ~め」という係り結びの形ですが、係助詞「こそ」はその後に已然形を伴う形で対応するため、「む」が「め」となります。

 

ちなみに係り結びとは、『ぞ・なむ・や・か  〜 連体形』、『こそ 〜 已然形』と対応をする形で入試頻出分野の1つです。

 

①推量については、主語が3人称のときとありますが、②③④でないときに①という形で考えることがすばやく「む」の識別を解くコツです。早速、例題を解いてみましょう。

 

例題:命長くとこそ思ひ念ぜめ。(源氏物語) 

長生きをしようと思って我慢するのがよい。

「こそ~め」の形があるので、③適当・勧誘で、訳してみると③適当(~がよい)

 

例題:かさねてねんごろに修せんことを期す。(徒然草)

もう一度、十分に治めようと決心する。

本問では、「決心する」という訳となりますので、一人称である「わたし」が主語として省略されていると考え、②意志となります。

 

例題:「いましばしけふは心しづかに」など言はんは、(徒然草)

今日はゆっくり(話しましょう) などというような場合には

「ん」は直後に体言・名詞が来ていませんが、「ん」は終止形か連体形ですので、文末でない以上連体形と考えるのが通常です。基本ルールに則り④仮定・婉曲となり、訳してみると婉曲(~ような)がよいでしょう。

 

例題:夕には朝あらんことを思ひ、朝に夕あらんことを思ひて(徒然草)

 

夕方には明日の朝があるだろうと思い、朝には夕方があるだろうと思って

②③④に当たる場合には当たらないため消去法で①推量となる。

 

例題:二つの矢、師の前にて、一つをおろそかにせんと思はんや。(徒然草)

 

二本の矢を師匠の前で、その一本をいい加減にしようと思うだろうか。

訳す力が要求される側面もありますが、「思ふ」という表現も使われていますので、②意志がよいでしょう。

助動詞「らむ」「けむ」について

「む」から派生した助動詞として「らむ」「けむ」があります。詳しい話は割愛しますが、「らむ」「けむ」ともに「む」が含まれるため、見分ける問題が出題されそうですね。もっとも、「らむ」「けむ」の接続を覚えれば解決できます。

 

「らむ」→終止形接続

「けむ」→未然形接続

 となります。

まとめ

「む」は意味の見分けがポイントです。覚えにくいところもありますが、いわゆる推量の助動詞は数が多く、今回覚えたところは実は他の推量の助動詞の識別でも利用できます。しっかりと頭に入れ演習を通して定着をさせましょう。

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