古典文法における最重要分野にして最難関と言えるのが助動詞でしょう。理屈がわかれば徐々に知識が繋がりわかることが増えてきて楽しいと感じられるようになるかもしれませんが!そこまでが一苦労です。
ここでは、助動詞で1番はじめに習うことの多い「る」「らる」を取り上げて説明をしていきます。流れとしては、接続・活用・意味・識別問題と続いていきますので順に理解していきましょう。
古文助動詞「る」「らる」の意味・接続・活用
古文助動詞にも少し慣れてきた頃でしょうか?以前、「る」については「り」との区別で話をさせてもらいましたが、大事なので繰り返し勉強していきましょう。
「る」についての記事はこちら
「る」「らる」について
まずは、「る」「らる」のの接続についてです。接続の説明は繰り返しになりますが、直前の動詞や形容詞の形を見るのでしたね。
「る」は、四段・ナ変・ラ変動詞の未然形接続
「らる」は、上記以外の未然形接続となります。ちなみに、念のためにナ変とラ変を確認します。
ナ変ラ変動詞のポイント■ナ変動詞は「死ぬ」「往ぬ(去ぬ)」のみの動詞です
■活用は「な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね」です
■ラ変動詞は「あり」「をり」「はべり」「いますがり」の4つ
■活用は「ら・り・り・る・れ・れ」です
どちらも未然形接続(直前に動詞や形容詞・形容動詞の未然形が来る)である点に変わりはありませんが、細かく見ると上記のような違いがあります。覚え方としては、四段・ナ変・ラ変の未然形は全て〜アですので、〜アのときは「る」、それ以外のときは「らる」と頭に入れると良いでしょう。
例:名利に使はれて、しづかなるいとまなく、一生を苦しむこそ、愚かなれ。(徒然草)
「使は」はハ行四段活用なので助動詞「る」「らる」どちらを使うというと
例:その心御覧ぜられよ。(源氏物語)
「御覧ぜ」は、ザ行下二段活用なので、「る」「らる」どちらを使うというと
やはり助動詞をしっかりと理解するためには前提として動詞などの基本的品詞の理解が欠かせませんね。
「る」「らる」の活用について
次は活用についてです。しっかりと押さえていきましょう。1歩1歩の努力が最終的には大きな力になりますので。それでは、まず「る」の活用をみましょう。
未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 |
れ | れ | る | るる | るれ | れよ |
大丈夫ですか?「れ・れ・る・るる・るれ・れよ」と下二段型の活用になっていますね。下二段しっかりと覚えていますか?次は、「らる」です。
未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 |
られ | られ | らる | らるる | らるれ | られよ |
「られ・られ・らる・らるる・らるれ・られよ」と同じく下二段型の活用になっています。
共に活用の型が下二段型で共通しています。覚え方としては、「る」の活用を覚え、頭に「ら」をつけることで「らる」の活用を頭に入れるという流れで良いでしょう。
具体例を見てみましょう。
ものもいはずうつぶきたりける時に、俊頼朝臣忍びやかに笑はれけり。(無名抄)
「笑は」という四段動詞のため「る」で、直後が連用形接続である助動詞「けり」がきているので連用形の「れ」が使われているのを確認してください。
例:めでたしと見る人の、こころ劣りせらるる本性見えんこそ口をしかるべけれ。(徒然草・一段)
直後に本性(名詞・体言)ゆえに連体形の「らるる」が使用されています。
「る」「らる」の意味について
最後に意味についてですが、4つもあります。
①受身(~れる・~られる)
②尊敬(~なさる・お~になる)
③自発(自然に~れる)
④可能(~できる)
4つもの訳し方があるのは、助動詞の中でも多い方です。この中で言うと③自発があまり馴染みがなく、訳しづらいかもしれませんので、しっかりと訳し方を覚えておきましょう。
では、4つの意味をどう見分けるのか。文脈判断だけでは難しいですので、基本の見分け方を以下識別問題という形で説明します。
識別問題について
一般的に受験においては以下の見分け方が基礎知識として指導されています。しっかりと覚えておきましょう!
意味の識別方法
①受身→上に「〜に」という表現がある
②尊敬(~なさる・お~になる)→上に身分の高い人が登場する
③自発(自然に~れる)→心情語・感覚動詞(思ふ・聞くなど)が直前に来る
④可能(~できる)→下に打消語が来る
どこからアプローチをしても構いません、文法知識のみ問われる設問では以上のルールを適用し、いかに速く効率的に解くがが鍵になります。
それが出来ると、その他の時間をかけて考えなければならない問題に集中することができます。しっかりと頭に入れましょう。
練習問題
例題:かの大納言、いづれの舟にか乗らるべき。(大鏡)
例題:はじめて過ぎぬるかたの誤れる事は知らるなれ。(徒然草)
例題:すべて、あられぬ世を念じすぐしつつ、心をなやませること、三十余年なり。(方丈記)
例題:いきほいあるものは貪欲ふかく、ひとり身なるものは人にかろめらる。(方丈記)
今回のまとめ
いかがだったでしょうか。助動詞それぞれで、接続・活用・意味・識別問題で注意しなければならないところが異なりますね。
最終的には分野別ではなく総合演習をすることになりますが、まずは1つ1つの助動詞を丁寧に理解していきましょう。
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