今回は地理Bの金属工業について解説していきたいと思います。
金属工業は産業の基盤を作る非常に大事な工業です。
例えば、私たちが利用している建物の多くは鉄鋼をはじめとした金属が使われていますし、機械を作るには金属が必要不可欠です。
また、日用品にも金属は多く使われていますね。とくに、鉄鋼は産業の基盤となることから産業のコメとも呼ばれ、鉄鋼業の発展が国の発展を象徴している時代もありました。
この記事では、産業の基盤ともいえる重要な役割を持つ金属工業について解説していきたいと思います。また、関連する入試問題もあるのでぜひ最後までお読みください。
この記事を読んで理解できること・金属工業の種類について理解できる
・金属工業の形態について理解できる
金属工業とは
(金属工業で生産されるもの(アルミニウム・銅・鉄鋼)
金属工業とは、鉱業によって採掘される金属鉱産物(鉄鉱石・ボーキサイトなど)の精錬及び加工を行う工業のことを指します。
主要なものとしてボーキサイトを原料とするアルミニウム工業、鉄鉱石を原料とする鉄鋼業、銅・鉛・亜鉛といった非鉄金属工業などがあげられます。
アルミニウム工業
(身近なアルミニウム製品であるアルミホイル)
アルミニウム工業は、アルミニウムという軽金属を生産するための工業です。
アルミニウムはボーキサイトと呼ばれる鉱物資源から精錬されます。
精錬の際に莫大な量の電力を必要とするのが特徴で、アルミニウムはしばしば「電気の缶詰」などと呼ばれていました。
アルミニウム工業は現在、電力の安い国や地域で行われることが多く、日本ではオイルショック以降精錬業は急速に衰退し、1987年以降は静岡県静岡市清水区の蒲原というところでのみ実施されていたものの、2014年に精錬事業から撤退しました。
鉄鋼業
(鉄鋼業で生産される鉄鋼)
鉄鋼業は鉄(鋼材)を生産するための工業です。
鉄はながらくの間産業のコメと呼ばれ、土木事業・建築事業・自動車工業・鉄道・機械製造業・造船などあらゆる工業において欠かせない存在であることから、重工業を代表する基幹産業の一つとして発展してきました。
製鉄所の様子
鉄は鉄鉱石と石炭を用いて製鉄されることから、製鉄所は鉄鉱石鉱山または炭田の近く、あるいは船舶輸送の利便性が高い港湾部に立地することがほとんどです。
日本では現在国内に13カ所の銑鋼一貫製鉄所(鉄鉱石から鉄を取り出し、最終的な製品の製造を行う製鉄所)を有し、永らくの間世界第1位の粗鋼生産量を誇ってきました。
現在、発展途上国を中心に粗鋼生産量は増加傾向にあり、中国に次いで世界第2位の粗鋼生産量となりました。
なお、製鉄所は常に高炉の火を絶やしてはいけないという構造上、粗鋼生産量を調整することが難しく、また設備にかかるコストも高いことから、ある一定の数字以降は粗鋼生産量が伸び悩むのが特徴です。
日本(第2位)やアメリカ(第3位)などは中国に抜かれるまでの間、粗鋼生産量で1位(日本)、2位(アメリカ)という状態にありましたが、粗鋼生産量そのものはほとんど増減していません。なお、中国も近年では鉄鋼生産量が伸び悩む傾向にあります。
金属工業の問題の出題例
金属工業の出題例
それでは、金属工業に関する入試問題を実際に解いてみましょう。
これは、2017年度に北海道大学で出題された問題です。
問題の解答及び解説
特徴:先進地域では生産量の伸びは見られないが、発展途上地域では著しい生産量の伸びが見られる
ここでは、粗鋼生産量の推移のデータからどの国の粗鋼生産量であるかということと、その要因について問われています。
まず、2014年時点での粗鋼生産量はAが1位、日本が2位、Bが3位となっています。しかしながら、Aは1990年から2010年にかけて粗鋼生産量が非常に伸びており、この間に大幅な経済成長を成し遂げていたことがうかがえます。
よって、Aは中国であると理解できます。いっぽう、Bは1990年代以降、粗鋼生産量が日本と同様にあまり変わっていないことが理解できます。よって、Bはアメリカ合衆国であるといえます。
次に、変化の特徴として言えることが先進国(日本・アメリカ)と1990年代以降発展を遂げた国(インド・韓国・ロシア)との間で、大きな差があるということです。前者は25年間の間で鉄鋼生産量が安定しているのに対し、後者は急速に増加しているという点です。
これは、発展途上国を中心に粗鋼生産量は増加傾向にあるということと、製鉄所などの設備にかかるコストが高いことからある一定の数字以降は粗鋼生産量が伸び悩むということを意味します。
まとめ
ここまで、金属工業について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。ここでもう一度おさらいしておきましょう。
金属工業の種類
- アルミニウム工業
- 鉄鋼業
- その他(銅などの非鉄金属)
アルミニウム工業
- ボーキサイトを原料
- 電気代がかかるため発展途上国へ生産がシフト
鉄鋼業
- 鉄鉱石・石炭を原料
- 発展途上国を中心に生産量が増加。粗鋼生産量は中国が1位、日本が2位、アメリカが3位
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