「有理数…中学数学でちょっと勉強した…」という人もいるかもしれませんが、数についての大事な概念ですから、ここできちんと理解しておきましょう。
有理数・無理数の分野は、難しい計算などは出てきませんが大学入試では、証明問題で主に出題されます。
今回の記事は、有理数、無理数、実数や整数など数とはなにか、言葉の定義もはっきりとさせます。さらに、大学入試で頻出の√(ルート)が無理数だという証明を背理法をつかって解説していき、有理数、無理数の問題を解けるようにします。
この記事を読んでできること・有理数、無理数、実数、整数という数とは何かを明らかにする
・有理数の具体的な例がわかる
・無理数の具体的な例がわかる
・ルートが無理数と証明するために背理法を使うことができる
・有理数と無理数の問題を解くことができる
有理数と無理数とは
まずは有理数です。有理数とは繰り返しますが、abと表せる数のこと(a,bは整数で、b≠0)です。
逆に無理数は、abで表せない数のことです。これは定義です。「Aのことを〇〇と呼ぶことにしました」という宣言なので、理解することというよりも、覚えることです。ただ、両方覚えようとすると、試験中にどっちがどっちだったかわからなくなっても困るので、有理数の定義だけ覚えましょう。
そして、実数というのは、有理数と無理数を合わせた全体のことです。つまり、実在するすべての数のことです。
ここで覚える必要はありませんが、数には他に以下のようなものがあります。
- 虚数:二乗したときに、0未満の実数になる数。現実には存在しない。
- 自然数:物の数を数えるときに使う数。0や負の数は含まれない。 例)1,2,3,…
- 整数:小数でも分数でもない数。自然数と0、および負の数が含まれる。 例)…,−1,0,1,…
図で示すとわかりやすいと思います。
有理数の具体的な数について
23のような分数(整数÷整数)は有理数です。これは定義そのまま。わかると思います。では、他には有理数にはどんな数があるのでしょうか?
有理数①整数
例えば、5という整数について考えます。定義をあてはめます。5は分数で表せますか?
これは簡単です。
5=51分母が1で分子が5という分数で表すことができるので、有理数です。
つまり、整数xはx1と表すことができるので、有理数です。
有理数② 有限小数
次に、有限小数。有限、つまり限りがあるということです。では、何の限りか?それは、「小数点以下の値」です。例えば、42.195のように、「小数点以下の値が無限に続かない」のが有限小数です。
定義をあてはめてみましょう。
42.195=421951000小数点以下の値に限りがあるので、分母も分子も整数の分数として表すことができます。よって、有限小数は有理数となります。
有理数③ 循環小数
有限小数は、小数点以下の値に限りがある小数のことでした。同じように考えると、循環小数とはどんな小数になるか?そうです。「小数点以下の値が循環している小数」です。では循環とは?
例えば、0.3333⋯や0.12341234⋯という数が、循環小数に含まれます。
循環小数を分数の形に直してみましょう。
まずは簡単な例として、0.3333⋯を見てみます。
S=0.3333⋯とおきます。次に、それを10倍した10S=3.333⋯からS=0.3333⋯を引きます。
10S−S=3.3333⋯−0.3333⋯9S=3S=39=13
つまり、0.3333⋯は、13と表せます。
この分数に直すステップで重要なのは、小数点以下の繰り返しが何桁になっているかです。
0.12341234⋯という例で見ると、
1234と4桁が繰り返されていることがわかります。この繰り返しの数は、引き算のときに何倍した式で計算するかに使います。上の0.3333⋯の例だと、繰り返しの数は1なので、10の1乗とSの積からSを引きました。つまり、今回の例では、10の4乗とSの積からSを引くことで、分数の形に直します。
104S−S=1234.1234⋯−0.1234⋯999S=1234S=1234999
となります。
繰り返しがn桁だとすると、
- 10n倍する
- 1倍のものとの差を求める式を立てる
という手順で、循環小数を分数に変換します。
例題
0.375375⋯を分数で表せ。
繰り返しの桁数は3桁なので、S=0.375375⋯とおくと、
103S−S=375.375375⋯−0.375375⋯999S=375S=375999=125333
約分を忘れてはいけません。
答えは、125333
分数の形に表せる数は、整数・有限小数・循環小数のうちいずれかです。つまり、有理数かどうかを判別するには、整数・有限小数・循環小数のいずれかに該当するかどうかを考えればよいということです。
無理数の具体的な数について
無理数の定義は、「有理数でないこと」です。定義を文章で答えさせる設問は、テストではなかなかないので、こう覚えていたら十分です。正式には、整数÷整数の分数の形にできない数です。具体的な例を見てみましょう。
無理数①累乗根
二乗根だけでなく、三乗根なども含まれます。√2や√3はもちろん、3√2なども小数点以下の値に限りも循環もありません。
√2=1.4142135⋯
√3=1.7320558⋯
3√2=1.7320558⋯
無理数②対数
対数も無理数です。logmn(m,nは整数, m>0, m≠0, n>0で、m=N,n=Nを満たす整数が存在しない。)と表されます。例えば、log23の値は、無理数です。
log23=1.5849625⋯
無理数③ある種の数学定数
ある種の数学定数も、無理数です。代表的なものに、πや自然対数の底であるeがあります。
π=3.14159265⋯
e=2.7182818⋯
無理数に関する問題としては、「(ある値が)無理数であることを証明せよ」という出題があります。「背理法」という方法を使う基本的な証明問題で、定期テストでよく出題されます。
例題
√3が無理数であることを証明せよ。
無理数の証明では、背理法を使います。背理法というのは、「ある命題Pを証明したいときに、Pが成り立たないと仮定して、そこから矛盾を導くことにより、Pが正しいと結論付けること」です。文章で見ると少々まどろっこしいです。平たく言うと、「Pが成り立たないとしたら、こっちにも矛盾が出てくるから、Pは成り立つということだ」という証明法です。
命題「√3が無理数である」ということを証明するので、まずは命題を否定します。「√3が無理数ではない」となります。つまり「√3が有理数である」と仮定します。
すると、有理数の定義より、√3=ab(a≠0,b≠0で、abはこれ以上約分できない)と仮定します。
a=√3×ba2=3b2
よって、a2は3の倍数なので、aも3の倍数ということになります。
nを自然数とすると、a=3nと表せます。これを式(1)に代入します。
9n2=3b23n2=b2
上の式より、b2は3の倍数なので、bも3の倍数ということになります。
よって、aとbはどちらも3の倍数で、公約数3を持つことになります。つまり、abはこれ以上約分できない(= 1以外に公約数を持たない)ということに矛盾します。
以上より、「√3が有理数である」という仮定が成り立たず、「√3が無理数である」という命題が証明されます。
有理数と無理数の例題
最後に、定期テストでよく出る有理数・無理数の問題で、理解を定着させましょう。まずは、比較的簡単な問題から。
例題以下の数の中から、無理数をすべて選べ。
−5,√7,√43,√81,√53
すべて値を書きだします。
よって、無理数は、√7,√43,√53となります。
次は、有理数の問題です。
例題2t=5を満たすtは無理数であることを示し、2x×5(−3y)=2y×5(3x−4)を満たす有理数x,yを求めよ。
ある値が無理数であるかを証明するときには、背理法を使います。
2t=5を満たすtが有理数だと仮定すると、t=mn (1)と表すことができる。
ここで、2t=5>0より、t>0
2t=5に式(1)を代入して、
2mn=5
両辺をn乗して、
2m=5n
ここで、左辺は2の倍数ですが、右辺は5の倍数となり、矛盾する。
よって、tは無理数である。
次に、2x×5(−3y)=2y×5(3x−4)について、2の倍数と5の倍数について、左辺・右辺にわけると、
2(x−y)=5(3x+3y−4)
3x+3y−4>0と仮定すると、
2x−y3x+3y−4=5
x,yを有理数とすると、x−y,3x+3y−4も有理数となり、x−y3x+3y−4も有理数となる。
このことは、上で証明した、「2t=5を満たすtは無理数」に矛盾する。
よって、3x+3y−4=0となり、
5(3x+3y−4)=50=1
式(2)より、2(x−y)=1
よって、x−y=0
式(3),(4)の連立方程式を解くと、
x=y=23
この問題では、背理法を二度使いました。また、証明と値を求める問題が一緒に出される場合、値を求めるときに、最初に証明した命題を使います。(使わないとなれば、別問題にするでしょう。)
最後の例題は、過去に入試で出された問題です。
例題以下の問いに答えよ。
(1)√2と3√3が無理数であることを示せ。
(2)p,q,√2p+3√3qが全て有理数であるとする。そのとき、p=q=0であることを示せ。
[2015 大阪大・理]
有名な大学の入試ですが、恐れることはありません。冷静に、基本に忠実に、です。
(1)について解説します。
√2が有理数であると仮定すると、√2=nm (1)とおくことができる。(ただし、m,nは互いに素な自然数)
式(1)を変形すると、 2m2=n2 (1)′
これより、左辺は2の倍数なので、m2も2の倍数となり、mも2の倍数である。
よって、m=2k (kは自然数)と表せる。
これを、式(1)′に代入すると、
n2=4k2
となり、右辺が2の倍数なので、nも2の倍数である。
このことはm,nは互いに素であることに矛盾する。よって、√2は無理数である。
次に、3√3が有理数であると仮定すると、3√3=ut (2)とおくことができる。(ただし、u,tは互いに素な自然数)
式 (2)を変形すると、3t3=u3 (2)′
これより、左辺は3の倍数なので、u3も3の倍数となり、uも3の倍数である。
よって、u=3l(lは自然数)と表せる。これを式(2)′に代入すると、
t3=27l3
となり、右辺が3の倍数なので、tも3の倍数である。
このことはu,tは互いに素であることに矛盾する。よって、3√3は無理数である。
(2)
p,q,√2p+3√3qが全て有理数であるとすると、有理数rを用いて、
√2p+3√3q=r
とおくことができる。式を変形して、
3√3q=r−√2p
両辺を3乗して
3q3=(r−√2p)33q3=r3−3√2r2p+6rp2−2√2p3
よって、
√2p(3r2+2p2)=r3+6rp2−3q3
ここで、p≠0ならば、3r2+2p2>0より、
√2=r3+6rp2−3q3p(3r2+2p2)
となるが、左辺は無理数、右辺は有理数であるので、矛盾する。よって、p=0。
p=0を式(3)に代入して、
3√3q=r
となる。
q≠0とすると、3√3=rqとなるが、左辺は無理数、右辺は有理数であるので、矛盾する。よってq=0。
以上より、p=q=0。
では最後に、少し変わった過去問を。
[2002 東京理科大 理・数]
これは定義の通りです。
ある命題Pを証明したいときに、Pが成り立たないと仮定して、そこから矛盾を導くことにより、Pが正しいと結論付けること。(57文字)
例題は以上です。
これまで解いてきて感じているとおり、有理数と無理数の設問は、背理法を使って解くものが中心です。解法がパターン化されていますので、そのパターンの流れを覚えて確実に得点できるようにしておきましょう。
前回、因数分解について解説しました。「【数学IA】因数分解の計算の簡単な解き方(たすき掛けの方法も解説)」をまだ読んでいない人は是非とも読んでください。
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コメント
自然数は、[絵本][もろはのつるぎ]で・・・
閲覧してありがとうございます。色々とご不便をおかけするところもありますがご容赦ください。コメントいただけて本当にうれしいです。