江戸時代の化政文化の特徴・各分野で活躍した人物・有名な作品・覚え方について解説します。
楽しく覚えられる語呂合わせだけではなく、入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。
この記事からわかること
・活躍した人物
・代表的な文学・美術作品
化政文化の特徴
(葛飾北斎:wikiより)
化政文化は、18世紀末から19世紀前半の文化・文政時代に栄えた文化です。
主な特徴としては、江戸の町人が中心となって繁栄した点・文化の多様化が見られたこと・出版・教育が普及した点の3つが挙げられます。
では学問・文学・美術などの各分野でどんな人物が活躍したのか、次の項目から見ていくことにしましょう。
学問・教育
(伊能忠敬:wikiより)
経世論
最初に政治・社会思想家について解説します。
まずは経世論から見ていきましょう。経世論とは、「経世済民(世を治め民を救う)」のために立案されたさまざまな論策のことを指します。
この時期の主な経世論者は、海保青陵・本多利明・佐藤信淵です。
海保青陵は「稽古談」の中で、商工業を卑しめる武士の偏見を批判すると共に、藩財政の再建を商工業に頼るべきであると主張しました。
本多利明は「西域物語」「経世秘策」を著し、西洋諸国との交易や蝦夷地開発による富国策を説いています。
また佐藤信淵は、「経済要録」「農政本論」を著し、産業の国営化と貿易による重商主義を唱えました。
水戸学・国学
続いて水戸学について見ていきます。
水戸学とは、水戸藩の2代藩主徳川光圀のもとで生まれた学問です。
この分野では藤田東湖・会沢安などが登場し、尊王攘夷論を説きました。尊王攘夷論は、王(=天皇)を尊ぶ尊王論と、外国勢力を打ち払うべきと説く攘夷論が結合して形成された政治思想で、幕末の思想に大きな影響を与えました。
一方、国学では本居宣長の影響を受けた平田篤胤(あつたね)が、日本古来の精神に戻ることを主張し、復古神道を開いたことを覚えておいてください。
その他の学問
この項目では重要な人物を2人紹介します。
1人目は伊能忠敬です。彼は全国の沿岸を実測し、「大日本沿海輿地全図」の作成にあたりました。
2人目は志筑忠雄です。自身の著書「暦象新書」で、ニュートンの万有引力説やコペルニクスの地動説を紹介しました。
教育
最後に教育について見ていきます。
化政期から天保期には新たな私塾が多く誕生しました。
代表的な私塾としては、広瀬淡窓が豊後日田で開いた咸宜園・緒方洪庵が大坂で開いた適々斎塾(適塾)・吉田松陰の叔父が開設した松下村塾が挙げられます。ほかにもシーボルトが設立し、高野長英らの人材を輩出した鳴滝塾も有名です。
高野長英についてはこちらの記事「幕末の外交について解説(異国船打払令・ペリー来航など)【日本史第60回】」も合わせてご覧ください。
文学
(十返舎一九:wikiより)
文化期には庶民の生活を会話中心でいきいきと描いた滑稽本が盛んになりました。代表的な人物・作品としては、式亭三馬の「浮世風呂」・十返舎一九の「東海道中膝栗毛」が挙げられます。
洒落本に代わって町人の恋愛を描く人情本も登場しますが、天保の改革で弾圧されてしまいます。代表作は為永春水「春色梅児誉美」です。
また文章主体の小説で、歴史や伝説を題材にした読本も盛んになりました。読本は勧善懲悪・因果応報の趣旨で描かれているのが特徴で、曲亭馬琴の「南総里見八犬伝」・上田秋成の「雨月物語」が代表的です。
俳諧では小林一茶が登場し、農村で暮らす人々の生活を詠みました。「おらが春」でも有名ですね。
また化政文化では狂歌も生まれました。狂歌は滑稽味のある短歌で、中には為政者を鋭く風刺したり世相を皮肉ったりするものも見られます。太田南畝や石川雅望が代表的な作者です。
美術・娯楽
(歌川広重:wikiより)
浮世絵の分野では、葛飾北斎の「富嶽三十六景」や、歌川広重の「東海道五十三次」「名所江戸百景」などの作品が生まれます。また幕末期には歌川国芳が、世相や政治を批判する錦絵の制作を行いました。
さらに写生画では呉春、文人画では豊後の田能村竹田・江戸の谷文晁・渡辺崋山が出現したこともおさえておきましょう。
歌舞伎では「東海道四谷怪談」の鶴屋南北・盗賊を題材とする白浪物で評判を呼んだ河竹黙阿弥など、優れた脚本家が登場しました。また各地で歌舞伎を真似た村芝居が取り組まれたことも覚えておいてください。
ここまでが今回の範囲です。最後に語呂合わせ・入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。
化政文化の覚え方(語呂合わせ)
ここでは化政文化にまつわる語呂合わせを紹介しています。年号の暗記にお役立てください。
入試問題にチャレンジ
江戸幕府や諸藩は、早くから交通網の整備につとめた。ⓒ<水上交通>は幕府や藩の年貢米輸送を中心に発達し、陸上交通ではさまざまな街道が整えられて、城下町や宿駅などを結節点とした物資の流通や情報の交換がさかんに行われるようになった。
また、これらの交通網の整備は、民衆の旅を活発化させた。特にⓓ<文化・文政時代>以降になると、ⓔ<旅の様子や商業活動の場面が浮世絵の題材として取り上げられるようになる>ほか、名所案内の出版もあいついだ。
問 下線部ⓓに関連して、この時代に活躍した人物甲・乙と、 その人物の業績に関して述べた文Ⅰ~Ⅳとの組合せとして正しいものを、下の①~④のうちから一つ選べ。
甲 佐藤信淵 乙 式亭三馬
- Ⅰ 産業の国営化や貿易の振興を説いて、「経済要録」を著した。
- Ⅱ 儒学と神道を融合させた垂加神道を説いた。
- Ⅲ 世相などを風刺した川柳が流行するなかで、「誹風柳多留」を編集した。
- Ⅳ 滑稽本がさかんに出版されるなか、「浮世風呂」などを書いて活躍した。
①甲ーⅠ 乙ーⅢ
②甲ーⅠ 乙ーⅣ
③甲ーⅡ 乙ーⅢ
④甲ーⅡ 乙ーⅣ
(2002年 センター試験 本試験 日本史B 第4問 問5より)
まとめ
今回は化政文化の特徴・重要な人物・作品についてみてまいりました。
覚えなければならない知識が多いですが、ジャンルごとに少しずつ覚えてみる・語呂合わせを使ってみるなど、工夫しながら暗記していってくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「天保の改革の内容や覚え方をわかりやすく解説【日本史第58回】」ですのでよければ読んでください。
次回の記事「幕末の外交について解説(異国船打払令・ペリー来航など)【日本史第60回】」
日本史全体像を理解するには「一度読んだら絶対に忘れない日本史の教科書 公立高校教師YouTuberが書いた」がおすすめです。全体の流れが頭に入ってくるおすすめの一冊です。ぜひとも一読をおすすめします。
コメント