上座部仏教と大乗仏教の違いをわかりやすく簡単に解説【倫理第15回】

今回のテーマは、上座部仏教・大乗仏教です。

ブッダの死後に仏教がどのように展開したのかを見ていきます。

 

この記事で学べる内容は以下のとおりです。

 

この記事からわかること

・上座部仏教と大乗仏教に分かれた背景【結論:ブッダの教えの解釈が違う】

・上座部仏教と大乗仏教の違い【修行の目的など】

・大乗仏教の発展【ナーガールジュナとヴァスバンドゥ】

 

上座部仏教・大乗仏教をはじめて学ぶ人にもキッチリ理解してもらえるよう、わかりやすく解説しました。

 

また記事の後半には、今回のテーマに関連した入試問題も用意しています。

この記事を読むだけで基本の理解・復習ができるので、最後まで読んでみてください。

 

S先生
S先生
今回の内容は世界史でも取り扱っています。世界史を学習している方はこちらの記事「東南アジアの歴史のまとめ(前編)暗記すべき王朝一覧表つき【世界史B】」もチェックしてみてください。
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上座部仏教と大乗仏教に分かれた背景【結論:考え方のずれ】

上座部仏教と大乗仏教に分かれた背景【結論:考え方のずれ】(上座部仏教:wikiより)

上座部仏教と大乗仏教の違いを比較する前に、上座部仏教と大乗仏教に分かれた背景を見ていきましょう。

 

ブッダの死後、ブッダの教えの解釈をめぐって混乱が起きました。

ブッダは生前に何も書き残さなかったからです。

 

弟子のリーダーたちはブッダの教えを経典にまとめるために、何度も会議を開きました。

経典をまとめるための会議を結集といいます。

 

結集を開いた結果、三蔵がまとめられました。

それぞれの説明は下記のとおりです。

  • 経:ブッダの教え
  • 律:教団の戒律
  • 論:経・律の注釈

 

しかし三蔵をまとめる過程で解釈のずれが起き、対立が発生しました。

その結果、教団は上座部大衆部に二分します。

 

上座部は、ブッダの説いた戒律を徹底して守ろうとする保守的な立場をとりました。

 

一方大衆部は、戒律を柔軟に解釈しようとする立場でした。

 

そして上座部の流れからは上座部仏教が、大衆部の流れからは大乗仏教が生まれました。

上座部仏教と大乗仏教の違い【修行の目的など】

上座部仏教と大乗仏教の違い【修行の目的など】(上座部仏教(赤)と大乗仏教(黄・橙)の分布:wikiより)

上座部仏教と大乗仏教の違いは下記の表にまとめています。

上座部仏教大乗仏教
自分の悟りを目指すため

(=自利行を重視)

修行の目的苦悩する人々を救うため

(=利他行を重視)

阿羅漢理想菩薩
戒律遵守修行の方法六波羅蜜の実践

ブッダの精神(慈悲)を重視

南伝仏教

(スリランカや東南アジアに伝わった)

広まった場所北伝仏教

(中国・朝鮮・日本に伝わった)

 

ここからは、上座部仏教・大乗仏教がそれぞれどんな宗教だったのかを順番に解説します。

上座部仏教とは

上座部仏教は、自分の悟りを目指すための修行=自利行を重視します。

理想とするのは阿羅漢です。

阿羅漢とは、修行の完成者を指します。

 

修行の方法としては戒律を遵守する点が特徴です。

上座部仏教は、スリランカや東南アジアに伝わったことから南伝仏教とも呼ばれます。

 

S先生
S先生

大乗仏教側は、上座部仏教のことを批判の意味を込めて「小乗仏教」と呼びました。

 

上座部仏教の自利行を重視する姿勢が大乗仏教側からはひとりよがりに映ったからです。

 

ちなみに「小乗」とは、一人乗りの乗り物を指します。

 

上座部仏教が「小乗仏教」と自称しているわけではないので注意しましょう。

 

あくまでも「小乗仏教」は、大乗仏教が上座部仏教に対してつけたべっ称です。

大乗仏教とは

一方の大乗仏教は、苦しむ人々を救うための修行=利他行を重視します。

もちろん仏教なので自分の悟りを目指して修行しますが、それ以上に利他行を大事にするのが特徴ですね。

 

大乗仏教が理想とするのは菩薩です。

菩薩とは、衆生を救済する修行者=ブッダ(仏)となる資格をもつ者を指します。

 

なので、菩薩は仏ではない点に注意です。

仏=「悟りを得た者」だから。

 

S先生
S先生

ちなみに大乗仏教では、菩薩の道は万人に開かれていると考えられています。

 

上座部仏教とは違う点ですね。

 

上座部仏教では、ゴータマ・シッダッタのみが菩薩になれると考えられているので。

 

また大乗仏教は、すべての生きとし生けるものには仏性=成仏の才能があると考えます。

上記の概念を表した言葉が「一切衆生悉有仏性」です。

「いっさいしゅじょうしつうぶっしょう」と読みます。

 

ようは、大乗仏教には「みんなで一緒に悟りの世界に行きましょう」という平等主義的な価値観があったわけです。

 

ではどうすれば菩薩になれるのでしょうか?

 

答えは、六波羅蜜を実践することです。

六波羅蜜の具体的な内容は下記のとおり。

  1. 布施:施しをする
  2. 持戒:戒律を守る
  3. 忍辱:恥辱・迫害に耐える
  4. 精進:修行に励む
  5. 禅定:精神を統一する
  6. 般若:真理を悟る
S先生
S先生
大乗仏教は、中国・朝鮮・日本に広まったことから北伝仏教とも呼ばれます。

大乗仏教の発展【ナーガールジュナとヴァスバンドゥ】

大乗仏教の発展【ナーガールジュナとヴァスバンドゥ】(ヴァスバンドゥ:wikiより)

大乗仏教はのちに中観派と唯識派の2つに分かれます。

 

中観派の祖はナーガールジュナ(龍樹・竜樹)です。

ナーガールジュナは大乗仏教を大成させた人物としても知られています。

 

彼が唱えたのは空の思想です。

空の思想とは、ブッダの説いた諸法無我の考え方をさらに発展させたものだと考えてください。

 

田中くん
田中くん

ブッダの教えって何だっけ?

という人はこちらの記事「ブッダの教え(四諦・八正道・三帰五戒など)を超簡単に解説【倫理第14回】」で復習してみましょう。

 

一方唯識派の中心的存在はヴァスバンドゥ(世親)です。

 

彼は唯識思想を唱えました。

まず、人間がこの世界で出会うあらゆる事物は実在していないというところから始まります。

 

ではなぜあらゆる事物が存在しているように見えるのか?

 

それは心の働きによるものだとヴァスバンドゥはいうわけです。

 

S先生
S先生
空の思想・唯識思想ともに非常に難しい理論なので、上記の内容だけおさえていればひとまずOKと考えてください。

入試問題にチャレンジ

問 下線部ⓒに関して、大乗仏教についての説明として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

①  大乗仏教は、上座部仏教が自らを「小乗仏教」と名のったのに対して、自らを大きな乗り物に譬えてその立場の違いを鮮明にした。

② 大乗仏教で尊敬の対象とされる菩薩とは、在家の信者とは異なり、他者の救済を第一に考える出家修行者のことである。

③ 大乗仏教の代表的な経典の一つである『般若経』では、あらゆる事象には固定不変の本体がないと説かれている。

④ 大乗仏教は、スリランカから東南アジアへと伝えられ、その後、東アジア世界に広がっていったため、「南伝仏教」と呼ばれる。

2020年 センター試験 本試験 倫理 第2問 問3より)

正解:③
①:「小乗仏教」は上座部仏教に対して大乗仏教がつけた別称です。上座部仏教が自らを「小乗仏教」と名乗ったわけではないので、誤りです。
②:菩薩とは、苦悩する衆生を救済する修行者のことです。出家・在家を問いません。

④:大乗仏教ではなく、上座部仏教の説明です。大乗仏教は中国・朝鮮・日本に伝えられた仏教なので、「北伝仏教」と呼ばれます。

まとめ

今回は、上座部仏教と大乗仏教について解説しました。

学習内容のおさらいです。

 

・ブッダの教えの解釈をめぐる対立により、仏教は上座部仏教と大乗仏教に二分された。

・上座部仏教と大乗仏教の違いは以下の4つ。(カッコ内は左が上座部仏教/右が大乗仏教)

  1. 修行の目的(自利行⇔利他行)
  2. 最終形態(阿羅漢⇔菩薩)
  3. 修行の方法(戒律遵守⇔六波羅蜜)
  4. 広まった場所(南伝仏教⇔北伝仏教)

・ナーガールジュナは空の思想、ヴァスバンドゥは唯識思想を大成させた。

 

上座部仏教・大乗仏教をマスターするための第一歩として、上記の3点をおさえておきましょう。

記事を読んで内容を理解したら問題を解いてアウトプットすることもお忘れなく。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

前回の記事「ブッダの教え(四諦・八正道・三帰五戒など)を超簡単に解説【倫理第14回】」をご覧ください。

ブッダの教え(四諦・八正道・三帰五戒など)を超簡単に解説【倫理第14回】
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次回の記事「孔子の教えを初学者向けに超わかりやすく簡単に解説【倫理第16回】」をご覧ください。

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